瀬戸内国際芸術祭を深く理解した上で多言語デジタル広告を運用していただいたことが、過去最大の誘客につながりました。
公益社団法人 香川県観光協会 様
一般社団法人 せとうち観光推進機構(せとうちDMO)様
事例概要
経緯
「ニューヨーク・タイムズ」を始めとした著名な海外メディアに取り上げられたことで高まっていた「瀬戸内国際芸術祭」の認知を、実際の誘客につなげたいと考えていた「香川県」様より「せとうちDMO」が相談を受け、弊社にお声掛けしていただいた。パートナーの選定にあたっては、弊社が数年前から「せとうちDMO」様とお付き合いがあり、また多言語デジタルマーケティングに特化した施策の実績を多数持つことから「瀬戸内国際芸術祭」の事業内容・目的を把握した上で施策提案をさせていただき、採用していただいた。
対策
「せとうちDMO」様の事業内容や目的をしっかりと把握した上で、ご担当者様と密にコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めていった。多言語デジタル広告については経験豊富な広告運用コンサルタントが運用を担当し「瀬戸内国際芸術祭」の海外に向けた訴求を丁寧に行っていったほか、細かな調整にも柔軟に対応させていただいたことなどが高い成果につながった。
成果
「瀬戸内国際芸術祭オフィシャルツアー」について、これまで「瀬戸内国際芸術祭」への参加比率が低かった欧米豪からの旅行者の予約件数が当プロジェクトのデジタル広告経由で100件(キャンセル待ち含む。欧米豪の予約者の約80%)となり、広告由来の日本行きの航空券の予約人数も約8,200人に上った。また「瀬戸内国際芸術祭2019」の総来場者数は1,178,484人で、従来(第1回から第3回までの開催時)の来場者数を抜いて最大となった。これらのことから「瀬戸内国際芸術祭への欧米豪旅行者の誘客を図る」という当プロジェクトの目的を達成した。
お客様の声
【第1部】
公益社団法人香川県観光協会次長
籔根 正浩 様
「瀬戸内国際芸術祭」への欧米豪からの誘客について、まずは公益社団法人香川県観光協会の籔根様にお話しを伺った。
「瀬戸内国際芸術祭」で瀬戸内の魅力を世界に発信することで、瀬戸内の島々に活力を取り戻して地域創生につなげたい
「瀬戸内国際芸術祭」は3年に1度開催している現代アートの祭典で、今回(2019年)が4回目の開催でした。会期中は、歴史上美しい自然と人間が交錯し交響してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内海を地球上のすべての地域の“希望の海”とするべく「海の復権」をテーマに12の島と2つの港でアートの作品を展示していますが、これは地域創生の取り組みであり、アートを展示するだけでなく12の島それぞれの歴史や文化・特徴を世界に向けて発信していくことを目指しています。
今年(2019年)1月には「せとうちDMO」(※)さんの協力のもと「ニューヨーク・タイムズ」(The New York Times)や「ナショナルジオグラフィックトラベラー」(National Geographic)といった欧米の著名なメディアに取り上げていただき、ニューヨーク・タイムズでは「瀬戸内の島々」が日本で唯一「2019年に行くべき52カ所」(52 Places to Go in 2019)の7番目に選ばれました。その選定理由の中に「瀬戸内国際芸術祭」があったことからも「瀬戸内国際芸術祭」は瀬戸内の魅力の1つであると世界が認めていると感じております。また今後もその認知を高めるため「せとうちDMO」さんと連携して継続的に欧米のメディアに取り上げていただくよう働きかけていく予定です。
(※1)「せとうちDMO」……DMO(Destination Marketing/Management Organization)とは、観光地(Destination)を活性化させて地域全体を一体的にマネジメントしていく組織のこと。瀬戸内を囲む7県(兵庫県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・香川県・愛媛県)は2013年に瀬戸内全体の観光ブランド化を推進するための「瀬戸内ブランド推進連合」を結成し、瀬戸内全体での観光マーケティング・プロダクト開発を推進してきたが「せとうちDMO」はこれをさらに推し進め、世界に比肩できる持続可能な観光地経営を目指すフロントランナーとして新たに創設された。官民が参画しマーケティング・プロモーションを策定・実行する「一般社団法人せとうち観光推進機構」と、金融機関・域内外の民間企業が参画し「せとうち観光活性化ファンド」を活用してプロダクト開発支援を行う「株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション」で構成されており、瀬戸内が有する幅広い観光資源を最大限に生かして観光需要の創出と商品やサービスの供給体制の強化を行いながら、多様な関係者とともに持続可能な観光地域づくりを推進している。
「瀬戸内国際芸術祭」にとってデジタルマーケティングは、なくてはならない存在
「瀬戸内国際芸術祭」にとって、すでにデジタルマーケティングは“なくてはならない存在”になっています。もちろん「旅行博」に出るといった従来のプロモーションも必要だと思いますが、それにプラスしてデジタルの部分に移行していくことも大事だと思うのです。これは言うなれば“時代の要請”であり、FIT(Foreign Independent Tour)化していく外国人観光客の動きをきちんと捕まえて誘導していく仕組みとして、デジタルマーケティングは必要だと考えるからです。
例えば今回のプロジェクトがスタートする以前にも、香川県では、認知向上のための簡単な動画を作ってインターネットに上げて世界中の人たちに視聴してもらうということを「せとうちDMO」さんと連携してやらせてもらったりしており、その経験から「今回はこのくらいの実績が上がるのかな」という数値的な目標はありました。しかし現実としてツアーの予約を取って行くための仕掛けがどこまで響いてくれるのかはまったく予測が付かない状況でした。そんな中で色々とアドバイスをもらいながら施策を進めていき、プロジェクトを完了してみると、成果の部分と今後の課題が少しずつ明確になってきました。
今回のプロジェクトの具体的な成果としては、これまで「瀬戸内国際芸術祭」への参加比率が低かった欧米豪からの旅行者のオフィシャルツアーへの予約件数が、プロジェクトで運用したデジタル広告経由で100件(キャンセル待ち含む)となり、これは欧米豪の予約者の約80%でした。また日本行きの航空券の予約件数も約8,200人に上りました。
「瀬戸内国際芸術祭2019」は4回目の開催で、総来場者数はこれまでエッジの効いたテーマなどが奏功して100万人を超えていたところでもありますがプロジェクト開始後に開催した今回は、過去最高の1,178千人で最高値となりました。今後はそうしたプロジェクトの成果を踏まえて、次回に向けてやっていくべきことを考えていきたいと思っています。
デジタルマーケティングで、これから続く国際大会の終了後も世界中から継続的に訪れたくなる仕組み作りを進める
デジタルは「距離の壁を越えられる」というところが利点として挙げられることが多いと思いますが、これからFIT化が進んでいく中においては「タイムリーに今の動きを把握できる」というところが一番の利点になると思っています。
先のことを知るにはまず“今”を正確に知ることが重要ですが、ビッグデータを使った動態調査ですと1年前のデータなどを使って分析することになりますので、活用の仕方にもよるとは思いますが、タイムリーに旅行者たちの動きを知るには情報が少し古くなっている可能性があるわけです。外国人観光客が訪れる流行りのスポットも刻々と変化しますから、そうなると「ちょっと遅い」ということになりかねません。その点、デジタルマーケティングで得られるデータならよりタイムリーな動きを把握できるため、将来の施策を打つのにも役立つはずです。
香川県はもともと高松空港に東アジアからの直行便があり、近年は就航や増便が続いて右肩上がりにインバウンド旅行者数が上がってきています。また最近では「せとうちDMO」さんなどと連携を取る中で欧米からも多数の方たちに来ていただけるようになり、アメリカ、フランス、オーストラリアの順に延べ宿泊者数が多くなっています。
「瀬戸内国際芸術祭」というインパクトがあった後、いかに誘客までつなげていくか。今回のプロジェクトは結局のところ、デジタルマーケティングを通じて「瀬戸内国際芸術祭」の認知を高めるだけでなく「ツアーの予約など実際のアクションにつなげるためには何が足りないのか」「どうしたらもっと瀬戸内に来てもらえるのか」ということを分析するための事業だったと言えます。そういう意味では今回の成果は通過点に過ぎず、それに満足することなくトライ&エラーを続けていくことが大事なのだと感じています。
また2020年は「東京オリンピック・パラリンピック」2021年は「ワールドマスターズゲームズ2021関西」さらに2025年には「大阪・関西万博」と大きな国際大会が立て続けに開催されますので、それらを契機としながらそれ以降も、瀬戸内・香川県に多くの海外旅行者の方たちに来ていただけるような仕組みを作っていかねばならないと考えているところです。
「世界の宝石」と称される瀬戸内の島々の景観は、普遍的な魅力を持った大きな観光素材
「瀬戸内国際芸術祭」では島の文化を可視化してその島に適したアートを置くということが前提としてありますので、文化と現代アートがうまく融合しており、その島の人たちからしても違和感があるものではありません。それが島の魅力を底上げにつながって地域に根ざした形となり、かつ外から見に来た人たちにとっても楽しめるものになっています。だからこそ、会場となった瀬戸内の12の島々はもちろんそれ以外の数多ある小さな島々にもサスティナブルな部分やオーセンティックな部分がたくさん残っているということを世界に向けてもっと発信していきたいのです。
今回のプロジェクトでは「瀬戸内は海外でこんなにも高く評価されている良いところだったのだ」と改めて知った多くの日本の人たちにも「瀬戸内国際芸術祭」にご来場いただきまして、言わば逆輸入のような現象が実際に起こりました。そうしたことから運営側である私たちも「瀬戸内の島々は普遍的な魅力を持った大きな情報発信手段なのだ」と改めて実感しました。
かつて太平洋の懸け橋として活躍した新渡戸稲造博士を始め、現代の議会答弁などでも「世界の宝石」と称される瀬戸内の景観は、日本の魅力を伝える大きなコンテンツであることは間違いありません。今後も「せとうちDMO」さんとのコラボレーションを含めた相対的なデジタル・アナログの取り組みにより、一過性のムーブメントとしてではなく恒常的・持続的なものとしてその魅力を世界中に発信していかなければならないと考えております。
【第2部】
一般社団法人 せとうち観光推進機構(せとうちDMO)
チーフ
泉 慎吾 様
「瀬戸内」(※兵庫県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・香川県・愛媛県で構成される地域)への誘客について、4年前から施策選定・実行に携わってきた「せとうちDMO」のチーフである泉様に、今回のプロジェクトへの想いと今後の展開についてお話しを伺った。
インフォキュービック・ジャパンのグローバルデジタルマーケティングを用いたからこそ「瀬戸内国際芸術祭」への誘客が実現できた
今回「瀬戸内国際芸術祭」への多言語デジタルマーケティングによる欧米豪からの誘客をプロジェクトとして立ち上げた背景には、たとえ、旅行博に出展してチラシをまいたとしても、瀬戸内の魅力は旅行博の会場に来ている人にしか届けることができませんが、デジタルマーケティングという手法を用いることでより具体的に誘客に繋がる動きを実現できるのではないかという想いがありました。
実際、これまではデジタルマーケティングにおいては、HP運営や動画によりイメージを伝えて「認知を広げる」ことを重視してきましたが、今回のプロジェクトでは「誘客する」ところまでつなげることができましたし、またデジタルを使うことで、従来であれば海外に地域の魅力を発信するため、職員が日本から何十万円もコストをつぎ込んで現地に足を運ばなければならなかったところ、デジタルを活用することで海外の人たちにも低コストで情報を届けることができ、このことがとても意義深かったと思っています。
「トラディショナルかつオーセンティックな瀬戸内の島々の魅力」は、先進国層である欧米豪の人たちに届くはず
プロジェクトではメインターゲットを欧米豪に設定しましたが、それは「せとうちDMO」を立ち上げた4年前に、瀬戸内の島々が「瀬戸内芸術祭」の開催場所であるだけでなく、例えば古民家が残る愛媛県の内子という地域を始めとしたトラディショナルかつオーセンティックな観光資産がどんな人たちにうけるのだろうと思いを巡らせた時、それはやはり「知的好奇心が高く、文化や歴史に興味を持っている人たちだろう」という結論に至ったことが大きな理由の1つでした。そしてまた「そうした人たちはどんなマーケットに多いのだろう」と逆算的に考えていったとき、初めて「欧米豪から訪れる旅行者に受けるのではないか」ということを認識したのです。
それまで瀬戸内に来ていた海外旅行者はアジア・東南アジアからの人たちが多かったため、当初はアジア・東南アジアをターゲットにしていくことも当然考えたのですが「まだ日本に来ていないということは、言い換えれば未開拓市場であるはず。それなら攻めていこう」ということで、チャレンジしていきたい気持ちが強かったのも確かです。
パートナー選びで最も重視したのは「しっかりと私たちの想いを汲んでくれる」という信頼感
「せとうちDMO」では様々な事業者さんと共に事業を進めているわけですが、インフォキュービック・ジャパンさんは、デジタル広告の運用についても経験豊富な広告運用コンサルタントさんが運用を担当してくださり、また営業担当の方の契約や経理関係のサポートもとても厚かったですし、すごく満足のいく対応をしていただけたと感じています。
実はインフォキュービック・ジャパンさんには、昨年(2018年)度でも「瀬戸内」のデジタルマーケティング事業を依頼しており、その中でデジタル広告の運用やメディアプランの作成に携わっていただいたという経緯がございました。今回のプロジェクトでは、その際の対応にとても安定感があったことや、しっかりと業務をやっていただけて信頼感があったことなどがお声掛けけさせていただくことにつながりました。特に「せとうちDMO」が何を目指してデジタルマーケティングをしているかというところをしっかりと理解した上で実施してくださったので、その実績を踏まえて、今年度も香川県様と一緒に事業を進めていく上で「インフォキュービック・ジャパンさんならしっかりと私たちの想いを汲んで伴走していただけるだろう」と感じましたね。
特に今回のプロジェクトでは、そもそものメディアプランを「ADARA」(※2)さんなどとしっかりと連携した上で作成いただき、とてもありがたかったです。またもう1点、今回はコンバージョンタグとデジタル広告の実績の計測というところでなかなか難儀したのですが、トラブルがあった際の対応についても色々とサポートや助言をいただけましたし、適宜迅速にレポートをいただけましたので、そのあたりもすごく助かりました。
何度も議論を重ね、ACTION(実際のツアー予約)を増やすプランを提案していただけました
やはり私たちが外部のパートナーさんに期待するのは「私たちが何をしたいかを汲んでくれて、サポートに入ってもらえる」ということに尽きます。
ちなみに「せとうちDMO」ではDCATS(dream=認識し、consider=旅行を検討し、action=実際に予約をして観光地を訪問し、share=その体験をSNSなどで発信する)というアメリカの政府観光局も取り入れているトラベルライフサイクル(旅行者が観光地を知り実際に訪問するまでの一連のサイクル)でデスティネーションマーケティングを考えており、今回のプロジェクトの施策はまさにその中のA(action)を増やすもの、ビデオ施策などはD(dream)の施策であろうと考えております。
そういう意味で、インフォキュービック・ジャパンさんには昨年の施策を提案していただく段階から議論を重ね、それを実行した上で引き続き今回の施策に入っていただいていますので、私たちが何をしたいかを汲んだ上うでA(=「瀬戸内国際芸術祭」への誘客、同オフィシャルツアーの予約)につなげていく施策をご提案いただけたのはもちろんのこと、実際の対応もとてもスムーズで助かりました。
「せとうちDMO」は、今後も引き続き欧米豪のターゲットを攻めていきます
今回のプロジェクトは、これまでグローバルデジタルマーケティングの手法を用いて「瀬戸内国際芸術祭」の周知だけでなくオフィシャルツアーという観光分野における体験商品の予約を目標にしたことがなかっただけに「せとうちDMO」として今後のデジタルマーケティングのゆくえを見極める試金石的な意味合いがありました。
そうした中で、プロジェクト完了後にしっかりと数字の上で効果が出せてリリースも打てたことは、全国的にもデスティネーションマーケティングとしてもとても意義のある事例となりました。そのため様々な団体や観光局さんなどから「どんな手法を使ったのですか」また「仕組みを教えてください」といったたくさんの問い合わせをいただきました。
「せとうちDMO」の今後の海外に向けたインバウンド対策の展望としては、引き続きターゲット市場である欧米市場を攻めていきますが、一方でこれから「東京オリンピック・パラリンピック」を始めとした国際的なイベントがたくさん予定され、日本の認知はますます高まることが予想されますので、その認知を活かして、瀬戸内地域により多くの海外からの旅行者を送客するための施策を重点的に進めていきたいと思っています。そういった意味では、これまでビデオマーケティングで認知度アップを図っていた場所に送客する施策が重要であると考えています。
これまで私たち「せとうちDMO」が進めてきた活動はマーケティングファネルを広げる段階であり「東京オリンピック・パラリンピック」が近付き開催されればよりそのファネルは広がりますので、これから「せとうちDMO」として最後のACTIONを増やす施策を適切に進めていければ、大きな刈り取りが見込めるのではないでしょうか。
また「東京オリンピック・パラリンピック」以降もたくさんの国家的なイベントが控える日本でいかに瀬戸内という地域を選んでもらうかは大きな課題であり、施策の重要性が高まっています。試金石という話を冒頭で話させていただきましたが、まさに今回のプロジェクトによって「この施策を行えば刈り取りができるはず」という仮説を実際に試すことができ、それが成果につながったということは、本当に意義深いことだったと実感しています。そうしたなかで、インフォキュービック・ジャパンさんにはグローバルデジタルマーケティングの領域で引き続き力強いご支援を頂けるとうれしく思います。よろしくお願いします!