海外進出やインバウンドの強い味方、クラウドソーシング・サービスの活用法とは?
世界160カ国、約60,000人の外国人登録者数を誇る日本最大級のクラウドソーシング・サービス
山岸 - 今回は、「海外ビジネスを拡大したい」、「インバウンドで外国人を呼びたい」と考える企業の強い味方となるクラウドソーシング・サービスを提供するサイト、「ワークシフト」(Workshift)を運営する「ワークシフト・ソリューションズ株式会社」の代表取締役社長兼CEO、荒木さんにお話を伺っていきます。まずは、サービスの概要を教えてください。
荒木 - 「ワークシフト」は、日本にいながらにして専門スキルを持った国内外の優秀な人材に、あらゆる仕事を直接依頼することができるサイトです。現在、アジアを中心に世界160カ国から約60,000人(2017年8月現在)のユーザー登録を有しています。このうち90%以上は海外居住のフリーランサーで、海外進出やインバウンド対策、越境ECに関連した業務(現地調査、webサイト構築のための翻訳・通訳、コンテンツ制作など)は特に親和性が高くなっています。
サイトの特徴として、基本的に全てのページに翻訳ツールを設置することで日本語でも仕事依頼が容易にできることや、外国人登録者に報酬を支払う際に「円」で決済できるなど、日本と海外の取引に注力している点が挙げられます。また、日本語が話せたり、専門資格を持っていたりする登録者が多いのも特徴です。
山岸 - サービスを始めたのはいつごろですか?
荒木 - 約3年半前(2014年)です。
山岸 - その頃は、海外の人材専門のクラウドソーシングって日本にはありませんでしたよね。
荒木 - はい。今でも日本では当サイトだけだと思います。
「クラウドソーシングで、日本人が外国人と働ける環境を作りたい」
山岸 - なぜ、世界を相手にしたクラウドソーシング・サービスを始めようと思ったんですか?
荒木 - 私はもともと外資系企業で長く働いていました。会社の中で色々な国の人と仕事をするのが当たり前で、オフィスでも自然と日本語と英語が飛び交っていました。ところが、多くの日本企業は日本語で日本人だけと仕事をしている場面を数多く見てきました。中には、年金運用で何千億円もの資金をグローバル運用しているにも関わらず英語が全くできないという方も多くいらっしゃいました。今後人口減社会に直面する日本では、外国人とのビジネスが不可欠であると考えていたにも関わらず、日本人だけで打ち合わせをして、買い手やサービスの受け手が不在のまま話が進む場面に違和感を感じていました。
山岸 - そういうことって多いですよね。
荒木 - そうなんです。そんな状態を改善するために、もう少し気軽に外国の人と働ける環境を日本で作る方法がないかと思案して、たどりついたのがクラウドソーシング・サービスだったのです。実はその頃、すでにアメリカには世界中の何千万人ものフリーランサーたちが登録しているクラウドソーシング・サービスが急成長していて、日本でもやりたいと思ったんです。
山岸 - なるほど。では、外資系企業で仕事をされていた頃から起業したいと思っていたんですか?
荒木 - 私はある米系証券会社のプライベートバンク・ビジネスの立ち上げに携わっていたのですが、顧客は何億もの資産を抱える資産家ばかりだったんです。顧客の多くは起業家で、「フォーブス」(Forbes、世界有数の経済誌)にも載るような著名人もたくさんいたのですが、会う人会う人、充実した人生を過ごしていて、皆が幸せそうで(笑)。
山岸 - お金がたくさんあるって、やはり幸せですよね(笑)!
荒木 - それで30歳くらいの頃、某有名企業のトップに「これだけ資産があるのに、何のために仕事をしているんですか?」と聞いたら、「仕事はお金のためにするんじゃないんだよ。ビジネスの構想を立てて、それを実現していくのが楽しいんだよ」と言われたんです。それ以来、「自分もいつかは起業してみたい。それも、どうせなら世の中のためになるとか、社会をちょっと変えることができたら面白いな」と思い続けていました。そして45歳で「クラウドソーシングで世界中の人材を活用していく動きが日本で起こせたら、きっと面白い」と思い至って、起業を決断したんです。小さい子供がいるので、妻の説得には苦労しましが……(笑)。
山岸 - (笑)。ある意味、家族からは株主より厳しい意見が聞けますよね。リアルに生活がかかっていますから。
「日本企業の仕事をしたい外国人はたくさんいる!」
山岸 - サイトの立ち上げに際しては、システムの構築はもちろん、一定数の会員の確保も必要だったと思うのですが、それらはどうやって準備したんですか?
荒木 - アメリカで成功している先行他社がすでにあったので、どんなエッセンスが必要かは分かっていました。ですからシステムのスタートバージョンは、お手本にしたいサイトを「こんなサイトを立ち上げたい」と日本人のフリーランサーに見せて、作ってもらったんです。しかも、「この金額でサービスサイトが作れるなら、皆起業にチャレンジできる」というくらいの金額で対応してもらえました。
山岸 - 弊社でも、「COSMERIA」(コスメリア)という化粧品の口コミサイトを立ち上げましたが、普通に作ればゼロがひとつ違うくらいの安い金額で作ってもらいましたよ。
荒木 - うちもまさにそんな感じで(笑)。登録者数については、最初は外国人が本当に登録してくれるのか不安でした。半年くらいはどうやってリーチしたらいいかも分からなかったのですが、口コミなどで徐々に会員数が増えていき、3年半経った今では約6万人の登録者を有するまでになり、「日本の企業と働きたい外国人は想像以上に多くいるんだな」と実感しています。それも、かなり高度な専門スキルを持つ人材がたくさんいるのです。一番活躍しているのは日本に留学していた人たちです。実は海外からの留学生は、過去10年間にわたり毎年3万~4万人ほどいましたが、中には国費留学で勉強しに来たような非常に優秀な人材もいたのです。ところが、日本での就職先が見つからず、多くの人たちが自国に帰国してしまうのです。それって本当にもったいない!と感じるのですが、そうした人たちが「ワークシフト」を見つけて「日本企業となら働いてみてもいい」と思ってくれているのです。
山岸 - 「チャンスがあれば日本で働きたい」という外国人は、確かに多いですよね。
荒木 - そうなんです。さらに言えば、元留学組の人たちは、「日本に来て働く」というよりも「日本が好きで日本語を話せるので、日本に関連する仕事に関わっておきたい」と思っている人が多いようです。
仕事の依頼は日本語でOK。もしもの時も日本の法律で対応できる
山岸 - 仕事を依頼する際は、何語でやりとりをするんですか?
荒木 - サイト自体が日本語と英語に対応していますし、翻訳ツールが全ページに入っているので、基本的なやりとりは日本語と英語でできます。日本語で仕事の依頼を書き込めば日本語ができる人が集まって来ます。
山岸 - では社内に英語ができるスタッフがいない場合でも、まずは日本語で出してみれば大丈夫なんですね。
荒木 - そうですね。現地調査や翻訳などの業務なら、ほとんどがマッチングに成功しています。またサイトには翻訳ツールやメッセージ機能があるので、仕事内容の登録は日本語でも、英語で来たメッセージにきちんと英語で返しているケースも多く見られます。
山岸 - 弊社でも時々、サイトを利用させてもらっています。普通に考えると、行ったこともない、言語も分からない国の人に仕事を依頼するのは難しいはずですけど、本当に手軽に海外の方に仕事を発注できて重宝しています。海外のクラウドソーシングのサイトは、管理画面が日本語に対応していませんからハードルが高いんですよね。
荒木 - そうですね。それにもし海外のサイトを使った場合、法管轄も海外になってしまうので、何か問題があった時に外国の法律に従わなければならないのもネックです。その点、弊社は日本の会社ですから日本のお客様にとっては安心だと思います。
山岸 - それは重要ですね!
専門スキルを持つ外国人登録者が“副業”として対応
山岸 - 登録しているのはアジアの人が多いそうですが、特に多いのはどのあたりの国でしょうか。やはり中国とか?
荒木 - 中国は比較的少ないです。それより台湾、インドネシア、フィリピン、インド、タイなどが多いですね。親日国の人がとにかく多いです。
山岸 - やはり副業みたいな感じで仕事をしているんでしょうか。
荒木 - 日本のクラウドワーカーは、スキルがあって自ら望んでフリーランサーになるというより、主婦や定年退職者などが空いた時間で仕事をしているイメージが強いです。会社の規定で副業を禁止されていたりすることも多いので、スキルのある人が隙間時間で稼ぐという機会が少ないのです。けれど海外では、フリーランス1本でやっている人ももちろんいるのですが、土日や仕事が終わった後の夜の時間に副業をしても、誰にも文句を言われないんです。ですから月曜から金曜まで正社員として働いて、帰宅してから副業をして稼いでいるという人が実は数多くいるのです。今は、こうした人たちがネット上にあふれ出てきているという感じです。特に新興国人たちは「稼ぎたい」というガッツが違います。
山岸 - まさに「ウーバー」(Uber。スマートフォンのアプリ上で手配できる配車サービス)なんかがそうですよね。運転手としてメインで働いている人もいるでしょうけど、普段は会社で働いて、帰宅後や休日の時間にドライブ感覚で運転手をしているという。
荒木 - 日本でも近年は“副業”というキーワードが新聞やニュースなどで取り上げられる機会が増えているので、これから変わっていくと思います。ただやはり、海外では仕事に対する感覚が日本とは本当に違っています。「ワークシフト」で仕事をしているフリーランサーには公務員や大学の教授もいたりするのです。職場や地位に関わらず、専門的なスキルを売りにネット上で仕事を受けてくれることが普通になっていると感じています。
一見して仕事と思えないような内容でも、依頼してみる価値はある
山岸 - 実際にあった仕事の中で、特に印象的だったものをいくつか教えてください。
荒木 - たくさんありますが……「フィリピンで電線の通っていない村を探してください」という仕事がありましたね。こんなのできる人はいるのかなと思っていたら、すぐにマッチングして。これも最初は日本語で出されていましたよ。
山岸 - そんな内容でもOKなんですか(笑)。いったい、どんな人が何のために依頼を?
荒木 - 実は、依頼者はバイオマスエンジンのメーカーさんだったんです。電線のないところに製品を持って行くと、雇用が生まれ、やがて村が活性化する……という経緯のデータを取って、新興国に販売したいと。でもJETRO(日本貿易振興機構)やJICA(国際協力機構)、更にはフィリピンの電力会社にコンタクトしたらしいのですが、それに該当する村を見つけることができなかったそうです。ところが「ワークシフト」で仕事を掲載したらほんの2~3日で「ココとココの村です」と連絡がありました。これにはさすがに驚きました。
山岸 - スゴイですね(笑)。
荒木 - こんな仕事も。「タイで中古の携帯市場を探して、その大手の企業の担当者と○月○日に現地で打ち合わせをしたい」という、かなり無茶苦茶な内容で(笑)。
山岸 - それはまたスゴイですね(笑)。日本のクラウドソーシングだと、そうした突飛な内容の仕事って見かけませんが。
荒木 - この依頼も無理だろうな、と思っていたら、その企業の担当者本人がフリーランサーとして応募してきたのです。これにも驚きましたね。ほかにも「オランダのユトレヒトで行われる展示会で資料を集めて、日本に送ってほしい」とか。
弊社のサイトを使うイメージとしては、コンテンツ制作などを依頼できるのはもちろんですが、まるで各国に駐在員がいて、いろいろな仕事を早く安く対応してもらえる、という感じでしょうか。
山岸 - そうだと思います。
荒木 - とは言え、海外の人は普段は会社で働いている場合が多いので、不当に安い仕事はしません。でも例えば、日本の業者が10万円くらいでする仕事を3万円でお願いします、となれば対応してもらえることが多いのが現状です。依頼する側としても、10万円が3万円になるのであれば安いですよね。その差がこのビジネスが成り立つ理由なわけです。
山岸 - 今後クラウドソーシング・サービスがさらに発達していくと、仕事を必死に探している人の足元を見て不当な賃金で働かせるような、“格差ビジネス”的な労働力の搾取はかなり淘汰されるでしょうね。
海外支店を持っている企業のサイト利用も多い
山岸 - 仕事を依頼している側の企業の規模はどんな感じですか?
荒木 - さまざまですが、意外と大手が多いですね。契約書を交わしている上場企業が30社程度はあります。大きな企業でも「海外のことはよく分からない」とか、海外に支店はあるけど国内の部門からは仕事を依頼できない」というケースが多いようです。海外にある支店は商品を売るための営業部隊であって、リサーチや翻訳などは仕事内容が違うと。
山岸 - それは時々聞きますね。
荒木 - 対応してくれる場合でも社内チャージが必要になったりして、それがけっこう高かったりするらしいんです。それで自分たちで別のルートを持って、海外の情報を調べたりできるようにしておかなければいけないというニーズがあるようです。
山岸 - 海外の現地調査をリーズナブルにできるっていうのは魅力ですね。海外進出する際、「事前調査に10万円~30万円くらいはかかりますよ」と言うと、そこで話が詰まってしまうことも多いので。
荒木 - 日本の企業は、事前に現地のことを調べずに海外に出てしまうケースも多くないですか?
山岸 - 多いです! とりあえず現地で売ってみよう、という感じで。私も場合によっては「やってみなければ分からない」と言うことはありますが、基本的に事前のリサーチは大切ですよね。それでやり始めてから状況に合わせて少しずつ改善をしていくのですが、全部を我々のような支援する側の企業がやってしまっていると、海外の企業が日本にたくさん入って来た時に自社だけでは戦えなくなってしまう。ですから、事前準備や改善する際の起爆剤的な使い方をするのはとても良いと思いますが、“すべてお任せ”ではなく、やがて自分たちだけで戦っていくためのツールとして我々を活用してほしいですね。
人選に迷ったら電話OK。報酬は「円」決済で、海外送金の手間なし
山岸 - 仕事を登録すると、何件くらい応募があるんでしょうか。
荒木 - 内容にもよりますが、場合によっては50~60件くらいの応募があるものもあります。
山岸 - でも、応募が多すぎると選ぶのも大変ですよね。
荒木 - ある程度は条件で絞り込むことができるので、そこからさらに過去の実績やプロフィールなどをチェックして選んでいただけます。それでも決めかねると「どの人がいいですか」と弊社に電話がかかってくることもあります。
山岸 - 電話で相談もできるんですか、それはイイですね! どうしても判断がつきにくい時ってありますし、ちょっとでもアドバイスがいただけると助かります。
荒木 - 国内の多くの調査会社は、ある特定の国を強みにしているケースが多いのですが、「ワークシフト」では1度に数10カ国で同じ作業をするというような業務を依頼できます。例えば、数10カ国の情報を定期的に観測するという内容などです。具体的には、各国の旅行会社の窓口にある日本旅行のパンフレットを定期的に集めるとか。
山岸 - 1度の募集で各国からとか、複数の人を募集できるんですね。それは効率的ですね。
荒木 - 最近では、「○○さんオンリー」というような、名指しでの仕事も増えています。
山岸 - 一度対応してもらった人に向けた仕事ですか?
荒木 - はい、リピートの案件ですね。実は国内向けのクラウドソーシングだと中抜きが始まることも多いと聞いています……。
山岸 - つまり、サイトを通さないで直接フリーランサーに仕事を発注してしまうということですね。
荒木 - はい。サイトのメッセージ機能を使わずに直接フリーランサーと連絡を取り合えば、手数料を取られることなく仕事を直接依頼することもできるわけです。にもかかわらず名指しの案件がたくさん上がっている理由は、弊社を通せば海外のフリーランサーに支払う報酬もサイト宛てに「円」で振り込むだけですし、請求書や領収書も日本語で出せるというメリットがあるからなんです。
山岸 - 国をまたいで個人に仕事を依頼するって、意外と細かいところで手間がかかるんですよね。その点、サイト経由なら手間もなく安心ということですね。
外国人への仕事依頼は“見える化”が大事
山岸 - 海外のフリーランサーを活用する際、気を付けなければならないことや上手くアウトプットしてもらえるような秘訣はありますか?
荒木 - 海外の人に仕事を依頼する時は、エクセルなどを活用して、やってほしい業務の納品形式を先に渡してから業務を進めてもらうのが一番良いと思います。この形式で、これとこれを納品してください、としっかり伝える必要があります。日本でよくある「行間を読んでください」というような依頼の仕方だと、海外の人はどこまで対応すればいいか分からなくなってしまうので。
山岸 - それはよく分かりますね。こちらから依頼する時にテンプレートなどを準備すると、キレイなアウトプットが出てきますよね。
荒木 - そうなんですよ。例えばwebサイトを作りたいときも、目指す仕上がりに近いwebサイトがあるなら最初にそのwebサイトを提示して「こんな感じのwebサイトを作って欲しい」と依頼したほうが、早いし確実です。良かれと思って詳細な指示を書いて渡しても、「よく分からない。難しい」となってしまったり、かえって上手くいかなかったりすることも散見されます。
「日本企業は、もっと積極的に海外進出を!」
山岸 - これから2020の東京オリンピックに向けて日本にも海外の人がよりたくさん来ると思うのですが、今後、日本企業はやはり海外に出るべきだと思われますか?
荒木 - 今後、日本企業は今まで以上に積極的に海外進出しなければダメだ!と言い切ってしまいたいですね。日本は今、65歳以上の人口が27%(2016年9月時点)という割合なんです。つまり4人に1人以上が企業を定年退職してしまった年齢の人たちなんです。そして今後、人口が減り続けてさらに高齢化すると言われています。
山岸 - 東京で暮らしているとあまり気になりませんが、それは高齢な人たちがあまり街に出てきていないだけで……。地方では高齢者ばかりの街などもあると聞きますよね。
荒木 - はい。問題は、高齢になると若い頃より食べる量が減って、商品を購入したりサービスを利用したりする機会も減っていくということです。労働力は「AIで代替できる」とも言われますが、AIは食べないしサービスも利用しませんから、日本全体の消費行動が確実に減ってしまう。つまり、モノを売っていくためには海外に出ていくしかなくなるんです。
また、2060年ごろにはアジアの人口がピークアウトすると言われていますが、その時点でアジア全体の人口は53億人くらいになると予想されています。対して、日本の人口は8,700万人くらいにまで縮小してしまいます。どちらで商売しますか?と問われれば、答えは明らかにアジアですよね。
海外にトライするなら、最初の一歩は東南アジアがオススメ
荒木 - 日本企業の多くが「海外に出たいけど、最初の一歩が踏み出せない」と迷う気持ちも分かりますが、経営が元気なうちにぜひ海外にトライしてほしいですね。特に、東南アジアにぜひチャレンジしていただきたい。東南アジアって、日本企業に対するプレミア感がすごく大きいんですよ。「ウソをつかないし、金払いもいい」と。日本では当たり前のことが新興国ではまだ確立されていないのです。これはビジネスをする上で大きな強みだと思います。
山岸 - それって素晴らしいですよね。
荒木 - 日本は何十年間もの間、国費をつぎ込んで東南アジアを始めとした多くの国の人たちをサポートし、それが“日本ブランド”を作り上げました。でも中国、韓国、台湾などもそれにならい始めて、東南アジアのマーケットを獲得しようとしています。やがて「日本も中国も韓国も、変わらないよね」と評価されてしまう可能性もあります。そうならないうちに、“日本ブランド(ジャパン・プレミアム)”をビジネスに活用するべきだと思っています。
山岸 - 本当にその通りだと思います! ラッキーなことに、日本の製品はまだ、世界中で“日本ブランド”としての確固たる信頼があるわけです。でも放っておいたら変わってしまうかもしれない。それに、海外はハードルが高いと言いますけど、今ある商品にちょっと工夫して海外で売り出すことと比べたら、モノがあふれる日本国内でゼロからヒット商品を作る方がよっぽど大変だと思うんですよ。どちらの方が当たった時に大きな成功につながるかと考えると、日本国内にとどまっているなんて本当にもったいないです。
山岸 - 今日、お話を聞かせていただいて、クラウドソーシングってかなり気楽に活用できて、便利だなと改めて感じました。電線のない村を探す仕事の話などは、まさにその利点を最大限に発揮した案件ですよね。
荒木 - はい。ネットの向こう側にいる大勢の登録者たちも、ある意味必死になって仕事を得たいと考えているわけですから、お互いにメリットがあります。
山岸 - 荒木さん、今日は興味深いお話を本当にありがとうございました!