アジア美容業界国別オンライントレンド分析
~後編~ (タイ・香港・インドネシア)
■アジア向け化粧品販売・ヘアケア販売を成功に導く第一歩は、各国の市場の傾向を知ることから
今回も前編の記事と同様、グローバル企業として知名度が高い「エスティローダー」のサイトにおけるサイト訪問者の傾向や、アジア各国(今回の記事ではタイ、香港、インドネシアです)のコスメ関連のキーワードに関する分析結果などをご紹介していきたいと思います。なお今回も、記事内での「アジア」は香港、インドネシア、韓国、タイを対象にしています。
■タイの若者も、やっぱりスマホで検索してネットを見ている
まずは、タイにおける同サイトへの流入元の傾向を見ていきましょう。
タイで多かったのは、これまでご紹介したほかの国と同様、検索エンジンから(Search)の60.55%とブックマークやURLの打ち込み(Direct)の23.83%。また第3位はSNSなどで紹介されたリンクなどをたどってサイトを訪れる人の13.68%でした。
サイト訪問者の年齢を見てみると、25歳~34歳の若者の割合が突出して多いことが分かります。若者の中でも、社会人になってお金を持ち始めた女性が多いということですね。
また、デバイスによる傾向も調べてみました。するとやはりモバイル(Mobile=スマホ)が最も多く87%で、以降はPC(Desktop)が7%、タブレット(Tablet)が6%という結果でした。やはりタイでも、ほとんどの人がスマホでサイトを閲覧しているようです。
■タイで勝機をつかむなら、「ヘアカラー」!
続いて今回も、化粧品関連の単語の中で「ヘアケア、ヘアカラー、ヘアスタイリング、スキンケア、パーマ」という5つのキーワードがどれくらい検索されたか、それぞれが占める割合を調べてみました。するとタイで圧倒的に多かったのが「ヘアカラー」の90%で、ほとんどの人が関心を寄せているということが分かりました。
また「ヘアカラー」は、検索エンジンマーケティングをした時に同じキーワードのクリック単価(CPC)と競合(どれくらいそのキーワードが買われているか)のデータを可視化してみても、最も新規参入しやすいことが分かりました。
下の図を見てもらうと分かるように、「ヘアカラー」は「競合は少ないけれど検索ボリュームがあり、しかもクリック単価が安い」のです。
逆に「スキンケア」を見てみると、検索ボリュームはまだ少ないのにクリック単価は高く、また競合も多くなっており、これから新規参入するのはかなり難しそうです。これは「企業側の要求に対してまだ市場が追い付いていない」、または「市場の要求を企業側が把握できていない」という状況を表しているのかもしれません。
また、タイは東南アジアで最も化粧品を輸出している国なのですが、それはタイ国内にすでに輸出できるレベルの製品が大量に出回っているということでもあります。そのため、化粧品やスキンケア関連での新規参入はかなり難しそうです。
■タイではたくさんのSNSが使われており、ダントツで美容に強いのはInstagram
タイ国内を対象に、ヘアケア系のブランド名やコスメ関連のキーワードが出現しているSNSを見てみましょう。下の一覧は出現数が多い順に並べたものですが、やはりInstagramがダントツで過半数の54%を占めています。
またタイではPantip.com(パンティップドットコム)という巨大掲示板が人気なのですが、それが第2位の10%。第3位は“タイ版「@コスメ」”のようなWebメディアJeban.com(ジェバンドットコム)とTwitterが同率の8%、以降は多数のSNSが1~2%で乱立しています。
■香港には、英語圏と似たネット文化がある
続いて、香港について見て行きたいと思います。香港はイギリス人やアメリカ人が居住する割合が多いこともあり、アジアの中でもかなり検索文化が浸透しています。「エスティローダー」のwebサイトへの流入元も第1位はやはり検索(サーチ)で、87.66%となっています。
サイト訪問者の年齢も英語圏の結果に近く、25歳~34歳の若者の15%をピークに、高齢になるに従って割合が減っていくというゆるやかな曲線を描いています。
しかし若者が突出しているわけではないため、高齢の人も比較的“美”に対する意識が高いと思われます。
また香港におけるデバイスの傾向は、アジアの他の国に比べてモバイルの割合が67%と少し低く、PCも29%とまだ存在感があります。
全体的な特徴をまとめると、「若者は男女ともに美容意識が高く、検索文化で、まだPCを使ってwebサイトを閲覧している人も一定数いる」となるでしょう。
■香港の美容市場で大きな成功を狙うなら「スキンケア」、オススメは「ヘアカラー」
タイは「ヘアカラー」が90%と大多数を占めましたが、香港はそれぞれのキーワードがそれなりに検索されており、その中でも「スキンケア」が40%で第1位と、先進国らしい結果になりました。第2位以降は「ヘアカラー」29%、「パーマ」13%、そして「ヘアケア」と「ヘアスタイリング」が同率の9%でした。
ちなみにすべてのキーワードが市場を作っていますが、香港では「スキンケア」は競合が圧倒的に多いので、これから新規参入するにはかなりの工夫が必要になるでしょう。とは言え需要もかなりありますので、戦略がうまくハマれば大きな成功を得られるはずです。
これらの分析結果から、香港で美容産業に新規参入するなら、検索ボリュームがかなり大きくてクリック単価が安く、競合も少ない「ヘアカラー」関連がオススメです。ちなみに今回分析している3国(エリア)の中で、香港だけが「パーマ」の検索ボリュームが比較的大きいので、プロフェッショナル系の需要が高いことが推察されます。その点でもやはり、香港の美容市場は日本と似ているようです(とはいえ、日本のスキンケアの市場は香港よりも小さいと思いますが……)。
■香港でもInstagramは強し!独自のSNSも……
香港でも、ヘアケア系のブランド名やコスメ関連のキーワードが出現しているSNSはInstagramが第1位でした。しかし割合としては29%と比較的少なく、30%を切っています。また第2位はYAHOO!JAPANに似たソーシャルメディアのtheZtyle(ザジータイル)が12%で、第3位のTwitterの11%をわずかに上回っています。ほかにも中国を代表するポータルサイトsohu(そうふ、ピンイン)などが上位に入っています。
■インドネシアでネットを見ているのは、主に若者
最後に、インドネシアについて見てみましょう。インドネシアのwebサイトの特徴として、ほとんどの企業が公式ページを持たず、Facebookの企業ページを作って情報発信をしていることが挙げられます。そのような背景があるからか、ここまで基準にしてきた「エスティローダー」のサイトにもインドネシア語のページは用意されていなかったため、代わりにFacebookのページで同様に分析してみました。
まず、インドネシアはまだ文化的に若いため、検索によってサイトに訪れた人の割合が38.26%とこれまで紹介してきた国の中では一番低く、代わりにソーシャルメディアからの流入が13.08%と多くなっています。
また年齢は18歳~24歳が一番多く、年齢が高くなるにつれて少なくなって、45歳以上にいたってはゼロという結果に。
■インドネシアでは、PC用のページは意味ナシ!
サイトの閲覧に使用しているデバイスは、モバイルが96%と圧倒的に多く、PCはゼロ!でした。 そもそもそPCを持っていない人が多いと思われます。
そのためインドネシアでwebマーケティングをしていく際は、「PC向けのwebサイトをしっかり作り込んで、SEO対策をして……」という通常の施策はほとんど意味がありません。それよりもモバイルで閲覧されることを意識して、若年層向けのFacebookページをしっかりと作り込むほうが効果的であり、重要です。
■インドネシアには、欧米圏のマーケティングが浸透している
インドネシアでもこれまでの国と同様に、「ヘアケア、ヘアカラー、ヘアスタイリング、スキンケア、パーマ」のそれぞれの単語の検索回数がどれくらいあったのかを調べてみました。
すると一番多かったのが、タイで第1位だった「ヘアカラー」の65%でした。第2位は先進国で多くなる傾向がある「スキンケア」の21%でしたが、これはインドネシアの美容産業が先進国並みに成熟しているのではなく、欧米圏のマーケティングが浸透していることに起因しているのではないかと思われます。と言うのも、タイには昔から美容関連の産業がありましたが、インドネシアの美容産業はまだ新しいからです。
そこでインドネシアにおける美容市場を視覚化してみると、「スキンケア」という単語は検索ボリュームもほどほどで、クリック単価や競合の数もど真ん中にあり、この先どちらに行くのかが定まっていないような、ちょっと落ち着かない感じになっています。しかしそれぞれの数値は市場が成熟するに従って高くなっていくと推察されますので、「スキンケア」に新規参入を考えているなら、早目に手を打って行った方が良いでしょう。
ちなみに、まだ美容産業全体の市場規模が小さいため、どのキーワードもクリック単価は低いので、そういう意味ではお試し的に複数のキーワードでweb広告を出してみて、反応を見るのもオススメです。
ちなみに検索ボリュームは、「ヘアカラー」が増えると「ヘアスタイリング」も増える傾向があり、また「ヘアケア」が増えると「ヘアカラー」は減っていくようです。
■インドネシアのSNSはとてもシンプル
最後に、インドネシアでヘアケア系のブランド名やコスメ関連のキーワードが出現しているSNSを見てみましょう。下の一覧は出現数が多い順に並べたものですが、第1位のInstagramが44%、第2位のTwitterが22%、そしてインドネシアの大手ポータルサイトdetik(デティック)が3%と、3つしかありませんでした(ちなみにFacebookはプライベートアカウントも多いため、データが反映されていない可能性があります)。やはりInstagramは強いですね。
2回にわたってお届けした「アジア美容業界国別オンライントレンド分析」、いかがでしたか? このように、同じアジアと言えども国が異なるとオンライントレンドがかなり異なって来ますので、マーケティング戦略を立てるには細かな分析が重要になります。
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吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。