海外企業のリブランディング、成功事例3選
~長年愛される企業から学ぶ!~
リブランディングを検討したことがある方は、成功するリブランディングのためには「多くの準備」と「緻密な戦略」が必要であることをご存知かと思います。急激に変化する時代のなかで、企業が長年経営を続けていくと「ブランドの方向転換=リブランディング」が、必要になる時期が必ずやってきます。
「リブランディング」と一言で言っても「言うは易し、行うは難し」。非常に複雑であり、失敗すれば顧客離れが加速するなど潜在的なリスクも存在する難しい施策になります。一方、リブランディングを成功させることで、「ビジネスの成長、停滞からの脱却、ターゲット市場の変更、新規市場への拡大、競争上の優位性」など、様々な問題や課題を解決することができるなど成功した時のメリットも大きいのがリブランディングです。
本記事では、新しいチャレンジを選択することによって経営危機を乗り越え、以前よりも大きく成長した企業は世界中には数多く存在します。そこで今回は、実際にリブランディングに成功した事例をご紹介します。
成功した「世界のリブランディング事例」
ドミノ・ピザ
世界最大規模のピザチェーンであるドミノ・ビザは現在世界80カ国、1万以上の店舗がある世界最大のピザチェーン店の1つです。
実は好調に店舗数を増やしてきたドミノ・ピザですが、2009年頃には売上が大きく下落。非常に苦しい時期がありました。
そこで、2009年「Domino’s Pizza Turnaroud」というリブランディング戦略を実施することに。根本的な商品の見直しと、新たなマーケティング戦術によってお客様の信頼回復に努めました。
まずは、大規模なお客様へのヒアリングを実施。ヒアリングによって得たお客様の声に徹底的に耳を傾け、ピザの味を含め、ブランド全体を改善することに注力しました。また、自虐的な動画キャンペーンによって美味しいピザを作ることを約束したことで透明性を確保し、新しいレシピは自信を持って提供できるピザであることもアピールしました。
<Domino’s® Pizza Turnaround – ヒアリングは「段ボールの味がする」「お金を払っても食べたくない」「冷凍ピザをレンジでチンの方が美味しい」など散々な結果に>
その後「ロゴの刷新、パッケージデザインのリニューアル、チャットボットの活用、ソーシャルメディアを通しての注文受付」によって、顧客がどこでどのように過ごしているかなどを分析したり、ウェブサイトに訪れる顧客データを分析するなどさまざまな施策を実施しました。
< Google Finance : ドミノ・ピザ株価推移 >
その結果、2009年~2010年にかけて株価はなんと130%増。2016年には市場シェアの15%を獲得するまでに回復することに成功しており、ドミノピザの株価は2009年から現在に至るまで上昇し続けています。
LEGO
1932年、デンマークで創業され世界130カ国で展開される世界有数の玩具メーカーです。しかし、2003年頃に資金繰りが悪化し、売上は前年比30%減、8億ドルという多額の負債を抱えていました。またメインターゲットである「こども」のLEGO離れが加速し、倒産の危機に見舞われました。
そこで、2004年オーナーのKjeld Kirk Kristiansen氏が中心となってブランドの再構築を行いました。まず、消費者を深く理解するために、NPS(ネットプロモータースコア)を導入して「ブランドに対する愛着や信頼」など目に見えないものを数値化を行いました。
消費者の好みや要望を把握して、問題点をリアルタイムで素早く特定することで継続的な改善を行いました。また、子供だけでなく親を惹きつけるために、様々な独自のデジタルチャネルを追加し、全てのタッチポイントで顧客のフィードバックを収集する体制を構築しました。
このときの様子を当時マーケティング部長であったConny Kalcher氏は以下のように述べています。
「“We went totally astray as a company, and I think if we’d had more focus on the consumer, and had listened to them, we would have seen the warning signs earlier than we did,” / 私たちは完全に道を踏み外していました。もっとお客様の声に耳を傾けていたら、もっと早く警告サインに気づけていたと思います。」
< 参照:Lego sales revenues 1993-2013>
お客様であるユーザーの声に向き合い、徹底したリサーチを元に7年間にわたって築いたリブランディングプロジェクトは功を奏し、レゴは2017年Forbes誌「世界で最も有力なブランドランキング」1位にも選出されるなどブランド再構築を成功させたのです。
Mother Energy Drink
2006年、コカ・コーラ社はオーストラリア・ニュージーランド向けにエナジードリンク「マザー・エナジー」を発売しました。
既に市場には競合である「V」や「レッドブル」が市場を占有していましたが、コカ・コーラ社は大きな市場を獲得できると予測していました。大規模なサンプリング・大幅値引きキャンペーンなど1500万豪ドルを投じてのマーケティングキャンペーンを実施。販売当初は好調だったものの、リピート販売が伸び悩み、苦戦を強いられる状況に陥りました。
そこでコカ・コーラ社は、製品そのものを再評価するための大規模市場調査を実施し、リピート率の低さは「味」にあることを突き止めました。大規模市場調査の結果を受け、2008年に味や成分などを含めた全面的なリブランディングを実施しました。
まずは「商品パッケージの刷新」「容量の変更」「味の調整」を重点的に行いました。また「SNSを活用した企業活動の発信」「顧客とのコミュニケーションキャンペーン」「駅構内での無料サンプル配布」など、リビルドしたマーケティングキャンペーンも実施しました。(ちなみに、私も当時オーストラリアに住んでいたので、ゲリラ的に行われる無料サンプリングや大規模な広告キャンペーンには何度か遭遇しており、マザー・エナジーのリブランディングによる快進撃を目の当たりにしました)
また、最大の課題であった「消費者にもう一度商品を手に取ってもらう」という課題に対して非常にダイレクトなメッセージとして「New Mother, Tastes Nothing Like the Old One」というコピーを掲げ、「(”不味い”という)問題に正面から取り組んだ姿勢」を全面的にアピールしました。
< YouTube:New Tastes Nothing Like the Old One >
この動画には「美味しくない味の開発に携わった研究者たちを連行する様子」が描かれており、新しく刷新した商品パッケージにも「New Mother, Tastes Nothing Like the Old One」のスローガンが印刷されています。
この結果、このリブランディング戦略は功を奏し、今ではオセアニアで最も売れているエナジードリングの1つとなりました。(私も勉強中に飲み、よく覚醒していました。笑)
まとめ
時代の流れが速い現代では、どんなに有名なブランドであっても、常に進化・変化をする必要があるのではないでしょうか?「リブランディング」は、市場で生き残るためだけでなくビジネスの成長を加速させたり、新しい市場にビジネスを拡大するためのソリューションとして活用することも可能です。
「数ある世界のブランドのなかで選んでもらい、ブランドを愛してもらう」ために必要となるグローバルマーケティングにお困りでしたら、ぜひインフォキュービック・ジャパンにお声掛けください!
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。