東南アジアで人気のGrabとは?
~Grabのマーケティング活用法~
インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、カンボジア、ブルネイ、ミャンマー、ラオス、ベトナムの10か国が加盟しているASEAN(東南アジア諸国連合)の経済成長は著しく、世界から注目が集まっている地域の1つです。特にこの地域のデジタル市場は今後も成長することが予測されています。
ASEAN地域の総人口は2021年の時点で、6億7,333万人で日本の5.4倍に上ります。世界総人口の8.6%に相当しており、EU(欧州連合)の人口 4億4,695万人やNAFTA(北米自由貿易協定)の 5億40万人、MERCOSUR(南米共同市場)の3億1,104万人 と比較しても注目すべき地域であることがわかります。
<外務省_ASEAN経済統計基礎資料>
Google、Bain & Company、Temasekによる共同レポート「e-Conomy SEA 2022」では、2022年の東南アジアのデジタル市場規模は、2021年と比較して20%近く成長しており今後も成長が見込まれています。2021年のデジタル市場規模が1610億ドル(約22兆円)であり2025年は3300億ドル(46兆円)と予測されています。パンデミックが追い打ちをかけたデジタル管理への推進や、東南アジア諸国の多くが18 歳から 29 歳のテクノロジーに精通した若年層が増加していると言ったさまざまな背景から、今後東南アジアにおけるデジタル市場の拡大に拍車をかけています。
そして、ここ東南アジアでのデジタル化推進と共に、急速にシェアを伸ばしているアプリの1つが「Grab(グラブ)」です。
Grabは配車サービスからスタートしましたが、現在では配送・フードデリバリー・金融サービス・旅行予約・オンライン医療など、東南アジアにおける生活・ビジネスに使用するさまざまな機能を備えたスーパーアプリとして人々から親しまれています。
車を乗るためには、まず「車を持つ権利」を政府から購入する必要があるシンガポールでは、「Grab」は国民の重要な移動手段の1つとして重宝されており、”必需のアプリ”と言っても過言ではありません。
今回は、東南アジアでの生活に必須のスーパーアプリ「Grab(グラブ)」の概要からGrabをマーケティングに活用するための方法などについてご紹介いたします。
目次
スーパーアプリ「Grab」とは?
Grabは2012年にマレーシアを拠点にして設立された、自動車配車サービスを軸とした配達、金融サービス、オンライン医療など、さまざまなサービスをアプリを通じて提供する企業です。
特に有名なのは、登録した一般ドライバーと顧客をマッチングする自動車配車サービスやフードデリバリー事業です。現在はシンガポールに本社を置き、東南アジア・東アジア地域の8カ国465以上の都市で利用することが可能です。
Grabの配車サービスは創業者であるアンソニー・タン氏とタン フーイ リン氏がハーバード・ビジネスクールに在籍中、新規事業コンテストで2位になった案がベースとなっており、創業当初は「MyTeksi」として、マレーシアを拠点にタクシーの配車サービスを展開していました。2013年にはフィリピンにも拡大、その後、いっきに東南アジアの各国で「GrabTaxi」というタクシー配車サービスを展開するようになりました。
2015年にはフィリピンでは、目的地が同じ人をマッチングさせて車で移動するライドシェアサービス「GrabCar+」を立ち上げ、同じ距離を移動する際に相乗りする人がいることで移動に伴う出費を抑えることが可能となり人気が高まりました。
2016年には社名を現在の「Grab」に統一して、東南アジアの各国でフードデリバリー、配送、買い物代行、キャッシュレス決済、保険、資産管理、オンライン医療など、さまざまなサービスを展開しています。
Grabの主要サービスとは?
さまざまなサービスを提供しているGrabでは、「モビリティ・金融サービス・ライフスタイル・企業向けサービス」を全て1つのスーパーアプリを通じて提供しています。ユーザーはスマートフォンやタブレットにアプリをダウンロードすることでサービスを利用することができます。
主なGrabのサービスは以下の通りです。国や地域によって、サービスが異なるため、ご注意ください。
▼ Mobility(配車サービス)
- JustGrab:Grabに登録された一般の自家用車による送迎サービス
- GrabTaxi:Grabに登録されたタクシーによる送迎サービス
- GrabHitch:同じ方向の誰かと「相乗り」送迎サービス
- GrabCar Premium:Grabに登録された一般の自家用車の高級車による送迎サービス
- GrabFamily:Grabに登録された一般の自家用車で、チャイルドシート搭載車での送迎サービス
- GrabPet:Grabに登録されている一般の自家用車で、ペットが乗車できる送迎サービス
- GrabAssist:訓練を受けた一般の運転手がサポートしてくれる送迎サービス
- GrabAssist Plus:Grabに登録された一般の自家用車で、車椅子対応の送迎サービス
- GrabCoach:40名までのグループで利用できる配車サービス
その他、国や地域によって「GrabBike(バイク)やGrabTukTuk(トゥクトゥク)」などの配車サービスも利用できます。
▼ Fintech(金融サービス)
- AutoInvest:配車サービス、GrabFood、GrabMart、GrabPayを利用した際のGrabトランザクションを投資に回すことができます。毎回 1シンガポールドルから投資可能で年間最大 1.18%*を獲得することが可能 *Estimated returns are not guaranteed or protected
- Earn+:遊休現金を短期債券投資信託に投資することで、年率2~2.5%* の収益を獲得することが可能 シンガポールのみ+米国人は利用不可 *Estimated returns are not guaranteed or protected
- GrabPayWallet:デジタル決済サービス、クレジットカードと紐づいており、ウォレット内にチャージ・支払いが可能
- GrabPayCard:世界中の 5,000 万以上の Mastercard 加盟店でオンライン、実店舗、海外を問わずカード支払いが可能
- GrabRewards:Grabサービスを利用するとも付与されるポイントプログラム
- GrabGifts:Grab内で利用できるギフトバウチャー。誕生日のお祝いや感謝の気持ちを伝えるなどメッセージ付きで送ることができる
- Travel Cover:旅行期間、目的地、補償対象者を指定するだけで、旅行保険が購入可能
- Ride Cover:配車サービスを利用して移動中に事故があった場合の人身傷害補償(シンガポール限定)
▼ LifeStyle(ライフスタイル)
- GrabExpress:書類や荷物などを安全に配送できる配達サービス。GPS追跡、保証付き
- GrabFoods:レストランからのフードデリバリー
- GrabMart:スーパーマーケットや薬局、花屋など店舗から商品を購入でき、配送してくれる
- Airport Ride:東南アジア130以上の空港でGrab認定のドライバーを前払いで手配可能
- GrabHealth:認定医師による医療アドバイスを無料で受けることができ、医薬品などを自宅に配送してくれるサービス(インドネシア)
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GrabHotel:世界中の何百万ものホテルを内覧して予約可能
▼ Enterprise(企業向けサービス)
- GrabGift:顧客、ゲスト、従業員向けなどに利用できるギフトカード。企業のギフトプロモーションとしても利用可能
- Business Transport:従業員、出張者、顧客などの送迎サービス
- Grab Finance Loan:ビジネスのための金融ローン
- GrabExpress:企業向け速達サービス
- GrabDefence:スーパーアプリから e コマース アプリまで、モバイル ビジネスがプラットフォームを詐欺から保護する不正行為検出サービス
- GrabMaps:東南アジアの複雑な道路網と交通状況に合わせて調整された地図プラットフォームサービス
- GrabAds:Grab内で利用できる広告
Grabが利用できる国は?
2023年、Grabのアプリダウンロード数は2.19億ダウンロードを超え、2022年時点で利用者数は1億8700万人、月間アクティブユーザーは2400万人を超えています。ただし、全ての都市で全てのサービスを利用できるわけではなく、国と利用できる都市が限られています。
- マレーシア:クアラルンプール、マラッカ、ペナンなどの主要都市
- シンガポール:全域
- カンボジア:プノンペン、シュムリアップ
- ミャンマー:ヤンゴン、マンダレー
- インドネシア:ジャカルタなどの主要都市
- タイ:バンコク、ジェンマ委、プーケットなどの主要都市
- フィリピン:マニラ、セブなどの主要都市
- ベトナム:ホーチミン、ハノイ、ダナン、ホイアンなどの主要都市
企業でGrabを活用するには?
Grabは東南アジアで広く利用されており、配車サービスなどの交通手段、フードデリバリーサービス、デジタルウォレットなど、人々の日常生活に密着しているスーパーアプリです。そのためさまざまな角度からユーザーに効果的にアプローチすることができるため、自社の認知向上や、売上を向上させる大きな機会になると言えるでしょう。
Grabにはオフライン広告・オンライン広告を活用することが可能です。Grab広告部門である「GrabAds(Grab広告)」は、Grabでの売上を拡大するためのマーケティング設計、拡張を目的にマーケティングマネージャーを立ち上げています。
マーケティングマネージャーを活用することで、アプリ内広告やGrabエコシステムを介した複数の広告チャネルの利用ができるようになります。大企業はもちろんですが中小企業であっても、より多くの顧客にアプローチすることができる広告プラットフォームです。東南アジア地域の生活のデジタルインフラとして定着しているGrabでは、さまざまなユーザーデータを活用することができるため、自社に最適なターゲットに最適なキャンペーンを配信することが可能となります。
Grab広告の特徴とは?
Grab広告を企業のマーケティング施策として取り入れるメリットは、次のことが挙げられます。
▼ 東南アジア地域の多くの消費者にアプローチが可能!
Grabは東南アジア8カ国で利用されており、人々の日常生活に浸透しているアプリです。そのため、「発見~検討、購入~カスタマーリテンション」に至るまでのユーザージャーニー全体をカバーしており、さまざまな接点で多くの消費者にアプローチすることが可能です。
▼ 購買力が高く、利用頻度が高い
Grabオーディエンスの特徴の1つが、「経済力があり、購買力が高い、中・高所得者」です。Grabを利用する79%はホワイトカラー労働者であり、68%は中・高所得です。さらに、Grab利用ユーザーの60%以上がアプリを開くたびに、何らかの商品やサービスを購入しています。
▼ 優れたターゲティング機能
ユーザーの生活にマッチしたさまざまなサービスを提供しているGrabは、信用できるユーザー取引のファーストパーティーデータを元にターゲティングすることが可能なため、実際の消費者の行動に基づいたペルソナとオーディエンスを作成します。
▼「信頼性の高いプラットフォーム」と認識されている👏
Grab広告では、広告に対して消費者がどのような肯定的・否定的に反応する可能性を測定する「Ad equity」のスコアを測定し広告配信を行っています。そのため、インドネシア、ベトナム、マレーシア、タイの消費者からGrabの信頼性は高く評価されています。(調査会社KANTER)
特にこの地域の女性消費者の間では、「Grab広告は他のメディアブランドと比較して、押しつけがましくない」と高評価を得ており、マレーシアにおけるZ世代消費者への調査でもGrab広告への好感度ランキングは1位、タイでは2位を誇っており、他のプラットフォームよりも質が高いと評価されている優れた広告プラットフォームなのです。
▼ フルファネルソリューション
ユーザーが発見から検討、購入に至るまでのユーザージャーニー全体をスーパーアプリ内で完了することができるGrabでは、目的やターゲットに応じてさまざまなタッチポイントでユーザーにアプローチすることが可能です。Grabはユーザーの生活の一部であり、多様なサービスを通して一日中ユーザーと繋がっています。
Grab広告の種類
Grab広告では、オフライン・オンラインさまざまな広告フォーマットが用意されており、Grab広告を効果的に活用することで、ASEAN地域の数百万人とタッチポイントを作り出すことが可能です。Grab広告の種類は以下があります。
- アウトオブホーム(OHH):車やバスの車体に広告をラッピングする方法
- 車内エンゲージメント(In-Car Engagement):車内でのブランディング・サンプリング、デジタル表示など
- アプリ内機会(In-App Opportunities):アプリ内でのデジタル広告、アクションに対しての報酬としてGrabギフト、GrabDailyウィジェットなど
オンラインとオフラインの両方を使用したアプローチが、Grab広告の成功要因の1つとなっています。
デジタル広告フォーマット例
ここではインフォキュービック・ジャパンを通して出稿可能なGrabのデジタル広告フォーマットを簡単にご紹介していきます。
▼ マスヘッド広告
認知・検討・購入段階のユーザーに向けて、Grabのホーム画面にインパクトのある広告を出稿し認知拡大を促進します。
▼ ネイティブ広告
視認性の高い掲載位置に画像や動画、テキストを含めた広告を出稿し、比較検討段階のユーザーにアプローチすることが可能です。ファーストビューの掲載位置で、視認性が高いく、自社サイトやECサイトへ誘導が可能です。
▼ リワード広告
インセンティブでユーザーを惹きつけ、行動を喚起する広告。商品・サービスに興味を持つ潜在顧客にリーチし、認知獲得や検討を促進します。
▼ OtoO(Online to offline)
オフライン広告との掛け合わせで、店舗への誘導を促す広告です。日本国内の店舗へ誘導することもできるため、近年増加している東南アジアからの観光客をターゲットに広告を配信することも可能です。
Grabでは企業が活用できるさまざまなデジタル広告が用意されています。次回の記事では、Grabのデジタル広告を詳しくご紹介していきます!
まとめ
いかがだったでしょうか?東南アジアで人気の高いGrabの概要などをご紹介しました。Grabは東南アジア8カ国でサービスを展開するスーパーアプリです。Grabが提供しているGrab広告を利用することで、東南アジアに住む何百万人とつながることが可能です。Grab広告は、飲食店や自動車業界、小売業界に相性が良く、マーケティングの知識が無くても、Grab広告が提供するマーケティングマネージャーを利用することで簡単に取り組むことが可能です。
東南アジア・東アジア地域をターゲットにデジタル施策をご検討でしたら、ぜひ、お気軽にご相談ください。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。