多言語動画制作 9つの注意点
~多言語動画ならではのポイントを解説~
(初稿 2019年10月15日)
近年、AIの登場で動画制作に革命を起こし続けています。アイデア出し、スクリプトの作成、編集など、さまざまなプロセスで動画作成を効率化し、誰でも高品質の動画を効率よく作成することが出来るようになってきました。そのため、今後も動画の需要は高まり、さらに動画マーケティングはビジネス戦略に不可欠な施策となるでしょう。
特に現在、海外マーケットの主力となりうる「多言語動画」の制作に多くの関心が集まっています。しかし、試行錯誤して多言語動画を制作したにも関わらず、期待した成果を得られないこともしばしばあるかもしれません。
そこで本記事では、海外マーケティングの分野で注目を集めている「多言語動画制作」において、気をつけるべき「多言語動画制作 9つの注意点」を紹介します。
目次
気をつけるべき「多言語動画制作 9つの注意点」
AIの進化により誰でも簡単に動画制作が行えるような時代が到来しました。動画を制作するうえで、動画全体のクオリティやサウンド効果が重要であることはいうまでもありません。しかし、本記事では、「多言語動画」という観点から、制作時に気をつけるべき9つの注意点をご紹介します。
1.目標とターゲットユーザーを理解する
日本人のグローバル化が進んできたとはいえ、日本人と世界の人々の感覚の違い、習慣の違い、興味関心の違いは当然存在します。例えば、日本式の挨拶は礼儀正しいと見る人もいれば、距離感のあるたどたどしいものだと見る人もいます。日本人志向が強い動画の場合、海外ユーザーはその動画を奇妙に感じたり、興味を失ったりすることもあり得ます。
動画コンテンツを制作する前に、動画制作の目的を定め、ターゲットユーザーを洗い出しましょう。動画を制作する目的はブランド認知の向上なのか、売り上げの促進なのか、視聴者への教育コンテンツなのかを定めます。目的が決まれば、次はターゲットユーザーの洗い出しです。ターゲットユーザーを明確にすることで、想定されるユーザーの好みやニーズ合わせて動画の内容をマッチさせていきます。国や地域が違えば、文化、価値観、習慣が違うため、しっかりとユーザーを定め、理解を深めてから動画制作にとりかかりましょう。
2.使用する言語を選択する
現在、世界には7000を超える言語があるとされています。
AIが発達し、簡単に動画コンテンツが制作出来るようになったとはいえ、すべての言語を網羅することはできません。動画の使用用途、ターゲットとなる国や地域に合わせて使用する言語を適切に選択しましょう。ネイティブ人口だけをみれば、最も利用されているのは中国語です。国数でいえばやはり英語、スペイン語でしょう。また、インバウンド用に作成するのであれば訪日客数の多いアジア諸国の言語を利用するのが効果的ですし、将来性を考えればアラビア語やロシア語なども選択肢に入れても良いでしょう。
動画制作の目的と合わせて、どの言語を活用するのかをしっかりと吟味してください。以下は、世界のウェブサイトで利用されている言語を示したものです。言語を選ぶ際の参考にしてください。
<Berlitz_The most spoken languages in the world in 2024>
3.ネイティブでも異なる言語の方言
英語やスペイン語のように多くの国で利用されている言語は、国ごとに異なる方言が存在することが多くあります。英語に関しては、アメリカ、イギリス、オーストラリアで発音やイントネーションが異なることは広く知られていますが、オーストラリア英語は、アメリカ人やイギリス人が聞いても理解が困難な場合があります。また、スペイン語に関しても、スペインで話されているスペイン語と、アルゼンチンで話されているスペイン語では大きな違いがあります。
どの言語にも方言が存在することに注意してください。
4.翻訳後の文章の長さ
日本語は漢字を使用しているおかげで、他の言語と比べると比較的文章が短いのが特徴です。英語で同じことを伝えようとすると、文章がより長くなる傾向があります。フランス語やロシア語、スペイン語になると、さらに長い文字数が必要になります。つまり、日本語字幕を他の言語に翻訳した場合、場合によっては非常に長い文字ばかりが目立つ動画になってしまうこともありえますし、一コマの中に納まりきらない場合もあります。
この点を踏まえ動画に含める情報量については、ターゲット言語を念頭に置いたうえで動画制作を進めることが重要です。
<言語による文の長さの一例>
5.ハイコンテクストとローコンテクストの違いを理解する
1970年代に文化人類学者のエドワード・T・ホール氏が提唱した「ハイコンテクスト文化・ローコンテクスト文化」という概念では、コミュニケーションの中で、言葉に重きを置くものをローコンテクスト、言葉以外の意味に重きを置くものをハイコンテクストと定義しています。
その中でも日本語は世界の中でもトップクラスのハイコンテクストだと言われています。日本語の場合、具体的な言葉がなくても前後の文脈を読み取り、内容を理解しようとします。しかしこれは、「日本語」が持つ独自の特徴ともいえるもであり、海外では重要なことはハッキリと言葉で説明しなければ正しく意味が伝わらないということが多々あります。
多言語動画を制作する際には、日本語のセリフを単に対象国の言語に翻訳すればよいというものではなく、必要に応じて動画を補足する説明を取り入れる必要が生じることもあります。「海外の人からみてどのように感じるか」という視点を十分に取り入れて動画制作を進めましょう。
ハイコンテクストとローコンテクストの比較(参照:伝わる文章は「飛び石」でできている)
6.宗教の違い
国や地域が違えば、その価値観が異なることは当然です。多言語で動画制作を行う場合、特に気を付けたいことはやはり「宗教的」な配慮です。日本住んでいるとそれほど感じることはありませんが、多くの国では宗教が非常に大きな影響力を持っています。
「宗教」の懸念点は、単に国や地域だけで単純に区切ることが出来ないという点も留意しておく必要があります。歴史的背景や地理的条件から、多様な人種や文化が交じり合う国や地域は数多く存在しています。政府主導で多人種・多宗教を進める国もあるほどです。
<明治大学_世界の宗教を参考>
上の図のように、単に「仏教、キリスト教、イスラム教」と言ってもその中でもさまざまな宗派に分かれます。加えて、民族宗教も存在します。
現在でも宗教紛争が存在するなか、動画内で宗教上の禁止事項や好ましくない行為が映っていた場合、その人々は動画が視聴されないだけでなく、企業が批判の的にさらされてしまう!ということにも繋がりかねません。
動画を制作に取り掛かる前に、宗教問題に関する視点から再度内容を確認することをお勧めします。
7.効果的な動画の拡散方法
ビジネス上の目的を達成するために、制作した多言語動画をどのように拡散するかは非常に重要です。
多くの企業がデジタル施策を実施している昨今では、自社のWebサイトに動画を挿入するだけでは、望ましいトラフィックを獲得することは難しいでしょう。逆に言えば、動画のクオリティがそこそこであっても、効果的な方法さえ活用すれば、多くのトラフィックを獲得し、多言語動画の効果を何倍にも引き上げることが可能となるのです。
多言語動画を制作することだけに注力するのではなく、制作した動画をどのように拡散していくかも合わせて検討しましょう。
8.拡散性の高い要素を取り入れた動画を制作する
制作した多言語動画が魅力的だった場合、視聴回数が着実に伸びていくことが予想されます。しかし、企業紹介などのジャンルの動画であった場合、短期間で多くのトラフィックを獲得することは難しい傾向にあります。そのため、トラフィック増加をKPIに置く場合は、動画の中に世界で拡散性の高い要素のあるコンテンツを入れ込み、爆発的なトラフィックの獲得を狙うのも方法の一つです。
これらは世界の動画事情をよく知っていないと難しいため、専門家の意見を取り入れながらコンテンツ作成に取り組むことをお勧めします。
9.動画の効果分析を行う
多言語動画の制作には、時間も費用も、日本語動画を制作する以上にコストがかかってしまいます。そのため制作した動画が適切に機能しているかどうかをしっかりと分析を行いましょう。
動画の視聴回数やWebサイトのトラフィックを確認することで簡単な分析を行うことはできますが、その分野に精通した専門家に分析と対策を依頼することで、動画のパフォーマンスは向上します。また、多言語動画制作とグローバルマーケティングの両者を専門に扱う企業を活用することで、より効率的に海外マーケティングを進めることができるでしょう。
ご支援事例
株式会社クボタ計装様
クボタの「重量式フィーダ」製品を、webを活用した施策によって中国・インドで拡販していこうとしていた「クボタ計装」様。まずは情報を収集しようとご参加いただいた弊社主催の海外マーケティングセミナーご参加後にご連絡をいただき、リスティング広告を皮切りに、動画制作・LP制作・SEO施策と、数年にわたるプロジェクトのパートナーとして選んでいただいた。
「Google」「百度」のリスティング広告については、出稿開始から半期後にはwebからの訪問者数が33倍、その1年後にはさらにその3倍となり、スタート時と比較すると99倍という大きな成果となった。また制作した海外向け動画・LPについては、重点ターゲット地域として設定している中国・インドの販売店から、「クボタの魅力がよく伝わってくる」といった意見が届き、また社内でも「ブランドの魅せ方としてとても格好良くなった」と好評をいただいている。
株式会社クボタ計装様の事例記事はこちらからご覧いただけます。
さいごに
海外向けの動画制作は、マーケティングを成功させるために非常に重要な手段の一つです。時間やコスト、労力はかかりますが、投資する価値はあるでしょう。しかしながら、効果の出る多言語動画を制作するためには、気をつけるべき点が多く存在します。また、動画を制作するだけでなく、制作した動画を効果的に活用するために、デジタルマーケティング手法も重要になってきます。
インフォキュービック・ジャパンでは、動画制作を含め、さまざまな海外向けプロモーションご支援実績がございます。多言語動画の制作や動画を活用したプロモーションなどでお困りのことがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。