時系列で振り返る「ウェブサイト、進化の歴史」
~世界初のページ、Flash登場と衰退、UI/UX重視の時代へ~
「ウェブサイト、進化の歴史」
世界初のページ、Flash登場と衰退、UI/UX重視の時代へ
世界中でデジタルトランスフォーメーションが進み、IoT (Internet of Things)という言葉と共に、世界中のあらゆるモノや情報がインターネットを介し様々な場所で活用されるようになりました。インターネットはこれまでにないほど世界に革命をもたらしているといっても過言ではありません。そんなデジタルの世界のなかでも、私たちが毎日目にする「ウェブサイト・ウェブページ」。
現在のウェブサイトやホームページは、デザイン設計や表示様式の幅広いカスタマイズが可能です。サイトに来訪したユーザーとインタラクティブな関係性を生み出す「動的なユーザーエクスペリエンス(UX)」や「チャットボット」など、訪問者の属性・嗜好に合わせた対応を可能にしています。今日のこうしたインタラクティブな形にいたるまでには、ウェブサイトは様々な進化の過程・段階を踏んできました。
皆様はウェブサイトがいつ誕生したかご存知ですか?
答えは、1991年。
1991年に最初のウェブページが作成・公開されてから、2000年代の黎明期、2010年の成熟期を経て今日にいたるまでテクノロジーによってウェブサイトは大きく可能性を広げてきたのです。今回はウェブサイト進化の歴史をご紹介します。
1990年代初頭「世界で最初のウェブページの誕生」
世界で最初のWebページは、1991年8月6日に、欧州原子核研究機構(CERN)のTimBerners-Leeによって公開されたものといわれています。このページには「World Wide Webに関する情報」と「フォーマットやプロトコル、およびWebページの作成方法」といった情報がテキスト情報として紹介されました。
1990年代の最初期のWebページは、当時のインターネット接続が遅かったことや、限定的な技術を用いて作成されていたため、ほとんどの情報がテキストによるものでした。
このTimeBerners-Leeのページでも、現在の先進的なウェブサイトのようなデザイン・ページ構造はしていませんが、この時点で「ヘッダー・段落・リンクのための基本的なHTMLタグ」が登場しています。
その後、インターネットのパイオニアともいえるTimeBerners-Leeは、1991年10月に「HTMLタグ」というタイトルのドキュメントをインターネット上で公開しました。このなかには、現代のウェブサイト構造にも通ずる<h1><p><title>といった、最初の18個のHTMLタグ記述を含んでいました。
初めての写真アップロード
1992年7月には、CERN研究所で働いていたイタリアのコンピューター科学者であるSilvanode Gennaroは、Tim Berners-Leeから、Les Horribles Cernettes(The Horrible CERN Girls)というパロディーポップグループの写真をスキャンしてinfo.cernにアップロードするよう依頼されました。この写真は、World Wide Webで公開された最初の画像の1つになりました。
「Photoshop 1.0」の誕生
1990年にAdobe Systemsは、「Photoshop 1.0」と呼ばれるグラフィックエディタをリリースしました。これはThomas Knoll兄弟が趣味のデジタル画像の加工のためにプログラムを作成したものでした。現在、Cumputer History Museumによって、Photoshop 1.0のソースコードが公開され、非営利目的で利用可能になっています。
1990年代半ば「ウェブサイト世界基準の確立」
W3C.orgの設立
1990年代に「世界で最初のウェブページ」を作成したTim Berners-Leeによって、1994年10月「World Wide Web Consortium(W3C)」と呼ばれる国際非営利組織が設立されました。この組織は、ウェブで用いられる技術の標準化を目指すために設立されました。
たとえば、W3Cは、HTML、XHML、XML、またはCSSマークアップ言語のスタンダードを開発し公開することで、世界のウェブサイトの共通基準をつくることをめざしたのです。このW3Cの設立を通じたウェブページの共通基準がつくられたことは、世界各地のエンジニアがウェブサイトを加速度的に発展させていくための土台となりました。
世界で最初のウェブバナー
アメリカの大手携帯電話会社として有名なAT&T が、1994年10月にウェブマガジン「HotWired」にインターネット史上初のWebバナーを掲載しました。
世界で最初のWebバナーは476 x 56ピクセルで、「マウスをここでクリックしたことがありますか?」というフレーズのみが含まれるシンプルなもの。バナーをクリックすると、世界のギャラリーや美術館の名前が書かれたリンクが表示され、美術館のやギャラリーの公式ウェブサイトが表示されました。
Amazon.comサイトの誕生
ジェフベゾスによって設立されたAmazonが最初のウェブページを制作したのもこのころです。1994年7月5日にAmazon.comで最初のオンラインストアの1つが立ち上げられました。
ウェブデザインの特徴
1990年代中盤のウェブページデザインの特徴として、プレーンテキストが羅列される極端にシンプルなみためではなくなり、その代わりに配色、テーブルベースのレイアウト、GIFの利用や訪問者数のカウントなども可能になりました。
この頃のアメリカの放送局であるBBCのウェブデザインからわかるように、テーブルベースのレイアウトではなくなっていきますが、様々な構造を作るアイデア、実践がされていきました。
1990年代後半「Flashデザイン、SEOの登場」
Flashの開発
90年代後半、ウェブデザインを変革する新しいイノベーション「Flash」が導入された時代です。1996年12月、かつて米国にあったマクロメディア社が、Web上にアニメーションやビデオといったコンテンツを再生する技術としてMacromedia Flash 1.0を開発しました。FlashはWebではありませんが、Flashの登場によって3Dボタンや色を変化させるナビゲーションなど、ウェブデザインの可能性を大きく拡張しました。
しかし、Flashにはいくつかの欠点がありました。ユーザーがアプリケーションをブラウザ上で実行しなければならず、読み込み時間が極端に遅くなってしまう他、セキュリティが脆弱であったことから、ウェブページがアニメーション・動画に対応するようになると、Flashを利用するウェブは次第に減っていきました。Adobe Systemsは2020年末でFlashの開発、提供を終了すると発表しました。
中国初のインターネット接続サービス
1994年に中国が初のインターネット接続を開始し、1995年、中国電信が中国初のインターネット接続サービスを一般向けに開始しました。また、中国で最初のビジネス向けインターネット企業「ChinaYellowPage」が誕生しました。(この「ChinaYellowPage」の創始者は中国の巨人Alibaba創始者でもあるJack Ma(ジャック・マー)氏です。)
SEO
今でもマーケティング手段として有効なSEOが登場したのも1997年です。「SEO」という用語の最初の使用は完全には文書化されていませんが、Search Engine Watchの創設者であるDannySullivanによれば、検索エンジン最適化という用語は1997年5月に初めて登場したとされています。
Googleの誕生
1996年、世界を変えるきっかけがまた生まれます。ラリーペイジとセルゲイブリンはスタンフォード大学でGoogle検索検索エンジンの前身、「Backrub」と呼ばれる検索エンジン研究プロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、数学的アルゴリズムを使用してウェブサイトのバックリンクの分析して「検索の関連性」を判断しました。この方法は当時では新しいアプローチ法でした。
後に「PageRank」と呼ばれるこのアルゴリズムは、相互参照に基づいて個々のWebページ間の関係(距離)を分析し、その重要性を評価しました。Googleという名前は、1の後に100個のゼロが続く膨大な単位である「googol」という単語を意図的に並べ替えたと言われています。
2000年代初頭「ユーザビリティ」重視
2000年代になりCSSへの対応が普及し、「ウェブコンテンツ」と「ページデザイン」を分けて開発することが可能となり、従来より大きなクリエイティビティを発揮できるようになりました。コンテンツをデザイン面から考案することや、その逆も可能となりコンテンツ自体の自由度も幅広く設計できるようになったのです。
また、この頃からウェブデザインの配色の重要性の理解が深まり、全体的に空白スペースを効果的に用いるケースが増えます。画像やアイコンの解像度やピクセルの重要度が増し、アイコンのテキストだけでなくリンクもつけられるようになり、CSSの普及と合わせてコンテンツレイアウトに対しての関心が高まった時代ともいえます。
その結果、ウェブデザインにおいて、ユーザビリティやUI/UXを意識した要素が重要視されるようになっていくのです。
Wikipedia の登場
Wikipediaが登場したのはこの頃(2001年)です。ジミーウェールズとラリーサンガーは、多言語のインターネット百科事典であるウィキペディアを設立しました。
ウィキペディアのエントリの作成には、世界中のボランティアが参加しています。ウィキペディアの前身はヌーペディアというウェブ百科事典でしたが、ウィキペディアとは異なり、専門家のみが寄稿することを許可されていました。
はじめてのレスポンシブウェブデザイン
ウェブ開発などを提供するRazorfishによって自動車ブランド「Audi」向けに設計されたWebサイトは、Webブラウザウィンドウのサイズに基づいて表示コンテンツを変更する最初のWebサイトの1つでした。つまり、世界で最初のレスポンシブウェブデザインを伴ったウェブサイトといえます。
Audi.comは、640 x 480ピクセル、800 x 600ピクセル、および1024 x 768ピクセルに合わせて、ページ表示が最適化されるように設計されました。ただし、Audi.comは、今日私たちが慣れ親しむ「デバイスサイズを検知して表示を最適化させる」レスポンシブWebデザインではなく、ブラウザの解像度を検出してJavaScriptを通じてデザインを動的にカスタマイズするものでした。
YouTubeの登場
ユーザビリティを重視しはじめるこの時代、新しいプラットフォームが生まれます。3人の元PayPalの従業員、チャド・ハーリー、スティーブ・チェン、ジョード・カリムは、ビデオファイルを公開して共有するためのウェブサイトをYouTubeとして公開しました。
一番最初に公開された動画のタイトルは「ミー・アット・ザ・ズー」。共同創設者の1人であるジョードカリムが、2005年4月23日にYouTubeにアップロードした「サンディエゴ動物園」を映した短い動画を公開しました。
2000年代後半:「ウェブユーザビリティ」を大切に
1990年代はじめにはじまった一連のウェブページ誕生期「Web 1.0」時代が終わりを迎え、2005年頃から「Web 2.0」時代に突入しました。
Web 2.0とは、情報の受け手であったユーザーが情報発信を始めた時代です。具体的なサービスとしてはSNS(ソーシャルメディア)やWiki、ブログなどが代表されます。
この時代はAjaxやAPIといった技術が導入され、従来のWebサイトが静的だったのに対し、動的コンテンツの配置を実現させ、よりインタラクティブなコンテンツを提供するWebサイトが続々と登場していきます。今日ではWeb担当者が重要視するUI/UXといった概念もこの時代に登場し、デザイナーやコンテンツ開発者だけでなく、本格的なWebマーケティングの釈明期でもあります。
CSSアワードの開催
2009年、CSSやJavaScriptの発展に伴って世界のウェブサイトが著しい進化をみせるなかで、とりわけデザインの面で非常に創造的で革新的なCSSベースのウェブサイトを表彰するために「CSSAwards」というギャラリーが立ち上げられました。提出されたウェブサイトは、コミュニティメンバーと審査員団の投票に基づいて、いくつかのカテゴリで投票され表彰されます。2011年2月24日、CSSAwardsは「Awwwards」と名前を変え、2021年現在も定期的に世界各地のグローバルサイトを評価しています。
現代「ウェブユーザビリティを重視」
世界で初めてウェブサイトが公開されてから30年近くが経った現在、ウェブサイトは企業やサービスをアピールするためのものだけでなく、マーケティングにおいて非常に重要な役割を果たしています。また、スマホなどモバイルデバイスでウェブサイトを閲覧するユーザーも増え、レスポンシブデザインがより一般的なものとなったことも非常に重要な点です。
例えば、ウェブデザインにおいては、「フラットデザイン」「パララックス効果」「ハンバーガーメニュー」といった様々なテクニックが生まれ派生することで、ウェブデザインの可能性は日々広がっています。
また、マーケティングの分野で考えると、MarketoやPardotといった「Marketing Automation(MA)ツール」の進展に伴い、リードナーチャリング・パーソナライズドコンテンツといった様々なマーケティングアプローチが可能になりました。来訪ユーザーの分析やトラッキング、見込み顧客の創出など多用なアプローチがウェブサイトを起点としたデジタルマーケティングとして有効になっています。これによりマーケティングと営業が共通なデータを用いてアクションプランを練ることができ、組織としてもシームレスな活動が可能となったのです。
このように、ウェブデザインはWebだけでなく、マーケティングなどその他の領域にも影響を及ぼす事業にとって非常に重要なものへとなってきています。
まとめ
1991年の最初の登場以来、様々なテクノロジーの進歩によって、ウェブサイト・ウェブページは高度かつ複雑なWebサイトの構築が可能となりました。今回ご紹介したウェブサイトの簡単な歴史を念頭に、世界のマーケットを相手にした効果的なグローバルサイト制作の一助としていただけますと幸いです。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。