「モールEC出店 vs 自社EC構築」どっちがいい?
~メリット・デメリット比較でわかるグローバルD2Cの最適な選択肢~
2021年3月4日、イーロン・マスク氏が率いるスペースX社が、ロケットを打ち上げました。2021年に入って5度目のロケット打ち上げとなる今回のミッションは、衛星コンストレーション構築に向けた低軌道小型衛星「Starlink」 60基の打ち上げです。
「衛星コンストレーションの構築」とは、小型衛星を何万個も打ち上げ地球を覆いつくすことで衛星をネットワーク化し、全世界の隅々までインターネット接続を提供するという新しい形のインターネット通信サービスです。(軍事利用なんて噂もありますが)打ち上げた衛星を低軌道に配置することで、”地球丸ごと”インターネットに接続可能にする仕組みのことです。(防衛省:防衛白書)
この”地球丸ごとインターネット計画”は、遠い未来の話ではなく、既にソフトバンク・Google・Amazon・Facebookなどのビックテックが動き出しています。Appleが極秘で衛星技術チームを組織しているというニュースも話題になりました。また、現在5Gが注目されていますが「衛星通信ネットワークの 5G への統合」なんて話も、大きなトピックの一つとして話題になっています。
Amazonが宇宙衛星コンストレーション計画を発表した後、テスラのイーロン・マスク氏がジェフ・ベゾス氏を名指しで「copy🐈(Cat)」(まねっこ!)とメンションし、なんともイーロン・マスク氏らしいTweetで話題になりました。
.@JeffBezos copy 🐈
— Elon Musk (@elonmusk) April 9, 2019
実は、いま世界人口76億人のうち約半数が、インフラ整備などの理由から未だにインターネットを利用出来ない状況にあります。この衛星コンストレーションや5Gのデジタルインフラ整備が進み、デジタルデバイドを解消するサービスの実現で、約数十億人が新たにインターネットに接続することができるようになるといわれており、「ECの拡大」や「需要の変化」など、世界経済成長に繋がる大きなインパクトが生まれると予測されています。
2020年、新型コロナウィルスの影響により世界中で急速に拡大したEC市場は、今後も進化・拡大を続けていくとともに、小売り企業を介さず顧客に直接商品を販売するビジネスモデル「D2C(Direct to Consumer)」が爆発的に成長しています。誰でも顧客に直接商品を販売することが出来るようになった今、多くのブランドがD2Cプラットフォームを活用してブランドの市場価値を高めています。
今回は、近い将来訪れるであろう「世界的なEC市場競争」に参入する際に、企業にとって大きな選択肢である「モール、自社EC」というマーケティングアセットについて整理します。
世界のEC市場の変化
新型コロナウィルスの影響により、2020年はEコマース業界に大きな変化が生まれました。Eコマース業界はパンデミックが起きたたった数か月で10年加速したとも言われており「ブランドの運営、ビジネス成長、消費者の購買行動、支払い方法」などECに介在する全てのプロセスにおいて革命が起きたといえます。また、顧客の「意思決定、行動、消費に対する価値観」といった顧客像においても変化が生まれました。
< Mckinsey Quarterlyを参考にインフォキュービック・ジャパンで作成>
2020年、世界の総小売売上高の16.4%をEコマースが占め、世界のオンライン販売額は史上最高に達しました。この購買行動のオンライン化は、Z世代やミレニアル世代といった若年層だけでなく、以前はオンラインを警戒していたジェネレーションXやベビーブーマー世代の人々も同じくオンライン購買に移行する結果となりました。
世界各国の外出禁止令が長引くにつれて、多くの消費者はオンラインショッピングに移行することを余儀なくされ、世界のEコマース市場の驚異的な成長へと繋がったのです。
2020年地域別eコマース売上高の伸び率は以下の通りです。
< eMarketer:Global Ecommerce 2020>
今後、ワクチン接種の普及などにより実店舗でのオフライン購買が増えると予想されていますが、この危機で起きた消費者の「購買行動の変化」は、パンデミックが収束してもこのまま継続していくとみられています。ECを運営する企業・経営者・マーケターは、そのときどきの状況において、カスタマーが「どのように優先順位付けを行い、消費行動を変化させ、価値を再定義しているのか」を随時把握しておく必要があるでしょう。<Harvard Business Review :Changing Behavior(消費者の行動変化)>
「モールEC出店 vs 自社EC構築」最適な選択肢は?
世界中がインターネットで繋がり人々がオンラインで購買をする環境が整ったこの時代、海外に向けてネット販売をはじめるときに考えるべきことは、「自社でECを構築する」か「モール型ECに出店するか」です。
先日、ルイヴィトンやディズニーがAmazonをはじめとするモール型ECプラットフォームからの撤退を表明しました。また、テスラやレッドブルといった世界的大企業が自社オンライン販売のプラットフォームとしてShopfiyを採用するなど、いまEC業界は大きな変革の時期を迎えています。「モール型」「自社EC構築」それぞれに一長一短があり、自社にとって何がベストなのかを見極める必要があります。ここから「モールEC出店型」「自社構築EC」のメリット・デメリットを見ていきましょう。
「モールEC出店」のメリット・デメリット
高い集客力
モール型ECはそもそも認知度が高いので、毎月数百万人もの人々がモールを訪れます。海外向けの販売であってもゼロから集客する必要はありません。海外でのブランド認知度が低い場合は、モールに出店した方が購買へ繋がる可能性があります。SEO施策やメールキャンペーンを行う必要もありません。また、モール内での評価が高まれば、売上を伸ばすこともできるでしょう。
ECモールの信頼性
海外向け販売の場合、セキュリティの観点からも知名度が引いブランドからの購入に抵抗感を示す人がいます。モールのブランド力によって顧客は安心感を持って商品を購入する可能性があります。
簡単に販売をスタートできる
既にプラットフォームが構築されているため、決められたテンプレートフォームに入力し、アカウントを作成し、セットアップを完了させるだけです。ウェブ構築やデザインなどの専門的な知識は不要で、誰でも簡単に商品の販売を行うことができます。
追加サービスが利用可能
Amazonの場合は、在庫の保管・梱包・配送をAmazonに依頼できるFulfillment by Amazon(FBA)というサービスがあります。手数料が発生しますが、保管・梱包・配送を代行してくれるのでECビジネス運営がとても容易になります。利用するモールによって、さまざまな付随サービスが利用可能です。
自社ブランドの差別化が難しい
モールEC出店型はオンラインマーケットプレイスであるため、他のオンライン販売業者と一緒にマーケットプレイスを通じて商品の販売を行うことになります。つまり、モールでの商品販売の場合、競合他社との差別化の難易度は高く、独自の強力なブランドイメージを構築することは非常に困難です。
他社との価格競争になりやすい
類似商品や同一の商品を扱う競合がある場合は、ブランドでの差別化が難しく価格競争になりやすい環境にあります。Amazonなどに出品する場合、同様の商品を出品するAmazon(モール)自体が競合となる可能性もあります。
手数料が高い
月額のモール使用料以外にも、販売手数料・広告料オプションサービス利用料・メール配信費など、追加費用が発生します。これはEC販売額から得られる最終的な利益の低下に繋がります。
「自社EC構築」のメリット・デメリット
独自かつ柔軟なブランディングが可能
独自ドメインを取得し、ゼロからシステムやUI/UXを開発するため、デザインや機能など自社のブランドを前面に押し出したECサイトを、思い通りに構築することができます。商品ページのレイアウトや発注画面などの製品ページはもちろんのこと、企業理念や商品への思いなどを顧客に伝えることができます。
比較的簡単に構築できる
いまや、以前のように全くゼロからECシステムを構築する必要はありません。低予算で立ち上げたい場合は、Shopifyなどが提供するASPは最も手軽にECサイトを構築できる方法の一つです。その他、インターネット上に公開されているオープンソースの無料ソフトウェアを活用する方法や、ECサイトの基礎が既に構築されているパッケージを購入する方法など、現在では比較的簡単に自社ECサイト構築ができるようになりました。
また、ShopifyやBigCommerceなどのASPは、オンラインストア運営を成功に導くために様々な補助機能・ツールを提供しています。
マーケティング・集客施策に柔軟性がある
自社ECの場合、マーケティング施策は必要不可欠になります。これは手間のかかる大変な業務になりますが、逆に言えば「メールキャンペーンやマルチチャネル販売、ソーシャルメディアの活用、SEO施策」といった多岐にわたるデジタルマーケティング施策は、ブランドを成長させ顧客基盤を強固なものにしてくれる重要な施策です。
自社ECで商品を販売するということは、建物を借りるようなものです。集客施策が相対的に限定的なモールEC出店に比べて、自社ECを構築する場合は、自社ビジネスに合わせて強力なブランドを構築することができうるといえます。
顧客情報が取得できる
自社ECの場合、Google Analytics やGoogle Search Consoleといった分析ツールを使って、サイト訪問ユーザーの特性・行動を分析してUIを改善したり、優良顧客に対して独自キャンペーンを行うなど、自社ファンに向けてカスタマイズしたアプローチが可能になります。
集客の難易度
自社ECのメリットに「マーケティング施策を自由に実施できる」とありますが、逆にいえば、顧客層を拡大するためにはマーケティング施策は必須となります。SEOやデジタル広告を設計・実施し、ブランド認知度を高めながら、Webサイトへの流入を増やし、売上を上げなければなりません。自社内にECマーケターがいない場合は、外部に依頼することが必要になります。
成果が出るまでに時間がかかる
成果を実感するまでには、ある程度継続的に施策を実施する必要があります。インターネット上に情報があふれかえる今、しっかりと時間をかけ、自社のブランド認知を高め、顧客との良好な関係を構築していくために粘り強くECを運営していくのです。
さいごに
「D2Cの発達」や「購買行動のデジタルオムニチャネル化」といった消費変化に伴い、Eコマース市場は変動の時期を迎えています。近い将来、世界中の誰もがインターネットにアクセスできるようになります。
言葉を変えれば、日本⇔タイを繋ぐ架け橋(インフラ)は整ったということです。新型コロナウィルスによる巣ごもり需要が湧き上がる世界に向けて、いざ日本企業もD2Cを進めていきましょう! 御社のグローバルD2Cを成功させる海外マーケティングはインフォキュービック・ジャパンに是非お任せください。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。