「中国が誇るスマートシティ、深セン」
~世界屈指のDX都市に迫る~
2020年に世界中がコロナで大混乱をしていた時、主要経済国で唯一成長を遂げた中国。
IMFは、2021年4月に中国の経済成長を8.4%と上方修正。JPモルガンの最新のレポートには、2030年頃には中国の経済規模は米国と同等になると予測しており、今後ますます世界を牽引する大国として目が離せなくなっています。
今回は、そんな中国のなかでも「ビックデータ・5G ・クラウド・IoT・AI技術」等あらゆる最先端技術が結集するスマートシティ「深セン」についてご紹介します。
海外に開かれた「深セン」誕生の歴史
知っているようで知らない中国の歴史を少しおさらいしながら、中国・深センがどのように発達してきたか見ていきましょう。
中華人民共和国(中国)は、1949年に建国されました。中国の初代国家主席となった毛沢東は社会主義経済の施策として「大躍進政策」を実施。これが大失敗となり3000万人とも5000万人とも言われている飢餓者を出しました。そこで「国が強くなるために、国民が豊かにならなければならない」という先富論を掲げ登場したのが「鄧小平」です。
鄧小平は毛沢東の死後、事実上の最高指導者として経済発展を目指す「改革開放政策」を1978年から推進しました。これは社会主義国家に市場経済(資本主義経済)の導入をはかる壮大な実験であり、経済学者の想像をはるかに越えた出来事だったようです。
鄧小平の行った「改革開放政策」の1つとして1979年に設けられたのが「経済特区」でした。この経済特区は「”Special Economic Zone” (SEZ)」と呼ばれ、経済発展のために法的・税制などを優遇し、海外企業の誘致を目的に設置されました。この時に設置された経済特区4都市のうちの1つが「深セン」です。
経済特区「深セン」の特徴
約40年前の深センは、単なる漁村であり人口もたった数十万人の小さな都市でした。そこからたった数十年で人口1400万人(移民なども含めた確かな数字は約2000万人とも。)を超える国際的な大都市へと変貌を遂げたのです。実際にこのような成長を遂げた都市は世界中どこを探しても存在しておらず、深センは優れた「モデル都市」として世界中から注目を集めています。
<The World Bank – Global Economic Prospect -Asia GDP>
2020年新型コロナウィルスの影響により大きな打撃を受けた世界経済ですが、深センのGDPは前年比3.1%の増加。中国全体が2.3%であることや、世界全体のGDP-3.5%(The World Bank)と比較しても、この深センの生産性の高さを伺い知ることができます。
では、なぜ深センはこのように先進的な都市として世界のなかでも成長を続けているのでしょうか?
「深セン」成功の秘訣
深センの成功には、いくつかの要因があげられます。
まず、経済特区としてグローバル化が推進されたこと、そして国際金融のハブである「香港」との地理的近さを利用し、香港からの資本を投入。中国のトップソーシャルメディア企業のTencent、世界最大のドローンメーカーDGI、通信機器のHuaweiやZTEが本社を置き、アップル・マイクロソフトをはじめとする9万を超える外国投資企業の誘致を成功させました。
また、世界各地からエレクトロニクス・ハイテク産業のエンジニアが集結していることを背景に、開発から商品化までを”スピーディー・安価”に行えるエコシステムが生まれています。例えば、日本で商品開発を行うと数か月かかるものが、多くの企業・エンジニアが集結する深センでは、1週間で製品を完成させることができるのです。このスピードは「深センスピード」と呼ばれ、製品開発を行う企業や開発者が深センに集まる大きな魅力の1つとなっています。このエコシステムが、世界の製造業のひとつの中心地として「中国のシリコンバレー、ハードウェアのメッカ」と呼ばれ、深センが成長した大きな理由の1つなのです。
「深セン」~スマートシティへの移行~
「中国のシリコンバレー、ハードウェアのメッカ」と呼ばれるほどの世界的な重要拠点へと成長を遂げている深センですが、近年は最先端技術を用いて「都市の行政サービスなど様々な生活インフラをインターネットに接続した都市 = スマートシティ」が社会基盤として人々の実生活の中で機能し始めています。
スマートシティとは?
「スマートシティ」とは、IoTやAI・ビックデータなどを駆使して都市機能・エネルギー管理によって様々な無駄と不便を削減することで、都市に住む人々のQOLを改善。インクルージョン(全ての人を取りこぼすことなく、共に生きていくという理念)を最大化することを目的とした持続可能な都市の運営をめざすというものです。
実はこのスマートシティの概念は、世界で初めてWorld Wide Webのウェブサイトが誕生した翌年の1992年、D.V.ギブソン氏らの論文“The Technopolis Phenomenon”の中で既に定義付けが行われています。まだインターネットが商用化されていない時代から既に情報化社会は予測されていたのです。その後、2008年にIBMが「Smarter Planet」を提唱したことによって「スマートシティ構築」に向けて、世界の流れが一気に加速したと言われています。
この背景には、今後数十年にわたって生じる「急激な人口増加」「都市部への人口集中」といった世界的な社会課題が関係しています。国連は2050年には世界人口が97億人となり、現在より20億人増加すると予測しています。その動きによって今後30年間でさらに25億人が都市部へ流入。都市部への人口流入増加は、渋滞・環境汚染・食糧不足といった様々な社会課題につながります。そして、そうした社会課題を解決する方法の1つとして世界中が注目しているのが「スマートシティ」なのです。
スマートシティ戦略は、現在1000以上の都市で実験と開発が進められ、世界中の国で重要国家戦略の1つとして積極的に取り組まれています。日本でも内閣府が「Socirty 5.0」の実現に向けた国家戦略の1つとして推進しています。
世界が注目するスマートシティ「深セン」
このような世界中でスマートシティ構想が過熱する中、世界の注目を集めている都市の1つが中国「深セン」なのです。
中国では、2006年の第11次五ヵ年計画でスマートシティに関連する主な戦略・施策方針が確立され、2011年の第12次五か年計画では高効率エネルギー産業の開発、スマートグリッド施設建設が示されました。さらには2014年の「全国新都市計画」では、デジタル技術を活用してスマートシティを建設することが公式に明示されました。
また、民間企業である「PATH」(Pingan、Alibaba、Tencent、Huawei)と呼ばれる巨大テクノロジー4企業が政府と連携して積極的にスマートシティ開発に取り組んでいます。その上、中国政府は毎年数兆円規模の投資を行うなど国を挙げての体制が構築されています。既に、2018年の時点で中国のスマートシティの数は500を超え、世界一のスマートシティ先進国となっています。
「深セン」のいま
現在深センでは、「ビックデータ・5G ・クラウド・IoT・AI技術」等あらゆる最先端技術が活用されている未来型都市として、人々の実生活のなかで多くの取り組みがなされています。
- 行政サービスの効率化施策「我的深セン」の導入
- 無人運転システムを用いた「アルファバス」
- あらゆる店舗サービスの無人化
- 顔認証によるデジタル決済
- 交通状況を分析し信号機を自動制御する交通監視システム
- デジタル人民元の実証実験
など、ここには書ききれないほど多くのサービスがデジタル化され、データ分析による最適化が人々の日常生活に浸透しています。中国政府は深センを今後もテクノロジーが発展する重要な都市と指定しており、さらなる都市開発を推進すると見られています。
まとめ
JPモルガンは、2030年頃米国と中国の経済規模は同等になると予測しています。世界経済を牽引するほどに成長した中国・深センは歴史的にはまだまだ若い都市ですが、最先端の技術が集結し、これからも爆発的な成長の可能性を秘めた都市といえます。世界のトレンドを把握するうえで目が離せない地域と言えるでしょう。
そんな急成長を続ける深センをはじめ、広大な中国は日本企業にとって大きなマーケットです。日本から中国に向けたデジタルマーケティングを検討されていましたら是非インフォキュービック・ジャパンにお声掛けください!
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。