行動心理に訴えかけるマーケティング手法、9選
~あれよあれよとユーザーを購買に誘う秘訣~
長年にわたり多くの研究者たちは「マーケティング施策・活動に対して人々がどのように反応するか--つまり、行動心理--」を研究してきました。
しかし、情報があふれる情報化社会において、テクノロジーや環境の変化などによって、行動は複雑化し、行動心理を捉えることは難しくなってきています。また、B2Bビジネスにおける購買プロセスは長期・複雑化が進んでいます。ユーザーとの長期的に良好な関係構築が求められているともいえます。いくらお金をかけてマーケティング施策を行ったとしても、ユーザーの心を惹きつけ、行動させ、コンバージョンまで到達しなければビジネスは成立しないのです。
私たちマーケターは、マーケターとしての役割を果たすために「人々がどのように考え、誰が顧客になり、何が購入へと人々を突き動かすのか」を理解する必要があります。マーケティングの戦術的な部分に焦点を当てる前に、人々がどのように行動するかという「人間の行動心理」を理解することで、より効果的で効率的な施策に繋げることができるでしょう。
今回は、マーケターが知っておくべき、行動心理に訴えかけるマーケティング手法ご紹介します。
返報性の原理 / Reciprocity
人は「何かを与えられたら、お返しをしたい」と思う心理が働きます。これは、仕事においても個人的な生活でも同様に当てはまります。
ユーザーは、何か有益な情報を求めてウェブサイトを訪れます。このことを忘れずに、ユーザーに有益なコンテンツを提供するように努めましょう。有益なコンテンツとは自社ビジネスとユーザーニーズに関連するもので、ウェブサイトを訪れるユーザーにとって価値のあるでなければなりません。
「動画・ホワイトペーパー・ウェビナー・ポッドキャスト・インフォグラフィック」などユーザーにとって有益な情報を十分に得られるものにする必要があります。豊富なコンテンツを用意することで、顧客との信頼関係を構築するでしょう。
<豊富なコンテンツが用意されているCiscoのウェブサイト>
B2Bビジネスにおいて、購買行動の長期化が顕著になるにつれ、ユーザーとの関係を育むことは一段と重要視されています。単発的なキャンペーンより、ユーザーとの「関係構築を促す施策に投資することで、継続的な繋がりが生まれるでしょう。長期的な目線で、継続的に育んでいきましょう。
社会的証明 / Social Proof
口コミが大きな影響力を持つことは皆さんもご存知の通りです。B2Cビジネスの場合は消費者の「口コミ」や「レビュー」など。B2Bビジネスでは導入事例などの「実績」は見込み客の背中を後押しする重要な要素となります。
これは海外市場であっても同様です。「口コミ・実績」だけでなく、「専門家の意見・著名人を起用したキャンペーン・権威性の高い機関からの承認」なども効果を発揮するでしょう。
希少性の法則「緊急性」/ Urgency Scarcity
「残り僅か!」
「限定販売!」
「在庫がなくなり次第終了!」
多くの人は「入手困難なものを望む」傾向にあるという人間心理に基づいたマーケティング手法です。このようなフレーズはユーザーに切迫感を与えます。説得力ある文章と上手な言い回しで、見ている人の感情に訴えかけます。
「何か大切な情報を逃しているのではないか? 」という感情を呼び起こすことによって、人々が行動を起こす強力な動機に繋がるのです。
ブラックフライデーが世界的に定着したり、中国「独身の日」はなぜたった11日間で12兆円も売り上げることが出来るのでしょうか?
希少性の法則「独占性」/ Exclusivity Scarcity
希少性の法則に「独占性」を掛け合わせることによって商品をさらに魅力的なものにすることができます。
AppleがiPhoneを発売するたびに、iPhoneの値段が上がっているように感じませんか? 2010年に発売されたiPhone 4の販売価格は約4万6千円。そこから徐々に値上がりし2020年に発売されたiPhone 12 Proの販売価格は10万円を超えています。
価格の上昇は一部外的要因も含まれているかもしれませんが、あえて価格を上げることによって、「入手困難な状況」を意図的に生み出します。希少価値を上げることにより、既に手に入れた人たちのステータスを引き上げ、商品やサービスをより魅力的なものにします。
アンカリング効果 / Anchoring
アンカリング効果とは、人間の意思決定は、その商品・サービスについて最初に触れた情報を軸として意思決定・判断してしまうというものです。私たちは合理的に考えて全体を把握したうえで最適な判断を下すのではなく、周囲の状況に大きく影響されて意思決定を行ってしまうのです。
例えば、あるお店にいって商品を手に取った場合、その価格が5000円で「高い」と感じたとします。しかし、次のお店で同商品が3000円だった場合、その値段が適正かどうかは別として「安い!」と感じてしまうというものです。
<YouTube : Are we in control of our own decisions?>
人間がどのように非合理的な思考・行動をするかについて最もわかりやすく説明されている動画の1つが行動経済学者であるダン・アエイエリー氏のこの動画です。興味のある方は、ぜひご覧ください。
好奇心のギャップ/ Curiosity Gap
「好奇心のギャップ」は、George Lowenstein氏によって提唱された「論好奇心の情報ギャップ理論」に基づいており、人は自らが気になるテーマについて、自身の知識との間にギャップがあると、非常に強い好奇心が発生し自ら行動を起こすというものです。
- 「How to…/ハイツ―」
- 「The Secret Tips… /秘密のポイント」
- 「You should know…/見逃し厳禁!」
など見出しは、私たちの好奇心を刺激し、もっと知りたいと思わせユーザーを惹きつけます。コンテンツマーケティングやSNSマーケティングに活用することができます。
決定回避の法則 / Reduce Options
人間は選択肢の数が増えれば増えるほど、混乱しストレスを感じ、何も選択することが出来なくなります。ビジネスにおいて、あまりにも多くの選択肢を提示することは、かえってユーザー行動を離脱させる可能性があるのです。ユーザーが決定すべき選択肢を事前にできるだけ少なくすることで、ストレスを低減しユーザーの行動を促すことができます。
- ウェブサイトのドロップダウンメニューが多すぎではありませんか?
- お問い合わせフォームの入力項目が多すぎではありませんか?
ザイオンス効果 / Mere Exposure Theory
「単純接触理論」とも言われ、繰り返し接触すればするほど、人間はそのものに親しみを生み出すというものです。人間は価格や商品レベルが同様のものであれば、既に知っている企業から購入しようとします。
ターゲットを追従するターゲティング広告や定期的に発信するメールマガジンなどは、効果的に作用するでしょう。複数のチャネルやSNSを活用し一貫性のあるブランドメッセージを示すことで、より効果的にアプローチすることができるでしょう。
損失回避の法則 / Loss Aversion
人間は利益を得るよりも損失を回避することを強く望む傾向にあります。ある研究によると「損をしたくない」という人間の心理は、「得をしたい」という気持ちの2倍(!)心理的効果を持っているそうです。
<Apple「大学入学準備キャンペーン」- Macを購入する学生にAirPodsを無料提供しています>
「損をしたくない」という心理は、消費者行動を含めたあらゆる意思決定の場面で強力な行動の動機付けとなります。リターゲティングキャンペーンからシンプルなバナー画像のコピーなどで活用することができます。
まとめ
顧客中心のデジタル時代において、ユーザーの行動心理を理解しマーケティング戦略に組み込むことで、より優れた顧客体験を提供することができるのではないでしょうか?
インフォキュービック・ジャパンでは、現代のマーケターに求められる視点をもとに、日本企業の海外市場に向けたグローバルマーケティングをご支援しています。日本企業と海外市場を繋ぐグローバルマーケティングに関してお困りでしたら、ぜひお声掛けください。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。