コミュニティマーケティング成功のヒント!
~コミュニティの成長を促す「コミュニティ管理術」~
情報があふれる現代社会において、マーケティングを成功させるにはただ「情報を発信すればよい」、「広告を打てば良い」という従来の方法は通用しなくなっています。このような流れの中で、近年注目を集めているのが「コミュニティマーケティング」です。
従来のワンウェイ型のマーケティング手法が限界に近づいてきたことに加え、SNSの爆発的な普及によって個人の発信力が大きな影響力を持つようになったことで、「コミュニティベースのマーケティング戦略」が今まで以上に重要な意味・役割を持つようになりました。
しかし、コミュニティマーケティングも他のマーケティング施策同様、ただソーシャルメディア上でコミュニティを作って、コンテンツを作成し公開しておけばいいというわけではありません。コミュニティマーケティングを成功に導くには、「目的」や「戦略」はもちろんのこと、世界の多くの企業が既に実施している「ソーシャルメディア運用との違い」などを明確にしておく必要があります。
そこで、今回はコミュニティマーケティングを実施する上で把握しておきたい、「ソーシャルメディアコミュニティを成長させる8つのヒント」をソーシャルメディア運用とコミュニティ管理の違いや、コミュニティ管理の重要性などと合わせて、詳しく解説します。
ソーシャルメディアの「運用」と「コミュニティ管理」の違い
企業のマーケティング施策の1つとして、一般的になりつつあるソーシャルメディア運用。コンテンツを公開したり、企業やブランドの情報発信を行うなど、企業マーケターの皆様は既に何かしらのソーシャルメディアを運用している方も多いはず。しかし、冒頭でもお伝えした通り、ソーシャルメディア運用とコミュニティ運用は全く違う目的と戦略、マーケターの目線も全く違うものになります。
では、ソーシャルメディアを運用することとコミュニティを管理することは、具体的にどう違うのでしょうか。
ソーシャルメディア運用
ソーシャルメディア運用は、企業が公式アカウントを設け、ソーシャルメディアを通して、情報発信やプロモーション、顧客とのメッセージのやり取りをするといった従来のマーケティング手法です。
ソーシャルメディア運用の目的は、サイトへの遷移であり、コンテンツを広く拡散させる施策に注力します。そのため注視しておくべき指標として「フォロワー数・リーチ数・インプレッション数・エンゲージメント数」などが評価指標になります。
ソーシャルメディア上ではプロモーションが飽和していると共に、消費者の消費欲求が変化したことも合わさり、企業が一方的にメッセージを発信する従来のソーシャルメディア運用では、ユーザーに到達しなくなってきています。
コミュニティ管理
コミュニティマーケティングは、企業やブランドが同じような「興味・関心・価値観」を持つ人々を集め、コミュニティを構築し、参加しているメンバーと積極的にコミュニケーションを取り、メンバー同士の交流を促しながら、メンバーを通じた情報発信を促すといった近年話題のマーケティング手法です。
コミュニティマーケティングを始める7ステップ
ユーザー同士がブランドを育てる「奇跡の空間」
コミュニティマーケティングでは、コミュニティを運用するうえで「ブランド認知拡大」を目的としていますが、商品やブランドに関心のある人が「共通の関心事項」について、積極的に話し合える空間を提供し続けることを目指します。
ソーシャルメディア上で良質なコミュニティを構築し、目的を持って管理していくことで、ブランドの評価を高め、ロイヤリティの高い顧客を継続的に育成することができます。コミュニティ管理は、企業と顧客の強い繋がりを実現し、長期的なブランド認知を向上させる最良の方法の1つと言えるでしょう。
なぜ、コミュニティを管理する必要があるの?
近年では、消費者が広告から受動的に情報を得るのではなく、能動的に情報収集を行うことが一般的になりました。そのため従来の一方的な広告配信に代わって、コミュニティマーケティングを実施し、コミュニティを管理することによる顧客育成が重要視されています。なぜ、コミュニティ管理が重要なのでしょうか?それは、次の6つのメリットがあるからです。
ブランド独自の見解を示せる
インターネット上では、常にトレンドが移り変わります。コミュニティ管理をすることで、タイムリーに、自社と関連するトレンドに対して、企業の見解を示せるでしょう。トレンドに合わせて、顧客の役に立つ有益な情報を提供することで、フォロワーの獲得や育成につながります。また、発信が多くの注目や共感を集めれば、市場の中での存在感を高められるでしょう。
ソートリーダーシップを発揮できる
ソーシャルメディアコミュニティにおいて、関連する話題に参加し、的確な意見や情報を提供することは、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)を発揮するための有効な手段です。
ソートリーダーシップとは、特定の分野において新的なアイデアや活動によって、業界を率先していく「先駆者」のことです。海外では「特定の分野において、最先端を走り、リーダーシップをとる影響力のある個人や企業」をソートリーダー(Thought Leader)と呼びます。
企業の経営幹部などがソーシャルメディアを通して、ソートリーダーとして、大きな影響力を獲得するケースも多く見受けられます。こちらの「マーケターとしてのイーロン・マスク氏」のブログでもご紹介ていますが、テスラモーターのイーロン・マスク氏、セースルフォースのマーク・ベニオフ氏などもソーシャルメディア上で積極的にユーザーと交流し、話題を振りまいています。企業や内部メンバーがソートリーダーとなることで、企業の信頼度が高まり、大きなマーケティング効果が得られるでしょう。
信頼性を高められる
コロナ騒動でも世界中で話題になりましたが、ソーシャルメディア上には真偽が定かではない情報がたくさん存在します。そして、ソーシャルメディアから絶え間なく押し寄せる情報の波にどう対処していいのかわからなくなっている人が世界中に多く存在しています。
そこで、企業やブランド自身がその専門性をもとに、正しい知識や情報を積極的に提供することにより、確実な情報減として信頼性を高められるとともに、コミュニティ自体の信頼性を高めることができます。有益な情報発信によって、信頼を積み重ね、その分野の専門家としての立場を確立できるでしょう。
より親近感を感じてもらえる
コミュニティ内の積極的な顧客との交流により、企業やブランドへの親しみやすさを高め、より熱狂的なファンを育てることに繋がっていきます。
近年では人々の「消費」に対する欲求が変化しており、ただ単純に「優れた商品やサービスを手に入れたい」というだけではなく、企業やブランドとの「人間的な繋がり」を求め、自らの購買行動が自分の価値観やアイデンティティを基準に考える傾向が強まってきています。特に海外においては、企業の公式SNSアカウントであっても、人間味を持たせた投稿や返信によって、フォロワーと交流を図る傾向がますます強まってきています。
マインドシェアを高められる
コミュニティ管理は、顧客のマインドシェア(Mind Share)を高めるのにも役立ちます。マインドシェアとは、ユーザーが特定の商品やカテゴリーについて考えるときに、「想起される企業やブランドの占有率」を指しています。消費者に対してどれだけ強く印象付けられているかを示す指標の1つとして近年重要視されています。良質なソーシャルメディアコミュニティを構築し、管理していくことで、ユーザーの中でのブランドの存在感を増幅し、結果的に市場でのマインドシェア向上に繋がっていきます。
「繋がり」を強化できる
企業やブランド対ユーザー、ユーザー対ユーザーどちらであっても、コミュニティ内でのコミュニケーションが活発であるほど、ユーザーとの「繋がり」を強化することができます。冒頭でもお伝えした通り、一方的な情報を受け取るだけのワンウェイ型コミュニケーションでは、どうしても「繋がり」を感じ取ることは難しくなります。
交流を活発化させる仕組みを構築しコミュニティ自体を導いていくことで、顧客のニーズを深く理解し、より強固な信頼関係を構築することができるでしょう。
ソーシャルメディアコミュニティを成長させる8つのヒント
ここまでソーシャルメディアコミュニティを構築し、管理することの重要性について解説しました。では、コミュニティを成長させるためには具体的にはどのような施策を実施するべきなのでしょうか。コミュニティを成長させるためには、露出を増やすことと、顧客エンゲージメントを促進することが重要です。そのための、具体的な5つのヒントを解説します。
クロスチャネルプロモーションを実施する
せっかく立ち上げたコミュニティも参加者が少人数では、活発なコミュニティ活動は望めません。まずは、コミュニティの存在を多くの方に知ってもらい最適なメンバーを集めていくことが、コミュニティ成長への第一歩です。
コミュニティに最適なメンバーの特性を正確に理解し、他のソーシャルメディアを活用してコミュニティへの参加を誘導していきましょう。たとえば、Twitterで活発にブランドや製品が議論されているのであれば、そこへコミュニティへ誘導するリンクを共有するなどして、チャネル連携を行います。さらにソーシャルメディアだけでなく、コンテンツや電子メールなど、クロスチャネルプロモーションによって複数の集客チャネルを掛け合わせて、コミュニティ集客の幅を広げていきましょう。
メンバーと積極的に関わる
「積極的であること」と「タイムリー」であることは、コミュニティを成長させる重要なポイントとなります。「積極的に」「タイムリーにコミュニティ内での声を拾っていくことで、ブランドに対する苦情やメンバーの悩みや課題を見つけることができるかもしれません。その苦情や課題を解決することで、顧客の体験を向上へ繋がる可能性も高いでしょう。
コミュニティ内での発言を確認し、タイムリーに対応していくことで、メンバーが「ブランドについてどう感じ、どう考えているか」を、より深く理解することができるようになるでしょう。
アイデアやコンテンツを共有する
企業がアイデアや価値のあるコンテンツをコミュニティ内に共有することは、コミュニティ内の結束を強め、より強固な信頼関係を構築することへと繋がります。企業やブランドが何を考え、どのような目標を持っているのかを積極的に共有することで、継続的に関心を持ち続けてもらい、より情熱的なファンを生み出します。
価値のあるコンテンツを提供したり、刺激的な質問を投げかけたり、思わずシェアしたくなるような物語を共有したり。エンゲージメントを高める起爆剤となるコンテンツを定期的に創造・投稿することでメンバーのモチベーションを高めていきましょう。
さまざまなコンテンツタイプを実験する
コミュニティ内で、様々な形式での情報提供を実験してみることも大切です。テキストベースの記事コンテンツだけでなく、動画コンテンツやライブ配信、GIF投稿や投票・アンケートの実施など、様々な形式のコンテンツを試してみましょう。
コミュニティにおいてどのコンテンツ形式が高い満足度を得られるのかを確認することができます。最適な発信形式を把握することで、企業のメッセージをより効率的に、顧客に届けることができるでしょう。
定期的なコメント管理を実行する
コメント管理はコミュニティ運営を行ううえで非常に重要な要素の1つになります。
コミュニティが成長すればするほど、ボットや偽アカウント、スパムコメント、不適切なコメントなどが発生するようになってきます。スパムコメントなどを放置しておくと、そのコメントを見た他のユーザーが不快な気持ちになってしまうかもしれません。せっかく築き上げたコミュニティやブランドの信頼性に傷がついてしまう可能性すらあります。ブランドへの信頼性や評判を高め、ユーザーに正しい情報を提供するためにも「コメント管理」は必要不可欠な施策の1つです。
イベントを主催する
ユーザーが企業やブランドとの「人間的な繋がり」を求める傾向が強くなっていることを考慮すると、人と人との繋がりを感じることのできるイベントを開催することはコミュニティ成長に最適な方法の1つと言えるでしょう。もちろん、オンラインイベントでも問題ありません。既に海外では多くの企業がコミュニティメンバーの「共通の関心ごと」をテーマに、業界の専門家との会談やミートアップイベントなどが積極的に実施されています。
ソーシャルリスニングツールで追跡を行う
コミュニティの反応を管理するためには、ソーシャルリスニングツールを上手く活用して、自社に関連する発信を追跡しましょう。ソーシャルリスニングツールとは、ソーシャルメディア上の情報を収集・分析できるツールです。特定のキーワードやハッシュタグで検索できるため、商品・サービスに関する特定の感情や需要を含んだ投稿を見つけることもできます。
ソーシャルリスニングツールでの追跡を行うことで、たとえば、ポジティブな投稿をより拡散できたり、スパムや荒らしコメントに対処できたり、コミュニティからのフィードバックを改善に活かしたりできるでしょう。
コミュニティリーダーに報酬を与える
ブランドコミュニティの成長において、最も重要になってくるのが「コミュニティリーダー」の存在です。コミュニティリーダーとは、「ブランドを心から愛してくれる人、最もコミュニティを盛り上げてくれる人物」で、継続的にコメントを発信したり、他のユーザーに有益な情報を情熱的に発信する人のこと。
海外では「Adovocater」と呼ばれ、コミュニティ活性化に貢献した人に報酬を与えます。報酬といっても現金を渡すわけではなく「特別なクーポン」や「無料トライアル」、「ソーシャルメディア内での紹介」などを提供します。
近年話題となった音声プラットフォームのClubhouseは、その月に最もClubhouseに貢献した人はその月のアプリのアイコンに選ばれます。このように、コミュニティの活性化に貢献した人がコミュニティ内で評価される仕組みを構築することでさらに活発なコミュニティ活動へと繋がるでしょう。
まとめ
コミュニティ管理は「顧客育成」が重要になったことで注目されるようになった、新たなマーケティング手法です。ソーシャルメディアは個人が大きな影響力を持つことができる強力なツールです。ユーザーの生の声を聞き、それに答えるといった良質なコミュニティ作りによって、ブランドの評価を高め、ロイヤリティの高いユーザーを継続的に育成することができるようになるでしょう。
インターネット上に情報があふれかえる時代では、一方的なマーケティングだけでは簡単に通用しなくなっています。選んでもらうことが難しい時代ともいえます。そうしたなかで「数ある世界のブランドのなかで選んでもらい、ブランドを愛してもらう」ために必要となるグローバルマーケティングにお困りでしたら、ぜひインフォキュービック・ジャパンにお声掛けください。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。