ブランディングとは?
コーポレートブランディング とプロダクトブランディングを理解しよう
「ブランディング」はビジネスをするうえで、どのような企業であっても、この新しい時代を生き抜くために不可欠なビジネス戦略の1つです。しかし、なぜブランディングがそれほど重要視されるのでしょうか?
今回は、ブランディングの定義から、ブランディングの重要性、コーポレートブランディングとプロダクトブランディングの違いなどをご紹介していきます。
目次
ブランディングとは?
「ブランディング」というと、企業の名前・ロゴ・タイポグラフィ・デザイン・パッケージなど視覚的なVI(ビジュアル・アイデンティティ)の構築と認識している方もいらっしゃるのではないでしょうか?事実、2022年の現代でもケンブリッジ辞書で“branding”と引いてみると、以下のように定義付けられています。
「the act of giving a company a particular design or symbol in order to advertise its products and services:(企業が自社の製品やサービスを宣伝するために、特定のデザインやシンボルを与える行為)」
ブランディングの歴史は古く、西暦350年頃から存在しています。語源は古代ノルウェー語で、「焼く」を意味する「Barndr」からきており、商人たちが製品や財産の所有権を示すものとして活用されました。1500年代には牛の所有権を示すために牛に焼印を押したことが現在の「ロゴ」の始まりです。一般的に企業に浸透してきたのは、1880年代ごろで、企業が他社との差別化を図る目的で、商品をパッケージングするようになってから「ブランド・ブランディング」という言葉が普及し始めました。
しかし、今日のブランディングは、単にロゴやパッケージ、デザインには留まらず、「企業や商品・サービス(ブランド)の認知を向上させ、価値を高め、ユーザーから選ばれる企業や商品(ブランド)を創造していく取り組み全体」を“ブランディング”といいます。
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- ブランド ⇒ ユーザーが企業・商品をどう認識しているか
- ブランドアイデンティティ ⇒ ブランドイメージを構築する具体的な要素(ロゴやデザインなど)
- ブランディング ⇒ 企業・商品のイメージ・価値を創造するための取り組み・アクション
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なぜ、ブランディングが重要なのか?
ブランディングを行うことで得られるメリットは以下の5つです。
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- 競合他社との差別化
- ブランド認知の向上
- 顧客との繋がりを創出
- 企業価値の向上
- 従業員満足度の向上
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人の評判と同じように、企業や商品に対する一定の”認識(ブランド)”が確立されると、市場での影響力が増し、競合に対して競争優位に立つことができます。海外であればなおさら、国内以上に多くの競合がひしめき合っている状況です。そんな中、適切なブランディングを通して「他社とは違う、特別な存在である」ことを示すことができれば、業界内での影響力を増し、企業価値を高めることへと繋がっていきます。
また、ライバルより競争優位に立つことができるため、より低いコストで顧客を獲得し、繋がりを維持することが可能となり、収益に大きな影響を与えることができるようになります。定性的な価値ではありますが、これは利益を生み出す貴重な“資産”となるのです。
また、ブランド力のある企業で働く従業員は、自然と仕事への満足度も高まります。従業員のモチベーションの向上は、ビジネスの成長を加速する上で重要な役割を果たします。ポジティブで協力的な職場では、心理的安全のなかで仕事に邁進でき、気分や集中力を向上させます。「満足・幸福を感じながら働く環境下では生産性は13%も向上する」という調査結果が、オックスフォード大学とエラスムス・ロッテルダム大学の共同研究によって明らかになっています。
海外マーケ成功に不可欠な「ブランディング」
コーポレート(企業)ブランディングとプロダクト(製品)ブランディングとは?
競合他社がひしめく海外市場では、ターゲットを絞ったブランディングが必要不可欠です。海外市場においてブランディング戦略を成功させるためには、2つの分野を考慮する必要があります。それが、「コーポレート(企業)ブランディング」と「プロダクト(製品)ブランディング」です。この2つのブランディングは、それぞれ異なる目的を持っていますが、お互いに補完し合いながら目標達成に向けて貢献しています。
“ブランド”を確立するためには、この2つのブランディングの違いを理解しておく必要があります。
プロダクト(製品)ブランディングとは?
プロダクト(製品)ブランディングとは、企業全体ではなく、「特定の製品」をブランディングするマーケティング戦略です。自社の製品やサービスのブランディングに注力する場合、特定の製品名が企業名以上に有名になるケースも多くあります。プロダクトブランディングを主要なマーケティング戦略としている企業は数多くありますが、P&Gやユニリーバといった大手企業がその代表格です。
例えば、消臭剤の「ファブリーズ」や紙おむつの「パンパース」は、認知度の高い商品です。しかし、これらがP&Gの製品であることを認識して購入している消費者は多くありません。P&Gやユニリーバのいくつかの有名な製品は、商品単体の公式のウェブサイトやSNSアカウントが設けられており、製品独自のキャッチコピーやスローガン、ロゴやシンボルマークなどがデザインされ、製品独自のブランドを確立しています。こういった場合、製品に企業名はラベルなどに控えめに記載されている以外はほとんどありません。
このようにプロダクト(製品)ブランディングを成功させるためには、製品やサービスに関するいくつかの要素を明確に理解しておく必要があります。
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- その製品の目的は何か
- ターゲット層は誰か
- ターゲット層はどのような信念を持っているのか
- マーケットに出回っている類似商品はどれなのか
- 自社ペルソナは何を好み、何を嫌うのか
- その製品は他社とどう違うのか
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このような要素を理解したうえで、商品のロゴやデザインなどを作成し、商品やサービスに合わせた画像、フォント、配色などを決定していきます。また、市場セグメントに合わせたトンマナ、キャッチコピーなどを最適化していきます。
コーポレート(企業)ブランディングとは?
コーポレート(企業)ブランディングとは、特定の製品やサービスではなく、「企業全体」にブランディングに取り組み、ユーザーから企業を正しく認知してもらい、企業価値を向上させることです。製品やサービス以外の部分で、企業の社会的価値や存在意義、企業ストーリー、ビジョンなど自分たちが一体何者でるかといった「コーポレート・アイデンティティ(CI)」を明確に提示する必要があります。
このようなコーポレート・アイデンティティは、広告やソーシャルメディア、コンテンツなどのマーケティング戦略にも組み込まれることにより、施策の効果をより一層高める効果を期待できます。
コーポレートブランディング戦略を策定する際には、以下のような多くの詳細を具体化しておく必要があります。
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- MVV(ミッション・バリュー・ビジョン)
- ブランドストーリー
- ブランド・ポジショニング
- コア・プロミス
- 企業文化
- 行動規範
- 競合他社
- 顧客との関係 など
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コーポレートブランディングを確立している企業の例としては、NIKEやAppleが挙げられます。NIKEやAppleは、ブランド自体の認知度や好感度が高く、多くの熱狂的なファンを獲得しています。
コーポレート(企業)ブランディング とプロダクト(製品)ブランディングの違い
コーポレート(企業)ブランディングとプロダクト(製品)ブランディングは、多くの場面で相互作用しています。コーポレート(企業)ブランディングとプロダクト(製品)ブランディングを上手く使い分けるためには、それぞれの違いをしっかりと理解する必要があります。ここでは、主な4つの違いを解説します。
対象となる範囲
コーポレート(企業)ブランディングとプロダクト(製品)ブランディングでは、対象とするブランディングの範囲が異なります。
コーポレート(企業)ブランディングでは、ブランディングに取り組む範囲は、まさに「企業全体」です。ブランディングの対象には、全ての製品・サービス・オフィス・店舗・ウェブサイト・広告・ロゴなどや企業理念・社会的価値・ブランドストーリーなど細部にわたり、企業全てがブランディングの範囲に含まれます。そのため、コーポレート(企業)ブランディングでは、企業全体を通して一貫したブランドイメージを構築する必要があります。コーポレート(企業)ブランディングに成功しているAppleでは、製品や広告、店舗など、全てにおいて、シンプルで洗練された「Apple」というイメージを貫くことで、独自の世界観を構築しファンからの信頼を勝ち取っています。
一方、プロダクト(製品)ブランディングでは、特定の製品やサービスに焦点を絞って、ブランディングに取り組みます。そのため同じ企業の製品であっても、それぞれの製品が、独自の強力なブランドイメージを構築します。前述したように、製品単体の公式のウェブサイトやSNSアカウントなどを設ける場合もあります。
対象となるターゲット
コーポレート(企業)ブランディングのターゲットは、企業を取り巻く、全ての関係者です。具体的には、エンドユーザーだけでなく、株主やパートナー企業、そこで働く従業員に向けてブランディング施策を行います。
一方で、プロダクト(製品)ブランディングのターゲットは、製品を利用するエンドユーザー単体になります。そのため、ユーザーが製品に接する機会全てがブランディングの対象となります。例えば、効果的なパッケージデザインの作成や、広告の配信を行うことで、消費者のブランドイメージ向上を目指します。
実施する担当者
コーポレート(企業)ブランディングは、多くの場合は経営者によってブランドが構築されます。中小企業の場合は、経営者のビジョンや価値観が、そのまま企業としてのビジョンや価値観に反映されるケースが多く、大企業の場合は、CEOや経営幹部のチームが企業としてのビジョンや価値観を確立させ、マーケティング部、広報部、人事部などが、その発展と維持に取り組みます。
一方で、プロダクト(製品)ブランディングでは、製品ブランドマネージャーとそのチームが担当します。また、広告・販売部門も製品ブランディングに重要な役割を果たします。
実施する期間
コーポレート(企業)ブランディングは、企業が存続する限り継続して取り組んでいきます。そのため、長期にわたって一貫性したブランドイメージを保つことが重要視されています。
例えば、マクドナルドは1961年以来、全てのブランド商品に、黄色のアーチのロゴを使用してきました。その結果、マクドナルドの黄色のアーチが見えれば、500m先からでもそこにマクドナルドがあることを認識できるのです。
一方で、プロダクト(製品)ブランディングは、その製品が存続する限り継続してブランディング施策に取り組みます。プロダクト(製品)ブランディングは製品を購入するエンドユーザーを直接対象としているため、市場の変化に合わせて柔軟に調整していきます。デザインのトレンドが変化すると、それに応じて製品のパッケージデザインやロゴを変化させます。プロダクト(製品)ブランディングでは、製品が消費者のニーズを満たせるように、時代や市場の変化に合わせて、都度調整していくことがポイントとなります。
さいごに
コーポレート(企業)ブランディングと、プロダクト(製品)ブランディングは、それぞれ異なる目的をもっていますが、目標達成に向けてお互いに補完し合いながらブランド構築に貢献しています。自社のブランディング戦略を確立するためには、この2つのブランディングの違いを明確に理解しておきましょう。ブランディングを成功させることで、企業は顧客基盤を盤石なものとし、多くの顧客を引き付けることができるのです。この不確実な時代を乗り越えるためにも、自社独自のブランド戦略を構築しませんか?
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吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。