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2022年10月28日

インバウンド × デジタルマーケティング最新トレンド2022

日本でも新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染防止のため自粛・制限されていた様々な活動が、ようやく再開されつつある今。日本の観光・旅行業化においても、訪日外国人によるインバウンド需要の回復が期待されています。

UNWTO(国連世界観光機関)のレポートによると、2022年1月から7月までの世界の観光客の数は、2021年の同時期と比較してほぼ、3倍(172%)になり、6月~7月の2か月で約2億700万人(ビジネス含む)が、国境を跨いで移動したと推定されています。(2020年世界の外国人観光客数『宿泊者数』は推定で年間4億600万人)。

2020年は観光・旅行業界にとって最も最悪な年であり、全世界で前年比11億人の観光客が減少し、旅行者数は「30年前のレベルに戻った」と言われていました。しかし、最新のUNWTO(国連世界観光機関)によると、アジア地域以外の専門家の多くは、「2023年~にはインバウンドは回復だろう」と推測しています。

規制緩和に進む日本も2023年に向けて、観光・旅行業界の回復が期待できる一方で、世界の観光マーケティングのトレンドを把握して準備しておくことは、今後のビジネスの成長にダイレクトに繋がってきます。

今回のこの記事では、観光を楽しむ人々の価値観がこの不安定な世界情勢でどのように変化したかと合わせて、最新の観光・旅行業デジタルマーケティングトレンドをご紹介していきます。

 

変化した「旅行者が重要視するポイント」

観光・旅行業界必見!2022年、トラベル業界デジタルマーケティングトレンド

新型コロナウイルスという未曾有のパンデミックの経験は、観光や旅行を計画する上でも、人々に大きく影響を及ぼしています。アメリカのオンライン旅行販売会社のエクスペディアは、アメリカ・カナダ・イギリス・フランス・ドイツ・日本・オーストラリア・メキシコの18歳以上の成人、8,000人を対象に「旅行者が期待する項目」を調査しました。

この調査結果では、旅行者が航空会、ホテル、カーレンタル、クルーズ船の予約の際に重要視する項目として、パンデミック以前には最重要視されていた「価格の安さ」ではなく、「予定が変更になった場合に返金が受けられるかどうか」「衛生面の強化」が最も懸念している事項だということがわかりました。

エクスペディア調査 旅行者が重要視する項目
<出典:Expedia Group Traveler Index>

  1. 全額返金が可能かどうか: 26% 
  2. 衛生面の強化 :18%
  3. 安い価格設定 :18%
  4. 予約に関して柔軟な対応:12%
  5. 非接触型体験:10%

「いつ再び感染拡大が起こるのか、新型(もしくは変異)ウイルスがまた登場するかもしれない」といった不安が、今も常に人々の行動心理の底に深く根付いていると言っても過言ではありません。

今、旅行者が観光・旅行に求めるニーズは大きく分けて、以下の3つが挙げられます。

  1. Contactless(非接触): 他の客、および施設スタッフ等との接触が最小限、もしくは無い
  2. Flexible(柔軟性): いつでも中止・変更することができる(キャンセル料なし、全額返金可)
  3. Hygienic(衛生的): 現地または道中においても、衛生面での安全対策がきちんと講じられている

ユーザーが何を求め、何を懸念しているかをしっかりと把握し、これらに対して何らかの対策を講じる必要があると言えるでしょう。

 

インバウンド業界デジタルマーケティングトレンド2022

コロナ禍で人との接触が制限されたことにより、様々なサービスがオンライン化され、人々も外出自粛の中で、様々なことをオンラインを通して行うようになりました。そのため、ビジネスはもちろん、日常生活においても、デジタルツールやサービスはその中核に位置するようになり、なくてはならない存在となったのです。きっと、今この瞬間にも、世界中の至る所で、「次の休暇はどこへ行こうかな」と手元のスマートフォンをいじりながら、リサーチや予約がされていることでしょう。ここからは、実際にどのような手法がトレンドインしていて、高いマーケティング効果を生み出しているかを紹介していきます。

check VR体験

バーチャルツーリズムは、今後の観光・旅行業界におけるひとつのビッグムーブメントの1つです。すでにAmazon Exploreや、Airbnb Experienceなどがバーチャルツーリズムを牽引する存在として注目されています。

VRを活用した仮想観光・仮想旅行が可能になったことで、先に述べた、ポストコロナ下でのニーズ、「Contactless(非接触)・Flexible(柔軟性)・Hygienic(衛生的)」の3つすべてを満たしながらも、五感に響く没入体験が提供できるようになりました。

これまでよりさらに多くの魅力・情報をコンテンツに織り込むことができ、旅行者が自分のスケジュールに合わせて目的地を探索できることなど、コト消費・トキ消費を喚起するマーケティング戦略を策定しやすくなるという点が、最大のメリットでしょう。バーチャル体験は人々が新たに旅行を計画し、新しい場所を、より親密に感じてもらう体験を提供できる素晴らしいユーザー体験を提供できるツールです。

 

check 豊富な情報を伝える「動画コンテンツ」

動画コンテンツは画像やテキストより豊富な情報をユーザーに届けることができ、ユーザーを体験に没入させる最高のマーケティングツールの1つです。

特にYouTubeを使った動画マーケティングは、デジタルマーケティングのメインストリームとなってすでに久しいですが、近年ブームになっているのが、やはりショート動画による動画マーケティングです。TikTokの人気拡大に伴い、Instagramのリール、TwitterのFleets、YouTubeショートなど主要ソーシャルメディアのほとんどが短編(ショート)動画を共有できる機能に注力していることから、今後も短編動画の動向は見ておく必要があると言えるでしょう。

 

check SNSは、やっぱりTikTokマーケティング Tiktok-logo

世界中で20億ダウンロード、月間アクティブユーザー数は10億人と言われるTik Tokは、インバウンド消費を狙う観光・旅行業界のデジタルマーケティングにおいても、利用すべきプラットフォームの一つと言えるでしょう。

まず、Tik Tokユーザーのコンテンツ支出額は、他のソーシャルメディアのユーザーと比較しても群を抜いて高く、ユーザーの平均世帯年収、消費意欲ともに高いという調査結果があります。このことからTik Tokには、購買意欲が喚起されやすく実際に行動(購入や予約)に移しやすい土壌ができていると言えます。

また、前項で述べたショートムービーのマーケティング効果においても、Tik Tokはその牽引者と言える存在です。2021年9月に開催された初のグローバルイベント「Tik Tok World」では、ビジネス目的でのTik Tok活用の利便性が向上する”多角的なソリューション”を発表しており、今後もブランディング・マーケティングツールとして、ますますその存在感を強めていくことは必須とみられています。

TikTokマーケティングのヒント

TikTokのアルゴリズムには位置情報が使用されるため、プロフィールに位置情報を追加します。Instagramと同様にハッシュタグ戦略も非常に効果的です。関連するハッシュタグを活用して、検索機能を利用しているユーザーに表示させるようにしましょう。トレンド入りしているハッシュタグは世界中のユーザーが「今」検索している言葉です。上手く活用して、視認性を高めましょう。また、TikTokは非常に短い動画ですが、どのような体験ができるかを一目でわかる動画を作成することがポイントです。

 

check ユーザーが作るコンテンツ(UGC)eye logo

UGCは、ユーザー自らが制作したコンテンツの総称でUser Generated Contentsの略で、BtoCビジネスにおいて購買意欲喚起に大きな影響を与える重要なコンテンツタイプの1つです。

そして今、毎日自動的に飛び込んでくる膨大な広告からの情報に疲弊し、広告に対しても不信感が強まっているという現在の消費者心理を背景に、「デジタル広告よりもUGCの方が信頼できる」と感じる人が増加しています。

Crowdriffの調査に参加した人の79%は、「ユーザーが生成したコンテンツが意思決定に大きな影響を及ぼした」と回答しています。また、観光や旅行の計画を立てる際も、実在するユーザーの生の声や感想が映し出されたSNSやブログなどの投稿記事が、高いエンゲージメントを獲得し、より高いロイヤルティも期待できるとされている費用対効果の高いコンテンツタイプの1つとして注目を集めています。

 

check 王道「ブログコンテンツ」

ブログは古典的と思われがちですが、現地店員や案内人のおすすめする観光スポットや食事などの生の声をダイレクトに発信できるという点で、ブランディング・マーケティング双方において効果が高いのがブログコンテンツです。また、コンテンツ寿命が短いソーシャルメディアコンテンツとは異なり、ブログコンテンツはコンテンツ寿命が長いため、改めてブログコンテンツの価値が見直されています。

そんなブログコンテンツですが、その価値に最も影響を与えるのが、何といってもSEO対策です。SEO対策を講ずることで、まだ認知度が低い観光地や施設であっても、検索結果経由でサイトを訪れる機会を生み出すことができます。ターゲットの需要にヒットしやすいような、ロングテールキーワードを設定して組み込みましょう。

特にニッチな観光スポットやアクティビティに対しては、検索キーワードもロングテール化するため、これから認知度を高め集客を図りたい場合は、適切なキーワード設定が、検索エンジンからの流入数を左右するポイントとなるでしょう。

 

check 検索に対応した「ローカルSEO」

近年、モバイルデバイスが検索のメインツールとなったことで、移動中や行った先々で周辺情報を検索するケースが圧倒的に増えたことにより、ローカルSEOの重要性が増しています。

こちらの記事でも紹介しましたが、2018年日本を訪れたレジャー・観光目的の訪日観光客の61.9%がリピーターであり、2回以上日本を訪れたことがある観光客が大半以上を占めていました。さらに旅行手配方法を見てみると、団体ツアー客の割合は20.2%のみで、個人旅行が7.3%、個別手配が72.6%を占めており、個人旅行を楽しむために日本を訪れる旅行客が圧倒的な割合を占めていまます。

訪日外国人の消費動向2019年
(国土交通省観光庁_訪日外国人の消費動向

つまり、このような観光客は既に日本の定番の商品や定番のルートはすでに体験済みで、さらなる新しい魅力を”探しに“日本を再訪問する傾向が強いということがわかります。このようなユーザーに対して、観光・旅行サイトの運営者にとっても、地域性にフォーカスした「ローカルSEO」対策は非常に有効です。

検索の93%には検索エンジンが利用され、そのうちの25%以上が最初に表示される検索結果をクリックすることを考慮しても、関連するキーワードでの上位表示は、観光・旅行業におけるデジタルマーケティング成功に必要不可欠と言えるでしょう。

その中でも、Google My Business(以下、GMB)は、その高いマーケティング効果から、効果的に活用することが必須といえるトレンドとなっています。ローカルパックに表示された口コミや評価、写真などの情報が、訪れる場所の決定に及ぼす影響力は日に日に増しているため、GMBには適切なキーワードを含め、検索上位に表示されやすい情報を登録しておく必要があります。

ただし、表示順位決定には、被リンク数や、紹介記事数、良い口コミなどもこれまで通り加味されるため、通常のSEO対策を怠ることなく、ローカルSEO対策を強化してくことがポイントです。

 

check パーソナライズされたマーケティング施策

“パーソナライズ”された旅行体験は、観光・旅行業におけるビックトレンドの1つです。 Airbnbによると、消費者の80%以上がユニークな体験を求めているそうです。特に観光・旅行業界においては、旅行者の3分の2以上が、「自分に合ったユニークなオファーをしてくれる旅行会社を選びたい」と考えているという調査結果もあるほど、近年の旅行者は“特別な体験”を求めるだけでなく、ユーザー行動はよりパーソナライズされたアプローチを求めて変化しています。

先述した通り、既に日本に来たことがあるリピーターに登録者全員に送信される一般的なメールマガジンやツアーやアクティビティプランなど、どの企業でも取り組んでいる定型的なコミュニケーションでは、もはやユーザーを惹きつけ関係性を維持することは難しくなってくるでしょう。

Hilton Honorsが提供するアプリケーションは、アプリを使ってチェックインしたり、鍵として利用できたりはもちろんのこと、アプリを使ってホテルのスパを検索するとスパまでの案内はもちろん、そこに向かう間に「特別オファー」が提供されたりと、ユーザーに合わせたサービスで話題となりました。

 

さいごに

ネット上で世界中どこでも訪れることができ、鮮度の高い情報が手に入るようになったことで、日本のどんな小さな観光地でも、海外から観光客を呼ぶことが可能となりました。今回紹介したトレンドは、世界中の顧客と企業がダイレクトにつながることがスタンダードとなった今、観光・旅行業界においても、観光地や施設の「国境を越えた」ブランディング、マーケティング戦略が必要であることを示しています。

ポストコロナのインバウンド需要取り込みは、今後の日本の観光・旅行業界の未来を左右する重要なターニングポイントとなるため、日本各地からオリジナリティ溢れる、魅力的なマーケティング戦略が生まれることが期待されています。来たるべきアフターコロナ時代のインバウンド需要を取りこぼさないためにも、今から多言語インバウンドマーケティングを戦略的に準備しませんか?

インバウンドマーケティングバナー

 

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。