失敗しない海外向けサイトリニューアルの進め方
~「計画・調査・設計・実行」進行手順を解説!~
企業の顔ともいうべきウェブサイトは、潜在顧客、既存顧客、従業員、協業パートナーなどと、より良い関係を構築するための優れたツールです。顧客との接点がデジタル上へと移行した現在では、ウェブサイト上で優れたユーザー体験を提供できれば、ファンを増やし、顧客の購買行動を促すことも可能となる優れた営業ツールになります。
とは言え、「ウェブサイト・リニューアル」と聞くと、気合いの入ったウェブマーケターであっても、気が重い…というのが本音かもしれません。 ましてや、「海外向け」と付け加えられると、できれば避けたいプロジェクトの1つかもしれません。。。
ウェブサイトの大幅なリニューアルは、手を抜いたり手順を間違うと大規模修正が必要になったり、追加資金が必要になったり、最終的には利益を生み出すどころか真逆の成果になってしまう可能性すらある大きなプロジェクトです。
しかし、何をどう進めていけば良いかを的確に把握していれば、(そんなに)恐れる必要もありません。
今回の記事では、担当者様の不安を軽減すべく、企業の海外向けウェブサイト構築を成功させるために必要な手順を「計画・調査・設計・実行」の4つの「工程」に分けて解説していきます。
目次
- 1.ウェブサイトのリニューアルとは?
- 2.ウェブサイトリニューアルの種類とは?
- 3.サイトリニューアルを行うタイミングとは?
- 4.サイトリニューアルが失敗する3つの理由
- 5.ウェブサイトリニューアル「工程別」進め方
- 6.さいごに
ウェブサイトのリニューアルとは何ですか?
ウェブサイトのリニューアルとは、ウェブサイトの構造やシステム、デザインなどを抜本的に変更を加えて、オンライン上での視認性を高めるなどパフォーマンスの改善を図る作業のことです。本記事では、サイトデザインの刷新だけでなく、ドメインやサーバー変更、構造変更、コンテンツの追加などサイトの構造に大きな変更を加えることを含めて表現しています。
サイトリニューアルは、ウェブサイト全体の問題点を改善するために、適時おこなうのが一般的です。
ウェブサイトリニューアルの種類とは?
ウェブサイト改修と一言でいっても小規模のものから完全に再構築する大規模なプロジェクトまでさまざまなタイプがあります。一般的にサイトリニューアルの種類は次の通りです。
- ドメイン変更(リブランディング)
- サーバー移行
- サブドメインからサブフォルダーへの移動
- サイト構造、ナビゲーションの変更
- デザイン変更
- ウェブサイトの統合(2つのサイトを1つに)
- CMSの変更
- デバイス設定の変更
- プロトコルの変更(httpからhttpsへの変更)
サイトリニューアルを行うタイミングとは?
以前、こちらの記事、「ウェブサイトの経年劣化を知らせる8つの兆候」でもご紹介したように、ウェブサイトを改修するタイミングを決定するために考慮すべき要素はいくつかあります。
- 事業戦略の変更
- サイトデザインが”古い”と感じる
- ナビゲーションが複雑
- コンテンツの更新やサイトの管理が大変
- 正しく表示できないモバイル端末がある
- トラフィックの大幅な減少
- 高い直帰率と短い滞在時間、低いコンバージョン
- 安定的にウェブサイト経由のリード獲得ができていない
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サイトリニューアルが失敗する3つの理由
サイトリニューアルが失敗する理由はそれぞれ異なりますが、典型的な理由はいくつか共通点が存在します。
1.計画・戦略が不十分
初めてウェブサイトのリニューアルに着手する企業のほとんどが、正確な「進め方」を把握しないまま、見切り発進をしてしまいがちです。サイトリニューアル計画や戦略策定に十分な時間を投資していません。
規模が大きくなるほど、予算も時間もトラブルも確実に増加します。多くの企業担当者はサイトリニューアルがこれほど時間とリソースを消費するものとは考えていません。基本的には、「全てが期待通りに進むことは 、” ない ” 」という認識でプロジェクトに取り組んだ方が良いかもしれません。どれだけ緻密に計画・戦略を練っても”予期せぬ事態”は発生することを前提に、繁忙期前にはサイトリニューアルを完成させる計画・戦略を立てましょう。
2.リソース不足
サイトリニューアルに取り組む前に、プロジェクト全容を把握し、サイトリニューアルを成功させるために必要な時間と労力を見積もりましょう。予算が限られている場合、今サイトリニューアルを実行する価値があるかどうかを見極め、判断しましょう。
初期段階で予算がないために手抜きを行ったり、リソースが不足していると途中でプロジェクトが頓挫しかねません。
3.SEO/UXを軽視
ウェブサイトリニューアルを成功に導くためには、必ずSEOとUXの両方の知見が必要です。単に「デザインを刷新できれば良い」という認識でサイトリニューアルに取り掛かってしまっては、必ず失敗してしまいます。
例えば、UXを向上させるために、大量のコンテンツを削除すると、クロールやインデックスの問題が発生します。また、テキストが多すぎて、画像が少ないとユーザーエンゲージメントが低下して、結局コンバージョンに繋がらないサイトになってしまいます。海外向けサイトの場合、その国や地域に合わせたサイトデザインはもちろん重要ではありますが、ビジネスを長期的に成長させるためにも「SEO・UX・海外」と言ったさまざまな観点から経験豊富な制作会社を選択しましょう。
失敗しないウェブサイトリニューアルの進め方、「全工程」
では、ウェブサイトリニューアルを「調査・計画・設計・実行」といった4つのフェーズに分けて、工程を詳しく見ていきましょう。
【調査フェーズ】
ウェブサイトリニューアルは非常に複雑なプロジェクトであり、大規模サイトの場合は数か月に及ぶ可能性もあるため、計画は非常に重要です。「調査フェーズ」では、既存のウェブサイトの状況を正しく分析することから始めます。
現在のサイトパフォーマンスを分析する
新しいウェブサイトの目標を設定する前に、まずは、現在のウェブサイトの状況を把握する必要があります。ユーザー エクスペリエンス、コンテンツ、デザイン、技術的な問題などに着目して、現在のウェブサイトの現状を正しく評価して、課題点を抽出します。サイトの過去3か月~1年ほどのデータを確認することをおススメします。
- 毎月の総トラフィック
- 各ページのユニークユーザー数・直帰率・滞在時間
- 各ページの獲得キーワード
- コンバージョン
さらに、ウェブサイトのナビゲーションや構成、レイアウトやデザイン、新しいウェブサイトに引き継ぎたいコンテンツなども抽出します。サイトのセキュリティや読み込み速度の平均時間なども合わせて抽出しておきます。実際に現状のウェブサイトにおけるどこの指標に問題があり、どこを改善する必要があるのかなどを明確にしておくことで、正しい筋道を探ります。
競合分析を実施する
自社ウェブサイトの状況を把握したのちは競合他社を分析し、ウェブサイトの階層やナビゲーションがどのようになっているか、どのような顧客に向けて情報を発信をしているかなどを把握します。ここでいう「競合他社」とは、自社サイトで重視したいキーワードで検索上位を取っているウェブサイトのことです。
海外企業であっても競合分析ツールなどを活用すると、効率よくデータを収集することが可能です。
- 競合のサイトやブログにはどのような種類のコンテンツがありますか?
- どのような構成をしていますか?
- 競合サイトのナビゲーションは最適ですか?
- 競合サイトので最適化されているキーワードは何ですか?
ユーザーへの理解を深める
多くの企業は、自社がウェブサイトに何を求めているか、経営者が何を望んでいるかを考えてしまいがちです。しかし、ウェブサイトは”ユーザー”が利用するのためのものです。ターゲットとなるユーザーとユーザーニーズを理解することは、ウェブサイトリニューアルの成功には不可欠です。
この段階では、ペルソナの構築/ユーザージャーニーを作成します。
ペルソナは、自社のビジネス形態(BtoC/BtoB)によって大きく異なります。BtoC企業の場合、一定数のターゲット像から共通する「典型的なユーザー像」をプロファイル化して、詳細に「人物像」(ペルソナ)をまとめます。一方、BtoB企業の場合では、最初の「訪問」から「問い合わせ・購入」までのプロセスや期間が ” 複雑で長い”という特徴があります。そのため、特定もしくは単一の人物・属性を対象にするのではなく「企業の抱えるビジネス課題」をピックアップします。
ユーザージャーニーは、ユーザーがコンバージョンに至るまでに通過するあらゆるステップを明確にし、各ステップごとにユーザーが抱く感情や行動に焦点をあてます。ユーザーが何を探していて、ウェブサイトがどのような質問に答える必要があるのか。また、コンバージョンに至るまでにウェブサイト上でどのように行動するかなどを想定してマッピングしていきます。
ターゲットとなるユーザーとその行動への理解を深めることで、ポジティブなユーザーエクスペリエンスを提供するウェブサイトに繋げます。
目標を定義する
サイトリニューアルを実施する際に、必ず行うべきなのが目的や目標を定義することです。目標や目的は、単に新しいウェブサイトを立ち上げるにあたり「どのようなデザインにするか」というものではなく、新しいウェブサイトで「どのようなことを実現するか」を明確に定義します。
お問い合わせ数を増やしたいのか、サイト訪問者を増加させたいのかなど企業によって目標・目的はさまざまであす。現状の課題を抽出し、リニューアルを通じて達成したい目標を定めましょう。現状のウェブサイトに足りていない要素を洗い出した後は、測定可能な目標(KPI)を設定します。
- サイトリニューアルを行う主な理由は何でしょうか?
- このサイトを通じて一番達成したい目標は?
【計画フェーズ】
海外向けウェブサイトであるため、ターゲットとなる国や地域の文化・価値観・嗜好性などは日本国内とは大きく異なるという点を考慮する必要があります。そのため計画フェーズでは、より深い見識が必要となってきます。
ブランド・アイデンティティ、カラー、メッセージを再定義する
ウェブサイトに映し出されるビジュアル言語は、ブランドのアイデンティティと深く結びつく部分でありウェブサイト作りには重要な要素の1つです。ブランドを象徴する視覚的な要素(ロゴ・キャッチコピー・キャラクターなど)の組み合わせ、核となる企業の価値観、ブランドメッセージやコンセプト、ブランドカラーなどを明確に落とし込みましょう。
ここで落とし込んだことは、新しく刷新したウェブサイトはもちろんのこと、広告やソーシャルメディア、コンテンツなどのマーケティング戦略にも組み込まれることで施策の効果をより一層高める効果を期待できます。ブランドが発する情報全ての一貫性を保つことによって、ユーザーに対して自社が「何を提供しているのか・何に価値を置いているのか」を明確に伝えることができます。
コンテンツ戦略を定める
旧サイトのコンテンツを引き継ぐのはもちろんですが、新しいコンテンツの方向性を決める時期です。
サイトリニューアルの目的の1つはパフォーマンスを改善させることですが、サイトリニューアルを行うことで悪影響を及ぼしてしまうケースがあります。例えば、トラフィックが多いページを削除してしまうと、検索エンジンのランキングに悪影響を与えてしまう可能性があります。ここでは、パフォーマンスの良いコンテンツを評価し、良くないコンテンツに対しては、改善策を探りましょう。
以下のようなコンテンツを見つけた際は、要チェックです。
- エラーやリンク切れコンテンツ
- 目標と一致しないコンテンツ
- 最も人気のコンテンツ、不人気のコンテンツ
- アップグレードできそうなコンテンツ
- 訪問とコンバージョンを強化できそうなコンテンツ
- 追加すべきコンテンツの抽出
新規リードを獲得し続けるためには、良質なコンテンツが不可欠です。サイト訪問者は、企業の価値を反映した新鮮なコンテンツを見つけた場合、訪問者の60%以上がその企業に対して肯定的な感情を抱くことが分かっています。
キーワード調査を実施する
次にキーワードの調査をします。ユーザーがリニューアル前にどのようなキーワードを検索するかを把握しておくと、サイトのコンテンツづくりに役立ちます。とくに文化の違う海外向けのウェブサイトを作る場合は、ユーザーの趣向や地域特性の洞察が成功の鍵を握ります。
検索エンジンのランク上位を狙いやすくなるだけではなく、ユーザーの知りたい情報が記載されたコンテンツが生み出されるため、共感が得やすくなります。サイトリニューアル前からキーワード調査をしておくことで、ユーザーが知りたい情報が網羅されたユーザーファーストなサイトづくりができるわけです。
海外向けマーケティングに関する調査を行う際は、Semrushなどのツールを使用すると効率的にデータを収集することが可能です。
【設計フェーズ】
今までの調査を活かして、いよいよ設計フェーズに入ります。
サイトマップ・ワイヤーフレームを作成する
サイトマップとワイヤーフレームは新しいウェブサイトの構造とレイアウトを設計するために不可欠です。
サイトマップとは、サイト全体のページ構成や階層が一目でわかる家系図のようなものです。まずは、現状のサイトマップを把握したうえで、新しいサイトマップにページ構成、階層やナビゲーションを作り替えていきます。GlooMapsなどのツールを利用すると簡単に作成することが可能です。
ワイヤーフレームは、ウェブページのレイアウトを示す設計図です。ワイヤーフレームを作成する場合、パワーポイントやAdobe製品などを利用する場合もありますが、Cacooやmoqupsなどのツールを活用する場合もあります。使いやすく、共有しやすいツールを選ぶことをおススメします。ワイヤーフレームはデザイン段階に入っていないため、過度に装飾を入れてしまうと分かりづらくなってしまいます。極力シンプルなワイヤーフレームが好ましいでしょう。
ワイヤーフレームの作り方は、配置する情報を全てピックアップ後グループ分けし、優先順位を付けます。多くのレイアウトは、画面の分割の仕方によって決まります。各パーツが縦並びに配置される「シングルカラムレイアウト」、複数のカラム(列)によって構成される「マルチカラムレイアウト」などの基本的なレイアウトを踏まえつつ、自社のウェブサイトにはどのようなものが相応しいか判断しましょう。
- ページに掲載する情報を整理する
- レイアウトの基本型を決める
- ワイヤーフレームを作成する
デザインを決定する
次は、ワイヤーフレームや構成をもとにデザインの方向性を決定し、PhotoshopやIllustratorを使用してデザイン案に落とし込んでいきます。事前に定義したブランドカラーやメッセージなどのイメージと相違のないデザインに作り上げていきます。
ミズーリ工科大学の視覚追跡調査によると、ユーザーがウェブサイトに訪問して、ウェブサイトをスキャンするまでにかかる時間はたったの2.6秒であったことが分かっています。また、ウェブサイトの第一印象は94%がデザインに関係していることも分かっています。
デザイン案が確定して、コーディングに進んでしまうと、デザインの変更は難しくなるため、何度も微調整が必要な工程となります。根気強く頑張りましょう。
【実行フェーズ】
ワイヤーフレーム作成後、デザインを加えたモックアップを作成し、詳細部分が最終決定したら、いよいよ実行フェーズに進みます。
コーディングにとりかかる
コーディングを実施します。と言っても、ここは制作会社が主に担当するフェーズです。
サイトスピード、モバイルフレンドリー、セキュリティ、パフォーマンス面で最適化を行います。このフェーズで、電子商取引、メンバーシップなどの統合など、複雑な機能の構築もしていきます。
ユーザーテストを実施する
ユーザーテストはサイトリニューアルを行ううえで、不可欠なステップの1つです。ステージング環境が整ったら、サイト全体のテストを実施して、リニューアルを妨げる可能性のある問題を抽出します。
テストを実施する際は、少数のユーザーグループを集めて、実際のサイトを操作して評価してもらう「ユーザビリティテストセッション」を実施します。さまざまなデバイスやブラウザを使用して、「フォームへの記入」や「特定のページへの移動」など、いくつか実際の動作テストを行い、エラーの有無はもちろんのこと、サイトの使いやすさなど、細かなテストをいくつも行います。
テストを実施したら各ユーザーグループにフィードバックを行い、結果を分析し、問題点を特定します。
- ページの重複はないか
- 404エラーは表示されていないか
- コンテンツが正しく表示されているか
- ナビゲーション、ヘッダー、フッターのリンクなど、サイトの内部リンクは最適化されているか
- 301リダイレクトが全て設定されているか
- 壊れた画像や欠落した画像はないか
- 全てのページのメタディスクリプションとタイトルが正しく表示されているか
- ページの読み込み速度
- txt ファイル、XML サイトマップ、HTML サイトマップ、構造化データを確認
- モバイルデバイスでの動作確認
- サイトの使いやすさ
新しいサイトを立ち上げます!
ウェブサイトの公開準備が整いました。いよいよ新しいウェブサイトの公開です。初期移行が完成したら、最後に以下の手順を確認します。
- robots.txt ファイルが検索エンジンをブロックしていないか?
- ページのリダイレクトが機能しているか
- XML サイトマップを Google Search Console アカウントにアップロードを行う
サイト公開直後は、手放しに喜んではいられません。HTTPステータスコードとリダイレクト先をチェックし、それらが正しく動作していることを確認する必要があります。リダイレクトまたはレスポンスコードが正しくない場合は、トラフィックの低下を防ぐためにできるだけ早く修正する必要があります。サイト公開時に機能していたとしても、移行後に機能しなくなることもあるので定期的にクロールして確認する必要があります。
サイトの速度とコアWebバイタルも確認して、 サイトリニューアルによって指標が低下していないことを監視します。さらに、数日~数週間はGoogle AnalyticsやGoogle Search Consoleを使用して、トラフィックやランキングなどのパフォーマンスを常に監視しましょう。
サイトリニューアル後のパフォーマンスは、最初の数週間は不安定になる可能性があります。小規模ウェブサイトの場合は4~6週間、大規模ウェブサイトの場合は、少なくとも2~3か月は不安定になる可能性があります。
さいごに
海外向けウェブサイトのリニューアルは、多くのチームメンバーが参加し、専門知識が必要になる一大プロジェクトです。サイトリニューアルを成功に導く最大のポイントは、「準備と計画」に適切な時間を費やすことができるかです。サイトリニューアルを行う目標を定義し、現在のウェブサイトの資産を正しく評価し、サイトのどの領域を改善したいかを必ず理解してから取り掛かりましょう。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。