世界で注目される新しいソーシャルメディア
~海外マーケターが知っておくべき最新事情~
デジタルマーケティングの世界では、流行の変化が激しくそのスピードはますます加速しています。
特にソーシャルメディアの領域では、新しいプラットフォームが次々と登場し、消費者のニーズや関心も移り変わりやすいのが特徴です。そのため、マーケターにとっては、デジタル市場で常にアンテナを張り最新トレンドに敏感であることが重要です。
これは2024年も例外ではなく、新しい技術を使った次世代型ソーシャルメディアなど新たなプレイヤーが市場に参入し、従来のソーシャルメディアとは異なる独自の機能やアプローチでユーザーの心を掴もうとしています。
過渡期を迎えるSNSプラットフォーム戦国時代。
本記事では、マーケターが注目すべき新しい海外のソーシャルメディアをご紹介します。単に市場のトレンドを追うだけでなく、その背景を確実に捉え、未来を見据えた戦略的アプローチにお役立いただければ幸いです。
Threads
Threadsは、Instagramチームによって開発されたテキスト共有アプリで、2023年7月5日に初期バージョンが発表されました。Xと同様にテキストや写真、動画投稿、他のユーザーと会話、最大500文字のテキスト投稿、リンク共有、写真や最長5分の動画が投稿が可能です。
写真は最大10枚まで投稿可。また、リプライ制限を設けて外部の分散型ネットワークのフォロワーに投稿を表示させないようにする設定や、「Fediverse」への共有をオンにしたユーザーは、Mastodonなどの他のサーバー上のユーザーからの返信を Threads 内で直接確認したり、いいね!をすることも可能です。
ThreadsにログインするためにはInstagramアカウントが必要で、現時点ではアプリからの利用に限られています。パソコンからの閲覧は可能ですが、コメントや投稿、いいねなどはできません。また、ThreadsアカウントはInstagramアカウントに紐づけられるため、アカウントを完全に削除するには、紐づいているInstagramのアカウント自体を削除することになるため注意が必要です。
2024年9月の時点ではThreadsへの広告出稿はできません。そのためビジネスに活用する方法としては、ブランドやコミュニティを作ることが有効です。プロフィールや投稿内容を公開にして情報や価値観を発信し、フォロワーと積極的に会話して信頼関係やファンベースを築いていきましょう。
Threadsのユーザー数は、他のどのSNSよりも最速で100万人に達し、2024年Q2の四半期決算発表で ザッカーバーグ氏は、「間もなく2億人に達する見込みで、ユーザー数10億人を目指す」と言及しています。
海外では、「X(旧Twitter)キラー」とも言われるThreads。今後、注目すべきSNSの一つです。
BeReal
BeRealは、2019年にフランスで誕生し、名前の通り BeReal =「リアルをさらけ出す(本物であること)」ことを目的とした「信頼性」を重視した新感覚のソーシャルメディアです。
このアプリでは、毎日ランダムな時間に「Time to BeReal」という通知を受け取ると、一日一回、フィルターなし+編集なしのリアルな写真をその場で撮影して投稿します。通知を受け取ってから投稿まで2分以内に「撮影+投稿」を行う必要があり、髪の毛を整えたり、周りを整える時間はありません。写真を取り直した場合、取り直した回数が表示されてしまいます。自分の投稿が終わるまで他のユーザーが投稿した写真にアクセスできないため、ユーザーの投稿意欲が高まる仕組みになっています。
BeReal は、「Instagramのライバル」という立ち位置で、国や地域によって差はあるものの、リアルを求めるZ世代の女性を中心に人気が高まっています。
2022年に米国と英国でのマーケティング活動を強化したBeRealの利用数は、前年比 315%増加、アプリのダウンロード数は 1,000% 以上増加しました。2024年BeRealのアクティブユーザー数は。2,300万人に達しており、リリース以来一億回ダウンロードされています。
以下は、BeRealの利用規約です。これは既存のSNSに疲れた若者の心に刺さりますね👏
Your friends for real is our mission. We want to build services and technologies that allow you to live your real life and share that reality with your real friends. To help that happen, we want to be extra clear about what it means to be part of the BeReal community. We want you to know what you can expect from us, what we expect from you, and how together we can make BeReal better for you and your friends. /「あなたの友達をリアルに」というのが私たちの使命です。私たちは、あなたがリアルな生活を送り、その現実を本当の友達と共有できるサービスや技術を構築したいと考えています。そのために、BeRealコミュニティの一員でいることが何を意味するのかを明確にしたいと思います。私たちからあなたに期待すること、あなたから私たちに期待すること、そして一緒にBeRealをより良いものにするために何ができるかをお知らせします。
「インスタ映え」などの言葉が生まれたように、SNS上で理想化された生活を共有することに疲れたユーザーや、本物のつながりや情報の信頼性を重要視する傾向が高まっている現在、BeRealの動向は世界中で注目されています。
Mastodon
Mastodon(マストドン)は、2016年にドイツのソフトウェア開発者 Eugen Rochko氏(オイゲン・ロチッコ)によってリリースされた分散型ソーシャルネットワーキングアプリです。FacebookやInstagram、TikTokといった企業とは異なり「非営利団体・オープンソース」のソーシャルメディアプラットフォームです。
2022年10月にイーロン・マスク氏が X(旧Twitter)を買収したことによる混乱の影響で、Xから多くのユーザーがMastodonに流れました。一時的に月間アクティブユーザー数が250万人以上に急増した時期もあったほどです。現在、ユーザー数が落ちてきてはいますが、定着したユーザーも多く、依然注目すべきSNSです。
Mastodonの使い方は、X(旧Twitter)と似た使い方をします。自分の意見を述べたり、写真の投稿したり、フィードに投稿される会話に参加したり、フォローを行うなどMastdon上のユーザーと交流することができるプラットフォームです。
Xと大きく異なる点は、中央型ではなく複数のサーバー(インスタンスと呼ばれる)が連携してネットワークを構成しているという点です。分散化の一形態であるフェデレーション(ブロックチェーンではない)によって、インスタンスはそれぞれ独自の管理者が存在し、独自のルールやテーマを設定できるため、ユーザーは自分に合ったコミュニティを選んで会話に参加します。
さらに、ソフトウェアがオープンソースであるため、透明性が高く、コミュニティによる改良が継続的に行われています。Mastodonは、Xの一部のユーザーが、企業管理型ではなく代替となるサービスを探すなかで、注目されたソーシャルメディアです。そのため、今後も Facebook や Xのような大規模なソーシャルメディアに何か問題が起きた場合は、再度注目されることが予想されます。
Mastodonは非営利団体のため、広告配信や特定の投稿を優先させるアルゴリズム、収益化などはありません。
Lemon8
Lemon8 は、TikTokの親会社である BytDance(バイトダンス)が開発した新しいソーシャルメディアで、世界のSNS界隈をザワつかせた、SNSの一つです。
Lemon8は、InstagramとPinterestを組み合わせたようなアプリで、投稿された動画や写真は、ファッションや美容、グルメ、ヘルスケア、トラベルといったトレンドトピックと紐づけられます。ユーザーが特定のトピックを検索すると、その内容に関連するコンテンツが表示される仕組みです。
2024年には1,290万ダウンロードされるなど、着実にユーザー数を伸ばしています。
Lemon8には、現時点では著名なインフルエンサーは参入していませんが、InstagramやTikTokに900人から3,000人程度のフォロワーを持っているマイクロインフルエンサーが数多く参加しています。今後は他の地域にも展開していくことが考えられ、中国 BytDanceが米国でどう仕掛けるか。米国TikTok規制の行方とともに注目すべきSNSの一つです。
では、なぜ、このLemon8が世界的に注目されているのでしょうか?
それは、「TikTokが米国で禁止された時のバックアッププランが Lemon8 なのではないか?」と憶測されているからです。
2024年4月、TikTokはアメリカでの事業を9カ月以内に売却しなければ米国内での利用を禁止する法案が通過しました。そんな中、2023年3月に(ひっそりと)リリースされた Lemon8 は、最近、米国・英国ユーザー獲得に向けて予算を投下するなど、動き始めたことがわかり、ついにあの国が動き始めたのでは?!と、界隈では話題となっています。
2025年の米国大統領選挙の行方によって、盛衰が分かれる可能性のあるため、注目されているSNSです。
Patreon
Patreon(パトロン)は、アートや音楽、動画、ミュージシャン、作家などあらゆる種類のコンテンツクリエイターに対してパトロンと呼ばれる支援者が、直接定期購読を行うメンバーシップ制のクリエーター支援プラットフォームです。
Patreonは、動画製作者である Jack Conte 氏が、Youtubeのアルゴリズムによる収入の不安定さに疑問を持ち、友人と共に2013年に立ち上げました。クリエイターはPatreonを通して支援者と直接契約を行うため、SNSのアルゴリズムや広告主に配慮する必要がなく、「Youtubeで〇〇の話題を話すと、広告が付かない」「広告単価のレートが急に変更になった」といったプラットフォームに依存する収入的問題を心配することなく、安定した収入を確保するための最善の方法としてクリエイターから高い支持を集めています。
Parteon内で「クリエイター⇔支援者」でフィードバックを送信したり、質問ができるなどコミュニケーションを取ることができるため、支援者とより親密なコミュニティ形成を行うことができます。
世界中で800万人を超えるアクティブユーザーがいると言われています。利用するクリエイターはさまざまですが、YouTuberが一番多く、海外で活躍しているYoutuberやポッドキャスター、コンテンツクリエイターが、ソーシャルメディアのチャンネル内にPatreonへのリンクを張っていることもしばしば目にするようになりました。
Substack
Substack(サブスタック)は、ライターやジャーナリスト向けのコンテンツ配信プラットフォーム上に構築されたソーシャルメディアです。このプラットフォームでは、ジャーナリストや作家、クリエイターが自分の専門分野や情熱を追求し、読者と直接つながれる場として人気が高まっています。
Substackの大きな特徴は、個人が購読料を設定でき無料または有料のニュースレターを発行できます。読者は気に入ったコンテンツクリエイターをサポートし、専門的な記事や物語を直接受け取ります。クリエイターは出版社やメディア企業に依存せずに、自分自身の考えを自由に表現することができるため、オリジナリティの高いコンテンツを発信することでき、多くの購読者を獲得できるのです。
2017年に設立されたSubstackは、現在300万人以上の有料購読者と3,500万以上のアクティブユーザーを抱えていると言われており、これまでに5回、9,020万ドル以上の資金調達に成功しています。
専門的な知識がなくても簡単に始められ収益化できるため、多くのライターやジャーナリストが自分のブランドを確立し、新しい読者を獲得する目的で今後も参入してくることが期待できます。
Whisper
Whisperは、人々が身元やプロフィールを明かすことなく、本音や気持ちを共有し、関係を築き、さまざまなトピックについて会話できる最大のオンライン プラットフォームです。
プラットフォームに参加すると、ランダムなニックネームが発行され、完全匿名で利用することができます。アカウント開設時にIDなどが不要なため、個人の身元が特定されることがなく、自分の意見や感情をありのままに開放できる空間として、若者に人気を集めています。
Whisperは、XとSnapChatを組み合わせた機能を持ち、テキストや写真の投稿したり、いいねや返信、ダイレクトメッセージなどを交換することができます。プロフィールが存在しないため、「他のユーザーを検索する」ことはできません。このことが、個人のプライバシー保護に繋がっており、若者に安心感を与えています。WhisperはAndroidおよびAppleプラットフォーム専用のためデスクトップバージョンでは機能が制限されています。
ソーシャルメディアでのユーザーのプライバシー保護がますます重要視される中、Whisperの匿名性は特に若い世代から評価されています。
Whisper は3 回の資金調達で合計6,100 万ドルを調達しています。
さいごに
近年ではFacebookやInstagramなど既存のプラットフォームに代わる新しいプレイヤーが「独自の特色」を持ち、存在感を増してきています。また、Centralized(中央型)、Federated(連合型)、Distributed(分散型)など、デジタルエコシステムが進化するとともに、新しい技術を使った次世代型ソーシャルメディアが誕生しています。加えて、11月の米国選挙の結果によっては、業界を牽引してた企業が衰退する可能性もあるため、時代の変化を俊敏に捉えて柔軟に対応することが求められます。
変化の激しいソーシャルメディアマーケティングで競争に勝ち抜くためには、常にアンテナを張り最新の動向を把握する必要があります。しかし、単に市場のトレンドを追うだけでなく、その” 背景 “を理解し、未来を見据えた戦略的アプローチが不可欠です。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。