本題に入る前に、B2CとB2Bについて簡単に説明します。『B2C』は「Business to Customer」、『B2B』は「Business to Business」を表します。B2Cは、企業が消費者に対して行う製品やサービスの販売取引です(参照:Defference Between B2B and B2C)。私たち個人が商品を購入する過程は、B2Cに分類されます。
オンラインショッピングの一般化、また安価な海外製品が大量に輸入されるようになると、顧客は商品の質や値段だけでなく、その他の付加価値を求めるようになりました。具体的には、商品購入のスムーズさや購入後のサポートやサービス、また企業ブランドに対する信頼感などです。実際、2012年にAMERICAN EXPRESSの行った調査によると、消費者の約3分の2は、商品購入時に商品のコストだけでなく、サービスの内容や信頼が大切だと回答しています(参照:2012 Global Customer Service Barometer)。さらに、これはB2Bマーケティングでは顕著で、Avanadeの調査では、56%の企業意思決定者が6ヶ月以内によりよい顧客体験を獲得するために、商品やサービスにより多くのお金を投資したと回答しました(参照:Global Survey:B2B is the New B2C)。企業の未来を左右するような大きな買い物であれば、安心安全の信頼できる企業から商品を購入したいと考えるのは当然のことです。B2Bマーケティングはこの点に着目し、企業間の「信頼」をキーワードとし大きな成長を収めてきました。
セールス側の企業にとっては、B2Bは、手軽に大きな利益を得られる優れたマーケティングモデルでした。消費者の認知度を高めるための高額な広告費は必要なく、優れたセールスマンが時期を見計らいバイヤーとなる企業に資料を持ち込み、付加価値を含んだ商品価値を魅力的に説明すれば、大きな収益を上げられる時期もありました。また、「信頼」という名目の元で一度関係性を構築することができれば、その後何年間にもわたってオートマティックに商品を販売することもできました。B2Cを中心に行っていた企業も、B2Bの優位性に目を付け、大きく方向転換した企業もあったほどです。
3.B2Bマーケティングがぶち当たった大きな壁
一見、大きな成功を収めているかに見えるB2Bマーケティングですが、現在、大きな壁にぶち当たっています。その一番の原因は、バイヤーがB2B離れを起こし始めたことです。B2Bは一見、非常にシンプルなマーケティングモデルかのように見えますが、現在B2Bは、バイヤー側の企業にとって非常に複雑な購買プレセスが必要になると言われています。以下は、リサーチ&アドバイザリ企業のGartnerが報告した、バイヤー企業のB2B購買プロセスの例です(参照:Win More B2B Sales Deals)。
「バイヤーイネーブルメント」は、B2Bバイヤー側の企業が複雑な購買プロセスをスムーズに進められるように、B2Bのセールス側の企業がバイヤー側の企業に提供する情報媒体です。これまでのB2Bでは、セールスマンが所有する秘密で特別な情報が商談の中心に配置されていました。しかし、これがバイヤー企業の購買プロセスを複雑化させている要因の一つであることから、バイヤー企業が自由にアクセスできる情報媒体「バイヤーイネーブルメント」の重要性が謳われています。これまではセールス側の企業が主導していたB2Bマーケティングプロセスを、バイヤー側の企業に主導権を移す取り組みといえます(参照:Win More B2B Sales Deals)。