海外向けDSP広告の基礎知識
~DSPの仕組み・市場動向・人気プラットフォームを徹底解説~
デジタル広告はインターネットテクノロジーの発展に伴い、日々進化し続けています。
デジタルマーケターにとって広告効果の最大化は非常に重要なKPIの一つといえるでしょう。そのKPI達成に一役買うのが今回紹介する「DSP」です。「DSP」は日本国内だけではなく、グローバルでも幅広く利用されており、世界で最も普及しているデジタル広告の手法の一つです。
この記事ではその「DSP」の概要からメリット、さらには海外での人気DSPまで網羅的に紹介していきます。
目次
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- 1.DSP広告とは?
- 2.DSPの仕組み
- 3.DSPの市場規模
- 4.DSPを利用するメリット
- 5.海外で人気のDSP比較
- 6.さいごに
DSP広告とは?
DSPはの「Demand-Side Platform」の略称で、広告枠の買付・配信や効果分析などをリアルタイム・自動で行い、広告配信を最適化するための広告プラットフォームです。
DSPを使用することで、広告主はひとつのプラットフォームを通して、さまざまなメディアに広告配信が可能で、バナー広告から検索広告はもちろんのことネイティブ広告、動画広告、デジタル屋外広告など、あらゆる広告形式で、狙ったターゲット層への広告配信が可能です。
特に海外向け広告の場合、国ごとのユーザー行動や嗜好に基づいて広告を最適化することができるため、個人へのアプローチが重要視されている現代では、海外向けにDSPを使った広告戦略は不可欠といえるでしょう。
DSPの仕組み
DSPは2008年頃に誕生し、今では多くの企業が活用しています。
そもそもデジタル広告は広告主と媒体社が広告枠単位で直接取引を行う「純広告」から始まりました。
広告主側は各媒体の各広告枠単位で管理するには手間がかかり、媒体社側は売り切れない在庫が発生するため、それを束ねて販売することができる「アドネットワーク」が誕生しました。
アドネットワークの誕生により、広告主/媒体社の手間が省けた半面、意図しないユーザーにも広告が配信されてしまうという「広告の無駄打ち」が多くなるという問題点が発生しました。
このような純広告やアドネットワークの課題を解決するために開発されたのが、DSPです。
DSPは、広告在庫を持つパブリッシャー側のプラットフォーム(Supply-Side Platform)と連携して、広告枠を購入したい広告主をリアルタイムで結び付ける仕組みを提供しています。
DSPを通じて広告が配信される仕組みは以下の様になっています。
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- ユーザーがWebサイトを訪問
- 媒体社がSSPに広告をリクエスト
- SSPがオーディエンス情報などを元に各DSPに入札オークションをリクエスト
- 各DSPは配信条件に合致した広告主を選定し、入札開始
- SSPが最高入札額を提示した「DSP/広告主」を媒体社へ提示
- 広告が表示される
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この一連のフローは、リアルタイム入札(Real Time Bidding)と呼ばれ、①のユーザーがWebサイトを訪問してから、⑤のリアルタイム入札が実行されるまでの所要時間は、「0.1秒以内」といわれています。また、掲載面、広告枠を予め指定できるPMP(Private Market Place)と呼ばれる取引ができ、PMPは「人 × 枠」を掛け合わせた高品質な広告配信を可能にしています。
PMP参考リンク:プライベートな広告取引を実現する「PMP(プライベート・マーケット・プレイス)」とは(hakuhodody-one.co.jp)
DSPは、売れ残った在庫を購入する手段として生まれた広告ですが、技術の進化などによって現在では、利用可能な在庫やプレミアム在庫を購入する手段へと変化してきています。
DSPの市場規模
DSPはデジタル広告業界において急成長を遂げている分野です。
FORTUNE BUSINESS INSIGHTS のレポートによると、2021年時点で 207.6 億米ドルに達し、2030年までに 1,145.1 億米ドルにまで成長する試算が出されています。年間平均成長率(CAGA)は 23.9% と非常に高い成長が見込まれています。
DSP広告市場の成長を支えている主な要因は、データ駆動型広告への需要が高まっていることです。DSPはユーザーデータを活用し、リアルタイムで最適な広告入札と配信を行うため、コスト効率を最大化したい広告主にとって魅力的な選択肢の一つとなっています。
地域別に見ると、米国が圧倒的なシェアを占めています。業界別では、小売業とメディア&エンターテイメント業界がDSP広告市場の成長を牽引しています。
特に小売業では、eコマースの普及に伴い、パーソナライズされた広告配信が不可欠となっており、ファーストパーティーデータを活用した広告への需要が一層高まると予想されています。一方、メディア & エンタメ業界では、コネクテッドTV(CTV)やリテールメディアネットワーク(RMN)などといった新興プラットフォームの成長とともに、需要がさらに拡大すると見込まれています。
DSPを利用するメリット
高精度なターゲティング機能
DSPを利用する最大の利点の一つは、高精度なターゲティングが柔軟にできる事です。
DSPは膨大なデータの解析を通じて、年齢や性別などの「属性」や、ユーザーが消費しているコンテンツの種類やカテゴリなどの「コンテキストデータ」、訪問したWebサイトや購入した製品、操作した広告といった「行動データ」に基づいて広告配信することが可能です。
DSPでのターゲティング一例
- 男性 20代 旅行好き
- 女性 ゲーム・アニメ好き
さらに、DMPに接続すると、より精緻なターゲティングが可能となります。DMPとは、Data Management Platform(データ・マネジメント・プラットフォーム)の略で、一言で説明すると「インターネット上に蓄積された様々な情報データを管理するためのプラットフォーム」のことです。DSP視点で考えるとDMPはターゲティングをより強化する装置と考えることができ、より専門的なデータを基にした配信が可能となります。
DMPを利用した場合、以下のような、より精緻なターゲティングが可能となります。
専門的なターゲティング一例
- クレジットカードの年間決済額1000万円以上のユーザーに配信
- 特定の会社の所属、役職情報を元に配信
- 特定期間に大阪に旅行する予定のあるユーザーに配信
- 特定期間に成田空港に到着するユーザーに配信
オーディエンス拡張配信が可能
オーディエンス拡張配信とは、広告配信時に定義したターゲットと似ているユーザーを探し、配信対象の母数を増やして配信することです。
例えば、自社サイトに訪問したユーザーに対してリターゲティングの配信を行いたいと考える場合、実際にはサイトに訪問していないユーザーであっても、実際にサイトに訪問したユーザーと似た属性を持つユーザーをDSP上のデータを用いて探し、そのユーザーにも広告配信を行います。
そうすることで、配信対象のリーチ数の拡大ができ、配信価格の高騰を抑えつつ、関連のあるターゲットに配信することができるため、費用対効果を高めることができます。
効率的な広告運用が可能
DSP広告では、ひとつのプラットフォームで、さまざまなメディアに、あらゆる広告形式の広告配信が可能です。広告主は、DSPの管理画面で一元管理することができるため、最適なパフォーマンスで広告運用することができ、効率的な広告配信を行うことができます。
複数のサイトにまたがるキャンペーンでも、一度の入稿で自動的に配信が行われます。また、フリークエンシー(表示回数)を管理する機能により、同じユーザーに対する広告の表示回数を制御することで、不要な露出を防ぐこともできます。さらに、レポート機能も充実しており、リアルタイムでキャンペーンの成果を把握し、迅速に戦略を調整することが可能です。
これにより、広告運用の効率がさらに高まり、成果の最大化を図ることができます。
「海外で人気のDSP」比較
DSPは、世界の大半のエリアでの配信に対応しています。そのため、一見どの DSP で配信を行っても、さほど変わらないように思われがちですが、実際は案件によって求められる配信エリアや対応しているデータによって、相性の良し悪しがあります。そのため、DSPの特性を理解したうえで配信することが大切です。
今回はグローバルで展開しているDSPのうち、代表的な2媒体をご紹介します。
Yahoo DSP
日本で展開しているYahoo!Japanとは別で、海外におけるYahooサイトを運営しているBoundlessが提供するDSPです。配信先は、中国本土以外の世界中に配信が可能です。
Yahoo DSPの一番の特徴は、世界でも有数のユーザー数を誇るポータルサイトである「Yahoo!」の検索履歴をはじめとした、一連のデーターを活用して広告配信が可能である点です。
検索履歴やYahoo!メールのデーターが活用でき、ECでの購買履歴や航空券の購買情報を取得して配信を行うといったユニークな配信が可能です。また、DOOH や CTV配信も充実した在庫を確保している他、現地で人気の高いYahoo!系列のサイトへの配信が充実している点も大変魅力的です。
Yahoo!のユーザーが特に多い、米国を始め、台湾向け配信でもおすすめな媒体です。
TheTradeDesk(TTD)
TheTradeDeskは、DSP界を代表するDSPとして世界中で認知されています。業界のリーダー的ポジションとして多彩な広告フォーマットに対応しており、また多彩な配信先を保有しています。文字通り世界各国に展開しており、各エリアに拠点をもっているため、各地域で良く見られているローカルサイトなどの配信面も豊富に保有していることが特徴です。
その代表的な例としては、TheTradeDeskはグローバル全体に展開するプラットフォームでありながら、中国本土のローカルサイトにも配信対応しています。
中国にはグレートファイアウォールと呼ばれるネット閲覧規制があり、GoogleやFacebookといったグローバルプラットフォームへのアクセスが厳しく制限されています。そうした事情もあり中国本土には中国資本の媒体を使って配信を行うことが一般的でしたが、TheTradeDesk ではワンプラットフォーム上で中国本土配信を含めた統合管理を実現しました。
中国ではローカルサイト以外、グローバルに展開しているサイトは実際にはあまり見られていないという実情があるため、ローカルサイトへの配信を重視することはキャンペーンの成功において大変重要です。
さいごに
DSPはオールラウンドに幅広い国、幅広い配信面に対応している配信プラットフォームです。メイン施策としても、少額の発注でプランニングの隙間を埋める手段としても使えるため、海外向けデジタル戦略において重要なソリューションの一つと言えるでしょう。
一方で柔軟に配信できるからこそ、各媒体の差を把握しにくいという状況もありますが、実は各DSPにはそれぞれ得意、不得意があり、その点を考慮することでより効果的な広告配信を実現します。
RTBの普及により、ここ数年でDSPの種類は急激に増加しており、高度な機能とテクノロジーを組み込んだDSPが次々に誕生しています。お客様の与件をお伺いし、適切な媒体をご提案いたしますので、ぜひ、お気軽にご相談ください。
インフォキュービック・ジャパンでは、DSP以外にもアドネットワーク含め、様々な広告媒体をお取り扱いしています。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。