GLOBAL MARKETING BLOG

ピックアップ 新着マーケットを知るトレンドを知る
2024年10月18日

2025年、海外マーケターが直面する可能性のある課題とその対処法

The Challenges Marketers May Face in 2025 and How to Overcome Them1

企業のグローバル展開は世界の消費者にリーチできる可能性がある一方で、毎年さまざまな課題に直面しています。特に、文化的な違い、消費者の認識、ブランドイメージの構築、国際流通の障壁、価格設定、品質管理など、これらの要素はグローバルな市場で生き残るために克服しなければならい重要な課題です。加えて、マーケティングの状況は絶えず変化しており、急激な変化はある日突然にやってきます。

2025年まであと2か月。

来年に向けた戦略を再考し、戦術を強化するために、本記事では2025年にマーケターが直面する可能性のある8つの課題とその対処法をご紹介します。

 

目次

 

課題1:最新テクノロジーへの適応

21世紀のテクノロジーブームは、さまざまな分野に革命をもたらしています。拡張現実(SR)、5G、ブロックチェーン、機械学習やインテリジェントオートメーションなど、かつて SF の世界でしか見られなかった技術が、現実となり、今後の実社会に組み込まれることで社会構造を大きく変革すると期待されています。

中には、時代の変化の速さに適応するのが難しい…と感じている人もいるかもしれません。
しかし、この急速な技術革新に適応できるかどうかによって、今後のグローバル市場における成功を左右すると言っても過言ではありません。これは単に最新のツールを導入すればよいという単純な話ではなく、これらの技術が消費者の消費行動や価値観にどのような影響を与えるかを理解し、適切な戦略を設計することが不可欠です。

先進的なテクノロジー企業とのパートナーシップを築くことはもちろんですが、継続的な学習機会を設け、トレーニングや研究開発への投資に注力することで、競争優位性を維持することが可能となるでしょう。

 

課題2:厳格化するプライバシー規制とデータセキュリティ

デジタル時代において、プライバシーやデータセキュリティへの関心は急速に高まっています。特に海外では、データプライバシーと消費者データの使用が、企業を信頼する上で重要な要素として考えられています。消費者の80%近くが「データの使用方法に関する透明性が企業を信頼する上で重要である」と回答している調査結果もあるほどです。

プライバシー規制の厳格化が強化された背景には、イスラエルの企業 Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)が関与した、2016年のEU離脱(Brexit)を問う国民投票の選挙運動や米国大統領選挙におけるFacebookデータの不正使用疑惑があります。この事件では、Facebook経由で収集されたデータを基に、個人のパーソナリティを推論するアルゴリズムが作成され、推論されたパーソナリティの情報が選挙運動に利用されたというものでした。この問題が報じられると、米国や英国で大きな社会問題となり、企業による個人データの利用に対する世界的な懸念が広がるきっかけとなりました。国立国会図書館_Wrongful Use of Personal Information in SNS: The Case of Cambridge Analytica )

その結果、EUの一般データ保護規則(GDPR)や、カリフォルニア州のプライバシー権利法(CPRA)など、世界でプライバシー規制が強化されています。特に近年では、バイデン政権下においてAI の安全性とセキュリティに関する新たな基準を定めた大統領令が発令されたり、世界初の人工知能に関する包括的規制 EU AI法(The EU Artificial Intelligence Act)が可決されるなど、AIガバナンスに関する議論も進んでいます。

2025年はさらに規制強化に向けて動くと予想されており、企業はデータの適切な利用と消費者のプライバシー保護に対する責任を一層強化することが求められています。特に海外でのマーケティング活動に取り組むにあたり、変化する規制に対応できる法的専門家や信頼できる代理店から最新情報を入手できる体制を整えることが、今後ますます重要になってくるでしょう。

 

課題3:Cookieは廃止されるのか、されないのか…

データの透明性や制御向上などの規制拡大が取られてきた「Cookie 問題」。私たちマーケターは、2019年から「2025年初頭からCookieが廃止される」と言われ続け、さまざまな対策を講じてきました。しかし、2024年7月に Cookieの廃止を撤回することがひっそりと発表され、大きな転換点を迎えました。

これは私たちマーケター、とりわけ広告運用者にとって朗報ではあるものの、世間のデータ保護への関心の高まりや実際の規制が緩くなったわけではありません。

今回の「Cookie廃止の撤回」は、Cookieの代替案「プライバシーサンドボックス」に対して、英国の競争・市場庁(CMA)や広告業界のから反発を受けての方向転換とみられています。しかし、引き続きプライバシーサンドボックスAPIを提供する点や、CMAや英国データ保護機関(ICO)といった規制当局と協議を継続していくと発表している点を考慮すると、この措置は”執行猶予期間”として捉え、2025年も引き続き代替手段を探る方が賢明であることに変わりはありません。

 

課題4:常に進化するメディア環境 - 求められる柔軟性

デジタル広告は従来の広告を追い越し、今では主要な広告媒体としての地位を確立しました。2024年、世界のデジタル広告費は7,403億米ドルに達すると予測されており、2028年には9,656億米ドルに達する見込みです。

メディア環境は急速に変化しており、デジタル屋外広告(DOOH)やストリーミングTV、リテールメディアなど次々に新しいデジタルメディアが誕生し、多様化し続けています。このようなメディア環境の変化は、マーケターにとって新しい打ち手として「チャンス」の側面があるものの、変化に迅速に対応するための新しいスキルセットや予算配分の見直しなどマーケティング戦略に多大な影響を与えています。

2025年、さらなるメディア環境が変化することが予測されており、マーケティング戦略の柔軟性がますます求められるでしょう。

 

課題5:情報過多の中で、埋もれるコンテンツ、広告疲れ

現在のデジタル社会では、情報量の爆発的増加により、米国をはじめとするデジタル先進国では、日々の生活で4,000から10,000個の大量の広告に晒されていると言われています。

このような環境では、ユーザーはダイレクトに「広告」と感じるものに否定的な感情を抱き、無意識に避ける傾向にあるため、単に「広告を出稿すれば良い」「流行りのコンテンツを制作すればよい」という考えでは、成果に結びつくことが難しくなっています。

ユーザーの広告に対する嫌悪感を払拭するためには、より洗練されたアプローチを再考する必要があります。ユーザーを惹きつける魅力的なコンテンツは、企業やブランドの付加価値を高めます。真に価値あるコンテンツを届けることで、ブランドに対する好感度を高め、企業にとってより多くのビジネスチャンスを生み出す可能性があります。

コンテンツはターゲットユーザーにとって「見るべき価値あるもの」であり、ユーザーの興味や好みにマッチしたパーソナライズされたコンテンツが必要不可欠です。マーケター自身が「価値あるコンテンツ」とは何なのか、作成するにはどうすればいいのかについてしっかりと理解し、定義しておく必要があるでしょう。

 

課題6:次々に誕生するSNSプラットフォームへの適応

海外マーケティングにおいて SNSは、ユーザーと繋がりを構築するための強力なツールの一つです。しかし、SNSプラットフォームは、移り変わりが激しく、次々に新しいプラットフォームが誕生し、消費者のニーズや関心も多様化しているのが近年の特徴です。

例えば、かつてアメリカの10代の70%が使用していた Facebook は、現在では10代の割合は 33%まで落ち込み、若者離れが加速しているのは有名な話です。その変わり、TikTokやSnapchatやInstagramが主流になっています。

また、数年前に爆発的な人気を誇った Clubhouse は、FacebookやSpotifyなど他の大手プラットフォームが音声チャット機能を迅速に導入したことや、収益化戦略が遅れたことで、人気のクリエイターがプラットフォーム離れを起こし、流れがいっきに変化しました。
2023年にMetaが導入したThreadsも、Xの代替えプラットフォームとして登場し、リリース当初は爆発的に普及しましたが、約2ヶ月でユーザーが82%減少した時期があったほどです。

ユーザーの移り変わりが激しいSNSの世界では、「数ヶ月後、一年後にはユーザー層が全く変わっていた!」なんてことも起こってしまいます。こうした急激な変化に対応するためには、常に新しいプラットフォームを研究し、最適な選択を行うことが求められます。

 

課題7:持続可能性と倫理的なマーケティング

消費者の社会や環境に対する意識が高まるにつれ、持続可能かつ倫理的なマーケティングはますます重要になっています。

従来のマーケティングでは「商品やサービスをいかに魅力的に魅せて売り上げを伸ばすか」に重点が置かれてきました。しかし、2008年のリーマンショックをきっかけに、「利益だけを追求する企業」に対して、多くの批判が高まり、倫理観や社会への貢献度を重視する傾向が強まっています。

NilsenIQの調査によると、ミレニアル世代の73%は、「倫理的で社会的責任を重視するブランドから商品を購入する意思がある」と回答しています。さらに、Hotwireが実施した大規模調査では、世界のインターネットユーザーの47%は、「環境保護・透明性の欠如・データセキュリティ」など企業倫理に関連した理由で「ブランドや製品を切り替えた」と回答しています。

今後、企業の利益追求だけでなく、「企業の倫理観・社会的責任」を反映させたマーケティング戦略を展開することがグローバルスタンダードになっていくでしょう。

 

課題8:グローバルチームのリスクマネジメント

2025年におけるグローバルチームのマネジメントでは、従来の文化やタイムゾーンの違いに加え、戦争や地政学リスクといった外的要因も考慮しなければなりません。地政学的な緊張や紛争が世界各地で高まりを見せており、それは企業のグローバル展開やチームマネジメントに直接的な影響を及ぼします。

グローバル展開を行う上で、サプライチェーンの混乱や物流の停滞、エネルギー供給の不安定化などは経営戦略上考慮すべき点ではありますが、マーケターであっても、こうした外部リスクを十分に評価し、危機時における代替手段やリスク分散策を事前に用意しておく必要があります。

地政学的リスクとは以下のものが含まれています。

地政学リスクとは_インフォキュービック・ジャパンにて作成3

さいごに

2025年に向けて、マーケターが直面する課題は複雑で多岐にわたりますが、それらを乗り越えるためのアプローチは確実に存在します。大患難を乗り越えるためには、マーケターは絶えず学び、変化に対処する準備を整えながら、次世代の消費者に向けたマーケティング活動を成功に導いていくことが求められています。

バナー_ご支援事例ページ遷移

吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。