GLOBAL MARKETING BLOG

理論的に学ぶ
2019年12月12日

「日本と海外の商習慣、10の違い」
~意思決定、契約、ハラル~

エン・ジャパン株式会社が運営する、派遣型のアルバイト”を集めた求人サイト『エンバイト』において実施された調査「外国人と働いたことがあるか」によると、約6割の人々が外国人と一緒に働いたことがあると回答しました。「困ったことはありますか?」との質問に対しては、コミュニケーションの問題を上げる人が多かったようですが、仕事に対する価値観、仕事内容・進め方の違いなどを挙げる人々も目立ちます。日本人と外国人の働き方の相違はよく取り上げられる問題ですが、会社のマーケティングを担うマーケターは、これらの違いをよく理解した上で仕事に臨むことが重要となります。そこで本記事では、グローバルマーケターが特に気をつけるべき、日本と海外のビジネス慣習10の違いについて紹介します。


外国人と一緒に働く際に困ったこと(エン・ジャパン調査より)

 

1.金額表記の違い・税の記載方法や有無

国ごとに金額表記が違うことは当然ですが、記載の仕方も異なります。「円」表記の場合は、¥10,000と表記するのが一般的ですが、例えば「ドル」表記の場合は$10,000.00と「セント」を加えた形で表記するのが一般的です。数字の数だけで判断してしまうと大きな間違いに繋がりますので、十分注意してください。また、円表記の際には税別か税込かがわかりやすく記載されている場合が多いですが、海外では各国のルールにより税別で記載されるのが当然であったりします。さらに、国によっては付加価値税(日本の消費税)が存在しない国もありますので、お金のやり取りをする際にはターゲットとする国の金額表記のルールをしっかりと確認する必要があります。

 

2.有給による長期休暇や時短勤務による不在

時差が存在したり、国によって祝日が異なることは当然ですが、海外では有給の日数が非常に多かったり、勤務時間を自由に変更することができるなどの特徴もあります。そのため、日本から緊急の案件があっても、担当者がすでに帰宅していたり、長期休暇を取っていたりということが度々起こります。また、日本人は勤務後や土日に受け取ったメールに対し即座に返信する場合が多いですが、海外では、公私がしっかりと切り分けられているため、次の勤務日まで仕事関係のメールを確認しない人が多いです。大切な連絡は、時間に余裕を持って行いたいところです。


世界の有給日数と消化率(参照

 

3.決定を下すまでのルート・スピードの違い

その一方で、相談から決定までが非常に早いのも海外の特徴。日本では、すばらしい案が考案されても、それを上司に相談し、会議に上げて議論し・・・といくつものプロセスを経る必要がありますが、海外では個人がより広い権限を持っていることが多いため、担当者の一存で決定する事項も多々あります。そのため、海外の企業ではすでに許可が降りているのに、日本側の会社の承認が下りないために、相手を待たせてしまうといったことが頻繁に生じます。大きな契約を逃すことがないよう、スピーディーに決断できる導線を作っておくことも重要です。

 

4.担当者の変更は日常茶飯事

海外では、転職は個人がよりよい仕事に就くための重要な手立ての1つです。担当者としっかりとした関係が作れていたと思っていても、その担当者が急遽変更になるということは度々発生します。転職の場合は引継ぎをしっかりしてもらえるため問題はないのですが、より大きな問題は社員の解雇によるもの。アメリカでは、解雇を言い渡された社員はその日のうちに会社を後にしなければならない場合もあるため、引継ぎが全くされずに担当者が変わるという可能性も大いに考えられるのです。

 

5.メールでの約束は簡単に覆る?確実に契約書にサインをもらうこと

日本では、メールでのやり取りや口頭での約束であっても、それらの決定が覆ることはそうそうありません。しかし、海外では、契約書のような法的に影響力のある証明書がない場合、すでに決まった約束が簡単に覆ることがあります。常に好条件での契約を探している海外の企業は、口約束の後によりよい契約先が見つかった際には、そちらの企業との契約を取り付けるというのはよくある話です。契約書の手続きを取り交わすまで、気を抜かないことが重要です。

 

6.日本のトレンドが通用しない

日本は高齢者の割合が非常に高い、インターネットの利用時間が非常に短い、InstagramやTwitterなどのSNSを利用する割合が世界と比較して低いなど、世界の中でも非常に珍しい国です。そのため、日本のトレンドが世界のトレンドに直結するかといえばそうではありません。むしろ、日本の常識は世界の非常識と考えておいたほうが良いでしょう。そのため、海外マーケティングを行う際には、日本人視点ではなく外国人視点で物事を考えるようにしてください。

 

7.ハラール認証

現在、世界で18億人(世界人口の約24%)といわれるイスラム教徒は、一般的には宗教の関係でハラールフードしか食べることができません。そのため、食品を製造するすべての過程で条件をクリアしたことを示す『ハラール認証』の重要性が世界中で増しています。もしあなたが食品を扱う企業のグローバルマーケターであれば、ハラール認証の取得の有無が今後の収益に大きな影響を及ぼすかもしれませんので、検討する価値は大いにあるでしょう。


世界各国のハラル認証(参照

また、Pew Research Centerのレポートによると、2050年までにイスラム教徒はキリスト教徒の人数とほぼ同数の27.6億人(世界人口の29.7%)になると言われています。

 

8.固有名詞の表記問題

世界において、固有名詞の表記に注意を払うべきものがいくつかあります。

例えば、ペルシャ湾とアラビア湾の名称に関するペルシア湾(アラビア湾)呼称問題です。国際的な名称であるペルシア湾を支持するイランと、アラビア湾を支持するアラブ諸国の間で発生しているこの呼称問題は、国際問題として扱われています。日本とつながりが深いところでは、台湾の名称に関するものが挙げられます。以前、中国は世界の航空会社に対し、台湾を中国台湾と表記するように通達を行い、大きな議論を生み出しました。これらの表記問題は、世界的にみてもそれほど多くはありませんが、グローバルマーケターであれば熟知しておきたいところです。

 

9.広告方法の違いおよび多様性

世界のインターネット事情は国ごとに様々です。大きな売上を得るために広告を行う際、SNSや検索エンジンを活用した広告マーケティングが効果的な国もあれば、テレビコマーシャルや商店街での広告が効果的な地域もあるなど、その実情は様々です。つまり、ターゲットとする国や地域の実情をよく理解し、その国や地域にローカライズした戦略を練ることが重要になります。

 

10.国ごとのNG行為を理解する

商談の際、両者の関係をより良くしようと雑談を挟むこともあるかと思いますが、国ごとに暗黙の了解があることに気をつけましょう。宗教的な話が禁忌なことは比較的よく知られていますが、中国では政治に関する話がNGであったり、イギリスでは13日や金曜日の商談成立を避ける傾向があるなど、国ごとにルールや暗黙の了解があります。相手との関係を築くための雑談が、仕事の成功を妨げてしまうのはなんとも悲しいものです。相手の国の事情を知った上で雑談を楽しむことが望ましいでしょう。

 

終わりに

本記事では、グローバルマーケターが特に気をつけるべき、日本と海外のビジネス慣習10の違いについて紹介しました。マーケティングに関する深い知識と経験はもちろんのこと、グローバル人材として活躍するためには、世界のことをより深く知ることが重要になります。これまで数多くの海外企業に携わってきた弊社には、海外マーケティングに役立つ多くの知識と経験が蓄積されています。

海外における商習慣や文化を理解した、海外マーケティングに興味がありましたら、ぜひ私たちにご相談ください!

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吉田 真帆

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー

コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。