国・地域によって異なる”色”の嗜好性
~多言語サイトをつくるときの一工夫~
私たちの身近に存在する「色」。色が私たちの感情に大きく影響を及ぼすことは、色彩心理の観点からも良く知られています。そのため、好きな色がベースとなるウェブサイトや動画に対する顧客の反応は好意的な印象となり、逆に嫌いな色がベースとなるウェブサイトや動画に対してはネガティブな印象になる傾向があります。
海外デジタルマーケティングを進める際、ターゲットとする国の人々の色の好みを知ったうえで多言語グローバルサイト制作や多言語グローバル動画制作など、海外向けコンテンツを制作することは、非常に大切です。本記事では、多言語グローバルサイト・動画をつくる上で重要となる“色”に関する情報について紹介します。
国・地域によって異なる‟色”の嗜好性
では、国・地域によって異なる「色」の好みの傾向とはどのようなものなのでしょうか?世界6企業の「色」に関するデータをまとめました。
日本人が好きな色と嫌いな色
色の嗜好の統計データを扱う「色カラー」は、ネット上で日本人の色の好き嫌いについてアンケートをとり、約8万件のデータを集めました。
日本人が「最も好き」回答した色は以下の通りです。
1位「青」 2位「桃」 3位「赤」
その一方で「最も嫌い」と答えた色は以下の通りとなりました。
1位「桃」 2位「紫」 3位「金色」
以下の図は好きと答えた人と嫌いと答えた人の差をまとめたものになります。
<参照:色カラー「差分支持率」>
また、色カラーは「都道府県別の色の好き嫌い」についてもまとめています。
色の好き嫌いは、生まれ育った都道府県のイメージ(特徴的な花や果物、建造物、機構、祭りのカラーなど)の影響を少なからず受けているようです。
こちらのデータも国内向け動画やサイト制作の際などに、活用出来るのではないでしょうか。
国・地域別に見た好きな色
宗教・言語・慣習などが異なる海外の国々においては、色の好みが日本人とは全く異なります。多言語グローバルサイト制作や多言語グローバル動画制作を行う際に活用できる「世界の国・地域別の好きな色」についてご紹介します。
まずは、全体像から見ていきましょう。
下記の図は「YouGov」が行った、世界4大陸・10か国に住む人々に対して「最も好きな色は?」という調査を実施した結果です。
<参照: YouGov 「Why is blue the world’s favorite color?」>
なんと調査を行った10か国すべてにおいて「青色が最も好き」という結果でした。
2位には多くの国で「赤」が選ばれており、「緑」・「紫」についても比較的上位にきていることがわかると思います。日本で2位であった「桃」は、いくつかの国では中間あたりの順位に入っていますが、多くの国においては上位にランクインする色ではないようです。
また、下図は、日本の色彩学の第一人者であり武蔵野美術大学造形学部教授でもある千々岩秀彰氏が報告した「色と心理」において「世界各国で好まれている色の一覧」です。
<参照:色と心理「世界各国で好まれている色の一覧」>
調査方法が異なるため、いくつかの国において上記の図とは異なる結果が出ていますが、やはり「青」が突出して好まれており、「赤・緑」などが後に続くというのは共通しています。
また、興味深いのは、オランダやフィンランド・ドイツ・フランスといったヨーロッパ諸国において「橙」が非常に人気であることです。西洋では「橙」は収穫や実りと関連していると言われており「橙」を選ぶ人が多くいたのでしょう。また、ラオスやインド・バングラディッシュといったアジアの国々において「白」が人気であることも興味深いデータとして読み取れます。
千々岩秀彰氏は、このように国や地域によって好む色は様々だと述べたうえで、トータルにみると国や地域による明らかな色の好みは結論付けられないと締めくくっています。
Wisemetrics によるFacebookユーザーに対して好きな色を尋ねた調査によると、「Facebookユーザーの色の好みを国別に見た」場合、ヨーロッパでは「赤」や「橙」が人気で、アメリカやカナダでは「黄系統」が人気となる結果となりました。(中国やロシアではFacebookの利用が制限されているため、海外に住む中国人、ロシア人が対象になっています。)
色の好みは世界各国また地域によって様々であることがわかります。多言語グローバルサイト制作や多言語グローバル動画を作成する際には、ターゲットとする国の人々が好む色を踏まえたうえでクリエイティブ制作を行うことで、より効果的なサイトや動画を作ることができるのではないでしょうか。
世界で人気の「デジタル画像の色」
世界の国々や地域で、好きな色が異なることがわかりました。それらの色を効果的に利用することで、顧客によりよい印象を与えることができるでしょう。しかし、世界中で愛される色が「青」だからといって、単純にウェブサイトや動画を青色ベースに組み立てればよいのか、といえばそうではありません。
では、多言語グローバルサイトや多言語グローバル動画を制作する際には、どのような色を利用すればよいのでしょうか?
この答えは「商品やサービスのコンテンツ」「ターゲットとする顧客層や地域」「ブランドのイメージカラー」なども関係するため、一概には言えないのが現実です。しかし、世界最大規模の画像プラットフォーム「Shutterstock」の調査「Discover the World’s Most Popular Colors」によると、ダウンロードするデジタル画像の色に関し、国ごとの大きな特徴があるというのです。これらの色を効果的に利用することで、顧客にポジティブな印象を与えることができるでしょう。多言語グローバルサイト・動画制作時の大きな参考になるかと思いますので紹介します。
<shutterstock:Discover the World’s Most Popular Colors>
Australia:#000080
Brazil:#006400
Germany:#00CED1
Japan:#FFF0F5
Korea:#2E8B57
Taiwan:#808000
Thailand:#800080
United kingdom:#DDA0DD
United States:#32CD32
多くの国が鮮やかな色を好んでいるのに対し、日本は「白」を基調とした画像を好むというのは、非常に興味深いところです。そのため、日本では白を基調としたウェブサイトが多いのは道理にかなっているといえますが、それは日本の基準であって、世界の基準ではないことを理解する必要があります。
海外デジタルマーケティングを軌道に乗せるためには、ターゲットとする国で愛される色を理解し、それらの色を効果的に活用していくことで、ターゲットとなる国や地域に愛されるウェブサイトへの第一歩へ繋がるのではないでしょうか。
さいごに
「色」はブランドを構築するうえで欠かせない重要な要素です。ユーザーが受ける印象に大きく影響を与えることを理解し、ブランドとしての”色”を活用しましょう。ブランドの価値、信念、目的などを視覚的に、魅力的なウェブサイトを通して伝えることができます。ぜひ、色の重要性を理解し、海外マーケティングにお役立てください!
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。