Z世代向け海外デジタルマーケティング戦略!
Z世代に共通する7つの特徴~
アメリカでは、人々の特徴を表す表現の1つとして、「generation(ジェネレーション:世代)」を用いることがあります。日本語で「ゆとり世代」や「さとり世代」と言えば、ピンとくる方も多いのではないでしょうか?日本では「世代」は学習指導要領の変遷に伴った「教育」の影響が最も大きな要因と考えられる傾向にありますが、アメリカでは教育だけでなく、「社会や経済との関連性」が強く強調される傾向があります。
数年前まで、このマーケティング業界では「ミレニアル世代にアプローチするには?」と、散々研究されてきましたが、近年は新しい消費者となる「Z世代」へと対象が変化してきています。
Z世代は「デジタルネイティブ」と言われ、インターネットの無い生活を知りません。ミレニアル世代が「デジタル」と表現されるのに対して、Z世代は「テクノロジー」とともに成長した、最初の世代であり世界中で注目されている世代です。
海外向けのマーケティング施策を検討する際には、国や地域が異なることで言語や文化の違いが避けられないのと同じように、「世代」の違いも考慮する必要があります。この記事では、Z世代への理解を深め、Z世代への最適なマーケティング戦略とは何かを考察していきます。
目次
Z世代とは?
Z世代は1996年頃~2010年代に生まれた人々のことを指し、「 ジェネレーションZ(Generation Z)」と呼ばれています。Z世代は、現在の13~27歳あたりの年齢の人々を指していて、今後”労働者”としても次世代の”消費者”としても「世界の中心層」になっていく世代であるため、世界中で注目されている世代の1つです。
日本では15%程度であるのに対し、世界では人口の26%、20億人ほどを占めていると言われています。
この世代はネットバブル崩壊、リーマンショック、9.11テロなどの時代背景を持ち、iphoneが発売され、FacebookやYouTubeといったソーシャルメディアプラットフォームが徐々に市場に浸透していくとともに成長しています。小さいときからインターネットや携帯電話を利用して育ってきたため、インターネットのない生活は経験したことがなく、” 常時オン” のテクノロジー環境で「真のデジタルネイティブ」と呼ばれています。
Z世代に人気のソーシャルメディアは?
今後、世界経済の中心層となっていく「Z世代」は、どのソーシャルメディアにいるのでしょうか?
米国における13歳~25歳までを対象としたMoringConsultの調査によると、Z世代がもっとも時間を費やしているプラットフォームは以下の結果となりました。
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- YouTube(88%)
- Instagram(76%)
- TikTok(68%)
- Snapchat(67%)
- Facebook(49%)
※Survey conducted Nov. 2-8, 2022, among a representative sample of 1,000 U.S. Gen Zers between the ages of 13 and 25, with an unweighted margin of error of +/-3 percentage points.
加えて、eMarketerのソーシャルメディアユーザー統計でもSnapchat、Instagram、TikTokといったソーシャルメディアが上位を占めており、同様の結果が出ています。(下記の調査にはYouTubeは含まれていません。)
〈eMarketer_US Gen Z social media user, by platform,2020-2025>
この2つの調査結果から、写真や動画といった”ビジュアルコンテンツ” を好んでいるということがわかります。Z世代は広告ブロッカーを利用している割合も高いため、Z世代にとってビジュアルコンテンツは、単に「メッセージやコンセプトが可視化されていれば良い」ということではなく、あくまでコミュニケーションツールという位置付けです。いずれもコミュニケーションが双方向であり、なおかつ、個性や創造性を発揮することができる自由度の高いソーシャルメディアが人気を集めています。
Z世代とソーシャルコマース
ソーシャルメディア上で見つけた商品やサービスをその場で購入することを可能にしたソーシャルコマースは、これまでSNSマーケティング施策の主流であったSNS広告以上のマーケティング効果が期待できる重要な潮流です。
ソーシャルコマースでは、何らかのコンテンツをきっかけにユーザーの購買意欲が喚起されれば、そのまま購買手続きに移れることから、「欲しい」と思った気持ちが冷めないうちに購入フェーズまで達することができます。この仕組みがコンテンツに対する「共感を起点に自発的に買い物をする」というZ世代の傾向にマッチしていることから、ソーシャルコマースへの需要は非常に高まりを見せています。
Forbesが行った調査では、Z世代の97%がソーシャルメディアを利用して買い物をしており、45%のZ世代がソーシャルメディアを見た後にそのまま購入した経験があると回答しています。
Z世代の「7つの特徴」
Z世代の特徴や傾向はさまざまですが、主にZ世代の特徴とされている7つは以下のようなものがあります。
1.パソコンやモバイルデバイスの利用に長けている
Z世代が他の世代と異なる事象の1つとして、「生まれたときからデジタル機器に囲まれて育っている」ということが挙げられます。
1991年に世界で初めて”ウェブサイト” が一般向けに誕生して以降に生まれたZ世代は、子どものころから学校でインターネットを学び、プライベートでもインターネットの繋がったデバイスを使いこなしてきました。そのため、Z世代の98%はスマートフォンを所有し、その他インターネットに繋がったデジタルデバイスを抵抗なく容易に使いこなしています。
2.コミュニケーションの中心は「SNS」
友達や家族とのコミュニケーションのほとんどはソーシャルメディアを通して行われます。
例えば、面白い商品を見つけたとき、一昔前は人から人へ会話によって拡散されていましたが、現在ではSNSを通して話題が拡散していきます。その際、Z世代は「企業名」や「商品名」を文字として打ち込むことはありません。多くの場合、写真や動画、または商品や企業のURLを貼り付けることで紹介、拡散しています。
3.買い物の中心はオンライン
オンラインショッピングが便利になるにつれ、食料から生活必需品までほぼ全てのものがオンライン経由で購入できるようになりました。近年、主要ソーシャルメディアでも、ソーシャルメディアからダイレクトに商品が購入ができる「ショッピング機能」が実装され、多くのユーザーはこの機能を利用しています。デジタルネイティブであるZ世代も例外なく、この機能を活用しています。
2022年、アメリカにおけるソーシャルコマースの購入者は、9,720万人以上を超えており、2025年までに8兆円市場まで成長すると言われています。また、主要ソーシャルメディアのほとんどがソーシャルコマースに投資しており、ソーシャルメディアの利用に長けているZ世代の利用増加も予想されています。
4.「商品購入」の決め手は、SNSの情報から
この傾向はZ世代だけに限らず、現代人の多くが情報収集にソーシャルメディアを活用しています。それに加えてZ世代では多くのソーシャルメディアを目的別に使い分け、情報の取捨選択を行っています。事実、Z世代の消費ユーザーの約97%は、ソーシャルメディアからインスピレーションを受けていると回答しています。
しかし、インターネット上では、実際の商品を見ることができず、店員さんからのアドバイスももらえない。では、どのように商品を評価するかといえば、ネットサイトに掲載されている「口コミ」や、「信頼できるインフルエンサーの推薦」です。そのためZ世代に対しては、ユーザーが生成するコンテンツ(UGC)や信頼性の高いインフルエンサーの必要性・価値が増しています。
5.インターネットの普及により、グローバルな視点を持っている
インターネットにより世界がより身近な存在になったことはいうまでもありませんが、生まれたときから自由にインターネットを利用できるZ世代は、インターネットを通して世界中から情報を仕入れることができています。
そのため、Z世代はインターネットやソーシャルメディアを通して他国の人々とコミュニケーションを取ることに抵抗が少ないことに加え、他国の製品であってもそれが優れているのであれば「購入」の選択肢の1つになるのです。今後Z世代が世界の中心になるにつれて、海外デジタルマーケティングはより身近なものになるでしょう。
6.「情報発信」に対するハードルが低い!
以前は自らが表部隊に立ち、情報を発信することはノウハウを持ったごく一部のユーザーに限られていましたが、昨今ではSNSを通じて、それらの人々の投稿を見たり、チャット機能を活用してコミュニケーションを容易に図ることが可能になっています。
YouTuberやブロガーはもちろんのこと、誰でも簡単に投稿ができるTikTokなどが爆発的に人気となり、「個人主体の情報発信」のハードルが極端に低くなりました。(TikTokなどは利用者の半数近くが”投稿者”と言われています。)
7.環境問題や社会的差別などへの関心が強い
環境問題や差別問題が大きくピックアップされる中で育ったZ世代は、環境問題や社会的差別などへの関心が強いといわれています。実際、アメリカのカミソリ会社がリリースした社会への問題提起を投げかける動画が2019年に炎上するなど、興味のあることに関しては非常に大きなパワーを発揮するのがZ世代の特徴です。一度火がつけば、いい意味でも悪い意味でもSNSを通して爆発的に広がるため、あらゆるシナリオを想定して危機管理対策を準備しておく必要があります。
効果的な海外向けデジタルマーケティング戦略、8つのポイント
生粋のデジタルネイティブであるZ世代は、これまでの世代には無い新鮮な価値観を持った世代です。ここからは、Z世代に対して効果的なデジタルマーケティング戦略を策定するためにおさえておくべき8つのポイントについて解説していきます。
1. 明確な価値観と使命を伝える
Z世代は、社会的課題の解決に対して強い想いを持っており、自身も何らかの形で解決に携わりたいという思いが強い傾向にあります。企業やブランドに対して「社会的責任」を問う姿勢が強く、様々な問題に対して積極的に行動を起こす企業・ブランドの商品を選択する傾向が高くなります。
モノ・情報が溢れた現代社会を生きるZ世代は、「この商品を購入することで何に貢献できるのか」「このブランドは自分の価値観を体現するにふさわしいのか」など、商品の向こう側にあるものを推し量っているのです。
2.視覚的に目を引くコンテンツを活用する
Z世代は素早く情報を取捨選択する傾向があり、その時間はわずか「8秒」程度です。これは、ミレニアル世代と比較して4秒も短く、非常に短い時間で興味・関心を惹きつける必要があるということがわかっています。
<Forbus_Generation Z: 10 Stats From SXSW You Need To Know>
Z世代が短編動画コンテンツを好む傾向があることを考慮すると、Z世代をターゲットとする場合、Instagramストーリーや、YouTubeショート、TikTokといったプラットフォームを検討する必要があるでしょう。
Tik TokやYouTubeには、オーバーレイなどの様々な「視覚的エフェクト」と「音楽」を用いた、「ショート動画」というZ世代のビジュアルコミュニケーションに欠かせない3つの要素が全て含まれています。
3.インタラクティブなコンテンツを活用する
Z世代にとってソーシャルメディアは「コミュニケーションツール」です。企業が発信するコンテンツは単に情報発信というスタンスではなく、「企業⇔ユーザー」の交流が図れる設計である必要があります。
ソーシャルメディアの投票機能はその代表的な事例です。そのほか、クイズを掲載したり、コンテストなどユーザー参加型キャンペーンを実施することで、企業との関与を促進するだけでなく、活用方法によっては新しいアイディアの発見につながることもあります。
他にもコンテンツが商品の製造過程や開発秘話などの舞台裏を紹介する内容であれば、より一層、共感や一体感を生むことができるでしょう。
4.適切なタグを活用する
ソーシャルメディア戦略における「タグ付け」は、「共感」を大切にするZ世代に対するソーシャルメディアマーケティングにおいて重要な役割を果たします。#(ハッシュタグ)はプラットフォーム上に存在するコンテンツを同じハッシュタグで集約することが出来るため、ユーザーは特定のトピックに関する投稿を簡単に見つけることができるのです。タグ付けに特別なルールはありませんが、代表的なタグの付け方としては以下のようなものがあげられます。
- ブランド名
- 位置情報
- イベントやキャンペーン名
ブランド名のタグ付けはアパレルブランドでよく見られるタグ付けで、例えば、ユニクロのコーディネート投稿であれば「#ユニクロコーデ」などの共通タグでコンテンツが一括表示されます。位置情報のタグ付けでは、町の名前からテーマパーク内のアトラクション名まで、様々な形で投稿の位置情報がわかるタグを付けることで、場所を軸とした検索にヒットするようになります。例えば、旅先の街の名前タグで検索して、その街のおすすめスポットを見つけるといった使い方が代表的です。イベントやキャンペーン名のタグ付けは、ユーザーを特定のコンテンツに参加することを促す目的で行われることが一般的で、新規顧客への拡散効果が高いタグ付け方法です。
このタグ付けの成功例としては、コカコーラが行った「#Share a Cokeキャンペーン」により、発売開始5週間で全世界1億本以上売り上げるという快挙を成した例が代表的です。
タグ付けは、共通のタグによって企業もブランドも個人ユーザーも一緒になってグルーピングされることで、同じ価値観や世界観をシェアしている一体感が生まれるというメリットがあります。投稿内容や目的、ターゲット層に応じて適切なタグを付けることで、コンテンツを的確にターゲットに届けることが可能となるのです。
各プラットフォームの最新の人気のハッシュタグは、各プラットフォームが提供しているアナリティクスや、無料ツールなどで誰でも簡単に確認することができるため、トレンドをチェックしておきましょう。(TikTok、Instagram)
5.透明性と説明責任を果たす
Z世代は、広告やプロモーション動画の表層的なメッセージよりも、企業やブランドが自分たちの責任を果たすためにどのような行動をとっているかということに目を向けます。企業活動の正当性や倫理性が担保されることは、Z世代からの「信頼獲得」へと繋がることから、企業・ブランドには事業や活動の透明性を高めることが求められています。
事実、Statistaの調査によるとZ世代の45%は、「信頼ができて、透明性が高いと感じる場合に、新しいブランドと関わりたいと思う」と回答しています。つまり、単に良い商品・サービスといった理由だけでなく、ブランドとしての価値観がエンゲージメントへの大きな動機となることが示されています。
バス・スキンケア用品を製造販売しているLush は、2021年「SNSプラットフォームは安全にユーザーが使える環境が整っていない」という理由から、Facebook・Instagram・TikTok・SnapchatなどのSNSを利用しないと決断し、世界中で話題となりました。その際、Instagramのアメリカアカウント単体だけでフォロワー数が400万人以上存在していたことを考えると、非常に大胆な決断である反面、「顧客の安全を最優先した選択である」とさらに、ファンとの信頼関係を強めました。
6.コミュニティを構築する
Z世代に向けたマーケティング戦略では、「本物のつながり」を感じることのできるデジタルコミュニティ構築は不可欠です。
コミュニティをベースにしたデジタルマーケティングは、企業やブランドが同じような「興味・関心・価値観」を持つ人々を集め、コミュニティを構築し、参加しているメンバーと積極的にコミュニケーションを取り、メンバー同士の交流を促しながら、メンバーを通じた情報発信を促すといった近年話題のマーケティング手法です。
コミュニティの構築は、企業と顧客の強い繋がりを実現し、長期的なブランド認知を向上させる最良の方法の1つです。良質なコミュニティを構築し、目的を持って管理していくことで、ブランドの評価を高め、ロイヤリティの高い顧客を継続的に育成することができます。
7.インフルエンサーやコンテンツクリエイターを活用する
インフルエンサーマーケティングは、Z世代に向けて自社の製品やサービスを、より多くの視聴者にリーチする優れた戦略の1つです。Z世代は、自分の行動や意思決定がインフルエンサーから影響を受けていることを自覚しており、それでも尚、ユーザーはインフルエンサーの言動に対して高い信頼を抱いている傾向にあります。
実際にZ世代は、他のどの世代よりもインフルエンサーをフォローしている割合が高く、調査対象者の65%が、インフルエンサーのおススメに基づいて何かを購入した経験があることも明らかになっています。
<Morning Consultant_INFLUENCER REPORT>
インフルエンサーやある業界に精通したコンテンツクリエイターは、ユーザーの好奇心と購買意欲を掻き立てながら、共感・同調を育み、ユーザーを特定商品の購入や具体的なアクションへと導くことに長けています。インフルエンサーやコンテンツクリエイターを介してマーケティング活動を展開することで、ブランドメッセージの拡散とターゲット層の売り上げ向上、新規顧客の獲得までがスムーズに進められるのです。
8.顧客からのレビューやフィードバックに耳を傾ける
レビューや口コミ、フィードバックは、ブランド価値と社会的信頼の向上や、潜在的な新規顧客の育成に大きく貢献することから、マーケティング戦略の一環としても高い効果を生み出します。ソーシャルメディア管理ツールSprout Socialのレポートでは、Z世代の82%が他のユーザーによるレビューを読んでから購入に進む傾向にあることが明らかになっています。
ユーザーの生の声を活用してZ世代の購買意欲を掻き立てるためには、企業はそのブランドに対するどんなレビューやフィードバックに対しても、真摯に返信する姿勢を貫かなければなりません。トラブル・謝罪対応を見て、Z世代はその企業が信頼に足る企業かどうか推し量っているように、ネガティブなレビューやフィードバックに対しても、誠意ある姿勢を崩さないことでブランドへの社会的信頼は格段に高まるためです。
レビューやフィードバックを効果的にマーケティング戦略の一環として活用するのであれば、 Sprout Socialのようなレビュー管理を支援してくれるツールを導入することも検討してみると良いでしょう。
さいごに
Z世代は、生まれた時からオンライン上でのコミュニケーションが当たり前であったことから、他人との関係の築き方やコミュニケーションに対する価値観において特有の傾向を見てとることができます。そんなZ世代に対するマーケティング戦略においては、企業やブランドはかつてないほどターゲットと親密に交流し共感・同調することが求められています。「本物のつながり」や「社会的課題」を満たすことの重要性は今後も一層高まることが予想されます。
インターネット上に情報が溢れる現在では、デジタルに精通したZ世代に対しては、一方的なマーケティングだけでは選んでもらうことが難しい時代ともいえます。そうしたなかで「数ある世界のブランドのなかで選んでもらい、ブランドを愛してもらう」ために必要となるグローバルマーケティングにお困りでしたら、ぜひインフォキュービック・ジャパンにお声掛けください!
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。