ヨーロッパEC市場の現状
~コロナで変化した購入品、市場規模~
新型コロナパンデミック騒動以前のヨーロッパのeコマース市場は年々成長傾向にありました。しかし、コロナの影響により市場が大きく変化を強いられました。この時期に新しい市場に参入する事は、難しいように思えるかもしれませんが、しっかりと調査を行いローカライズする事でこのような時期でもビジネスを拡大する事が出来るはずです。
そこで今回は、アジア、アフリカに次いで7億人以上の人口を抱え、世界で最大かつダイナミックなeコマース市場の1つとして注目されるヨーロッパのeコマース市場の動向をコロナ騒動による市場の影響と共に解説していきたいと思います。
コロナによって起こった「購入品の変化」
パンデミック騒動の影響によりヨーロッパでは長期の都市閉鎖を行いました。その影響により経済は一時的にストップし、小売業界は大打撃を受けました。その中でも実店舗は大きな影響を受けましたが、eコマース市場の一部の品目は急成長し、ヨーロッパの市場全体で「eコマースによって購入される品目」に大きな変化がありました。
コロナ禍でも利益を得ている品目
- 「衛生用品」
- 「食料品」
- 「家電」
利益の出ていない業界
- 「観光」
- 「輸送」
- 「イベント関係」
- 「実店舗での小売り」
<ECOMMERCE EUROPE :Corona Various Survey Report >
ヨーロッパにおけるインターネット普及率
ヨーロッパのeコマース市場の収益は毎年増加しており、2019年の売上高は6110憶ユーロに増加しました。ほとんどのオンライン売上高は西ヨーロッパで発生しており、ヨーロッパオンライン小売売上高の約66%を占めるほどといわれています。その要因の一つとして挙げられるのが、インターネットの普及率とインターネット環境の整備にあると言われています。
世界的に見てもヨーロッパのインターネットの普及率はとても高い水準となっています。
ヨーロッパでは過去数年にわたり、地域内のインターネットユーザー数が右肩上がりに増え続け、インターネットネット普及率は徐々に高くなってきています。
コロナ騒動前のデータになりますが、国連が発表したネット環境が整備されている国のスコアリング(インターネット利用率などを総合したランキング)では「上位トップ10中8か国はヨーロッパで占めている」という結果となりました。
<UNCTAD B2C E-COMMERCE INDEX 2019>
ちなみに日本は21位、全世界の売り上げ2位を誇るアメリカでさえも、13位の結果となりました。
ヨーロッパの3大eコマース市場
ヨーロッパには約50の国が存在し、全体の傾向としてeコマース市場は拡大傾向にありますが、中でも他国の規模を大きく引き離してeコマース市場が成長しているのが、イギリス、ドイツ、フランスの3か国です。
イギリスのEC市場
- 人口:6,680万人
- インターネットユーザーの割合:96%
eコマースの市場規模として中国・アメリカに次いで大きい市場規模を誇る「イギリス市場」です。
およそ6680万人の人口にもかかわらず、1億2000万人以上の人口を抱える日本を凌ぎ、市場規模は世界3位に位置しています。決して多くはない人口ながらも、イギリスが大規模な市場を持つ背景には、eコマースサイトの利用率の高さが関連しています。
一部の調査データによれば、イギリスでは実に51%ものネットユーザーが「実店舗での購入よりも、オンライン上での買い物を好む」という結果も報告されています。中でも「20代後半から30代前半のユーザー層」が最も活発にECサイトを利用しており、月平均8回の購入をしているという驚きのデータも発表されています。
イギリスで人気の大手ECサイトはAmazon、TESCO、ebayとなっており、さらに「英語を母国語」とするため、他国からの越境ECでの購入、他国サイトでの購入も盛んに行われていることも、市場規模拡大を後押ししています。その他の人気ECサイトはAsos、Argos、Play.comなどがあります。
コロナパンデミックの影響・市場の変化
コロナの影響によりインターネット市場では一時大混乱を起こしましたが、イギリスのeコマース市場において新たな変化ももたらしました。2020年、イギリスにおける「食品市場は33%増加する」と予測されています。その中で大きな変化の一つとして今回のパンデミック騒動による影響によって「65歳以降のネットユーザーが37%も増加」しました。
これはコロナ騒動の影響により人々の生活が変化したためにもたらされた影響によるものといえますが、専門家はこの習慣はコロナ収束後も続くだろうと予測しています。
ドイツのEC市場
- 人口:8,200万人
- インターネットユーザーの割合:85%
日本に次いで世界4位、ヨーロッパでは最大の経済大国で、全人口のおよそ8.5割がインターネットを利用していると言われています。
イギリスと比べて人口で勝るドイツですが、eコマース市場の規模においては、首位のイギリスとの差はまだ大きく、ヨーロッパで第2位となっています。その理由の一つとしてドイツの決済方法が関係していると言われており、クレジットカードなどの後払いが主に利用されていることが挙げられます。
実店舗での買い物についても、現金決済が中心となっていて、キャッシュレス化が進んでおらず、他の先進諸国と比べて保守的であることが、EC市場における市場の拡大に大きく影響し、日本に次いで市場規模の伸び率が2番目に低いとされています。(2019年)
また、全人口の95%が「ドイツ語を母国語」としている点も、イギリスとの差がひらいている要因ともいえるでしょう。しかし、近隣諸国のオーストリアやスイスからのショッパーが多いのは、言語的な類似性と地理的優位性ともいえるでしょう。 また、ドイツ市場のショッパーは、商品説明を読む事に最も時間をかけているというデータも明らかになっています。
なおドイツでは、Amazon、Ottoが市場がシェアの半分を占め、Zalando、notesbillbiler、Mediamarktと続いています。
ドイツ発祥のeコマース zalando
コロナパンデミック騒動の影響で、世界的に大打撃を受けているファッション業界ですが、ドイツの主要ファッションプラットフォームである「Zalando」は「2020年に2桁成長する見通し」を発表しました。消費者の「オフラインからオンラインへの移行がビジネスを加速させる要因」であるとCEOであるRubin Ritterが発表しました。
<Zalando : INVESTOR RELATIONS>
フランスのEC市場
- 人口:6,510万人
- インターネット普及率:68%
ヨーロッパにおいて3番目、世界で6番目に大きなeコマース市場を誇るフランスは、高いインターネット普及率と大規模で多様な消費者基盤を持っているのが特徴です。現地のモバイルサービスも年々発展しており、eコマース市場の規模ではドイツとの差はほとんどありません。
フランスのeコマース市場の特徴は、共用語であるフランス語が世界各地で利用されている言語の一つであるという事が強みであり、フランス国内およびヨーロッパ内外に点在する『フランス語圏のユーザー』たちにアプローチできることが挙げられます。
また、フランス市場のショッパーは他の市場に比べ、購入前の口コミリサーチを良く行う傾向にあります。オンラインショッパーの約40%が購入前にレビューを読むという調査結果も明らかになっています。
フランスのEC市場では、12万を越えるeコマースサイトがあり、最も人気があるものはAmazonです。その他、Cdiscount、Voyages-sncf、fnac、vente-priveeといったECサイトがシェアの上位にランクインしています。
コロナパンデミックの影響・市場の変化
フランスもコロナパンデミックの影響は大きく、衣料品や家具などは40%~60%減少しました。ただ、一部のセクターは非常に好調で「食料品」「家電」「子供の教育」に関する品目では、大幅に売り上げを伸ばしました。(FRANCE 2020 Ecommerce Country Report)
その他
コロナ騒動の影響により、経済的被害が大きく、生活様式の変化に伴い、大きな変革を強いられるであろうファッション業界ですが、スウェーデンに本社を置くファストファッションの代表格であるH&Mグループはとても早く対応しています。
H&Mグループは2020年5月7日、投資家向けに財務諸表を発表しました。
発表によるとコロナの影響が深刻化していた3月からの実店舗での売り上げは57%減少し、同時にオンラインでの売り上げは32%増加しました。
<H&M:Investors>
実店舗での売り上げが大きく減少する中、2020年5月H&Mグループは今後「自社で展開する5つのブランドのオンライン市場の拡大」として、今後ヨーロッパの9つの国(エストニア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、クロアチア、ギリシャ、ルーマニア、ブルガリア、キプロス)でのオンライン販売を開始する方針を示しました。
新型コロナの影響により人々の生活様式が変化すると共に、今後はオンラインでの市場の拡張に注力するとみられます。
まとめ
ヨーロッパのeコマース市場は毎年成長している上、インターネットは世界で最も整った環境であり、人々のインターネット普及率も高い水準となっています。また、これまで敬遠されていた食料品のeコマース利用が大きく前進し、人々が日常的にオンラインショップを使用する生活スタイルへと変化する流れとなっています。
言葉を変えれば、日本⇔ヨーロッパ市場を繋ぐ架け橋(インフラ)は整ったということです。新型コロナ騒動による巣ごもり需要が湧き上がる世界に向けて、いざ日本企業もD2Cを進めていきましょう。貴社のグローバルD2Cを成功させる海外マーケティングはインフォキュービック・ジャパンに是非お任せください。
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。