「Alipay(支付宝)」「WeChat Pay(微信支付)」とは?
~キャッシュレス先進国・中国モバイル決済事情~
キャッシュレス先進国・中国モバイル決済
「Alipay」「WeChat Pay」とは?
「中国人旅行者は日本に来たらまず財布を買う」なんてことを聞いたことはありませんか?
どういうことなのか・・・極端に言ってしまえば中国人は財布を持っていないのです。財布を持つ必要がないのです。
中国では当たり前になっているモバイル決済。中国の日本でも「Apple Pay」や「LINE Pay」などが普及していますが、日本のモバイル決済ツールの普及率とは比べ物にならないほど中国ではモバイル決済が普及しています。その中で着実に人気が広まっているのが「WeChat Pay(微信支付)」です。
WeChat Pay(微信支付)とはどんなものなのか?インバウンド対策、集客ツールとして日本企業からの注目度も非常に高いWeChat Pay(微信支付)。導入メリットなども併せてご紹介いたします。
中国のモバイル決済市場
中国では年々モバイル決済利用率は増加しており、モバイル決済額は2014年から15年の1年間で約4.8倍増加、2017年には約202兆9300億元(約3200兆円)にまで拡大しています。2021年2月の時点で中国モバイル決済ユーザーは8億人を突破し、モバイル決済の1人1日当たりの平均使用回数は3回、全体の25%は5回以上利用していることがわかりました。
日本におけるモバイル決済利用者は2021年には2000万人と言われており、モバイル決済が進む韓国においても、この中国の利用率は韓国の2.7倍になります。
中国がどれだけモバイル決済が普及しているかをご理解いただけると思います。
なぜ中国ではモバイル決済、キャッシュレス化が進んでいるのか?
もそもなぜ中国でキャッシュレス化が進んでいるのか、そこから少しご紹介いたします。普及の背景としては諸説ありますが、大きく分けて3つあります。
スマートフォンの普及
日本ではパソコン向けの様々なサービス多くがありますが、中国ではそういったサービスを始め、全てがスマホに集中しています。先進国ほど、中国ではパソコンの普及があまり進まず、そのパソコンを用いたインターネットの時代を跳び越えて、スマホ及びモバイルインターネットの時代がやってきました。
また2012年の頃から、中国では爆発的にスマホが普及しだしました。冒頭でもお伝えした通り、中国におけるモバイルインターネットユーザーは、現在9億3200万人(2020年9月29日)にも達しており、2018年から約1億1500万人増加しています。日本の総人口が1億2557万人(2021年1月1日時点)と考えると、3年足らずで日本人口分が増加したことになります。
モバイルインターネットの成長に伴い、全てのサービスがスマホファーストを目指すようになり、中国ではまずスマホアプリが第一となっている状況です。その結果としてスマートフォンの利便性は他国にないほどの、いまや大都市では現金を使わずに生活出来るレベルに達しています。
偽札のリスク
中国では日本よりも偽札が多く、ATMにでさえ偽札が紛れ込んでいたりすることもあります。また日本と比べると治安も良くない面があり、現金の利用が日本に比べてリスクが高いことが挙げられます。モバイル決済であれば、現金を持ち歩くリスクもなく、気軽に使えるため急速にキャッシュレス化が普及したものと考えられます。
導入の手軽さ
キャッシュレス化が急速に進んだ一番大きな理由として、導入する側の手軽さがあげられます。
道端の露天商、屋台などの比較的小さい店舗でもモバイル決済が採用されているのを目にしたことがある人も多いかと思いますが、導入にかかる高い費用などは必要なく、POS改修や、読取用の専用リーダーなどを用意する必要もありません。顧客にスキャンしてもらう用のQRコードをプリントアウトして、お店に張り付けるだけで、金銭授受が完了するのです。それに加え、個人間の金銭のやり取りと同じなので、基本的に手数料などはかかりません。タブレット端末やiPhone、インターネット環境があればすぐに導入が可能です。導入までのハードルが低いということもスマホ決済普及を後押ししました。
中国ではコンビニやデパート、ホテル、タクシー、公共料金、病院、募金やお年玉までもオンライン決済が浸透しており、人々の生活には欠かせない存在となっています。
中国人がよく利用している決済方法は?
中国人が利用するモバイル決済方法のうち、多くを占めるのがWeChat Payとアリペイです。中国のモバイル決済のシェアは、ほぼこの2つで92%ほどを占めているといわれます。
Alipay(支付宝/アリペイ)とは
「支付宝(アリペイ)」は中国のネットショッピングモール「淘宝網(タオバオ)」を運営するアリババ集団(阿里巴巴集団)が2004年にスタートしたEコマースと共に成長してきた、決済サービスです。中国のネット通販はサービス開始当初、お金を振り込んでも商品が届かなかったり、届いた商品が不良品で返品したくても販売業者に連絡がつかなくなっている、などのトラブルよく起こっていました。
そこでアリババ集団は利用者の「Alipay(支付宝/アリペイ)」アカウントにお金をチャージさせ、商品を購入する際はまず、「Alipay(支付宝/アリペイ)」に代金を支払い、販売業者は「Alipay(支付宝/アリペイ)」から送られる支払完了通知をもって商品を発送するという仕組みを作りました。万が一の場合には返品や再発送を申し出ることができます。現在はアカウントに銀行口座を紐づけ、口座から直接引き落とすことも可能となっています。
この方式であれば利用者が支払った購入代金を「Alipay(支付宝/アリペイ)」が一時的に預かるため、販売業者側に何らかの問題が起きればすぐに返金してもらうことができ、安心してネット通販が利用できるようになります。「Alipay(支付宝/アリペイ)」の仕組みのおかげで、ネット通販は便利で安心かつ身近なサービスになりました。
また2004年に「淘宝網」から独立し、アリババグループの子会社としてアントフィナンシャルが運営するようになってから、「Alipay(支付宝/アリペイ)」はオフライン決済にも進出し、実店舗でも頻繁に使われるようになっています。中国をはじめ、東南アジアで最も利用されているサービスの一つで、アクティブユーザーは10億人以上、日本で利用できる加盟店も30万店舗を超えています。
決済サービスのほかに、個人信用を数字で評価する信用スコアサービス「芝麻信用」や資産運用などさまざまなサービスが利用でき、中国決済サービスシェアでは1位を獲得しています。
WeChat Pay(微信支付)とは
中国で人気№1のコミュニケーションアプリ「WeChat」の決済機能が「WeChat Pay(微信支付)」になります。
ユーザーが自分の銀行口座をWeChatに登録するだけで、簡単に利用できる新しい決済サービスです。中国で100万店舗、日本でも既に1万店舗以上が導入しています。
オンライン上のサービスだけでなく、オフラインでのショッピングでの支払いや送金にも利用可能で、中国人旅行者が、空港等に設置された端末でチャージすることも出来ます。
中国人が日常的に使用するSNSであるWeChatと紐づいていることから、魅力的かつ手軽さもあり、急速にシェアを伸ばしています。「WeChat Pay(微信支付)」は約8億人が既に利用しており、巨大マーケットを形成しています。
また「WeChat Pay(微信支付)」が普及している理由の要素として、
- どこでも使えて利便性が高い
- 偽札リスクがなく、現金よりも安心安全
- 利用手数料なし
- 財布、現金を持たなくていい
- 銀行口座との連携が簡単
- オンライン、オフライン決済以外にも割り勘、交通機関での利用、公共料金支払い、個人間送金、お年玉など可能
などがあります。この魅力と手軽さから中国で多く利用されている決済方法の1つとなっています。特に、WeChat Payは中国人が頻繁に使うSNS、WeChat(微信・ウィーチャット)に関係していることから、その意味でも中国マーケティングを行う企業にとって有効なモバイル決済となっています。
中国で月間アクティブユーザー11億人を誇る
大人気SNS「WeChat/微信」について
まとめ
「Alipay(支付宝/アリペイ)」と「WeChat Pay(微信支付)」は中国で最も注目すべきモバイル決済サービスです。現在、デジタル最新国である中国のモバイル決済は「QR決済」から「顔認証決済」へと移り替わってきています。他人による不正(なりすまし)はほぼ不可能で決済速度も速く今後も顔認証決済は拡大していくと予想されています。
インバウンド、中国ECともに対応することで、利便性の向上と購買意欲の促進にもつながります。ただ単に中国モバイル決済を導入して終わらせるのではなく、SNSや広告などのあらゆる方法を駆使して広く周知する施策にも積極的に取り組むことが重要です。
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チョウ テンキョウ
中国の大学を卒業後、早稲田大学大学院に進学し修了。デジタルマーケティングの世界で活躍したいと思い、株式会社インフォキュービック・ジャパンに入社。現在デジタルプロモーションチームのコンサルタントとして、Baiduや360のリスティング広告を中心に多くのアカウントを運用中。趣味は数学、物理と奈良旅行。