中国SNS「WeChat(ウィチャット)」とは?
基本機能から中国マーケティング活用法
中国SNS「WeChat(微信)」とは?
~基本機能からマーケティングへの活用法~
中国人がスマートフォンを購入して一番最初にダウンロードすると言われている、「WeChat/微信」。中国では利用していない人を探す方が困難なのではないかと言われていほど人気の高いSNSです。
日本ではあまり馴染みのないSNSですが、WeChatとはどんなアプリなのでしょうか?
本記事では、中国のウェブインフラの1つである「WeChat」 の基本機能・他のSNSとの違い・企業のプロモーション活用などについてご紹介します。
目次
- WeChat(微信)とは?
- WeChatの基本機能
- WeChatとWeixin(微信)の違い
- WeChatとWeibo(微博)の違い
- WeChatとQQの違い
- 企業のWeChatプロモーション活用方法
- ビジネスアカウントを申請するには?
- さいごに
「WeChat/微信」とは?
WeChat(ウィーチャット)は中国で最もユーザー数の多いソーシャルメッセージングアプリの1つです。
2011年、テンセント社によって開発されたWeChatは、開発当初 WhatsApp や Facebook Messanger のようなメッセージングアプリでしたが、現在は日常生活のあらゆる機能を搭載した、オールインワンプラットフォーム(スーパーアプリ)に進化しており、中国で生活するには欠かせないSNSと言っても過言ではありません。
WeChatの主な機能
「WhatsApp+Facebook+Google+ApplePay 」が融合したアプリと表現するとイメージしやすいかもしれません。主な機能として、特定の人物とのメッセージ交換はもちろんのこと、オンライン通話、オンラインショッピング、支払い、送金、タクシーの予約、チケット予約、税金の申請、オンライン診察、健康状態の証明など生活のほとんどがこのアプリ1つで完結してしまうような幅広い機能を有しています。
新型コロナ感染症が拡大した際には、「市中感染状況リアルタイム配信」や「健康状態を可視化するサービス」など、コロナ感染防止にも活用されました。
WeChatのユーザー属性
日本人にとってはあまり馴染みのない WeChat ですが、世界に目を向けてみるとユーザー数は5番目に多いソーシャルプラットフォームであり、その数は2023年4月の時点で13億1300万人に達しています。月間アクティブユーザーは約11億人、中国国外にも推定1億人以上のユーザーがおり、中華圏コミュニティから強い支持を得ています。モンゴルや香港でも人気があり、中華系移民の多いシンガポールでも利用可能です。
利用ユーザーの73%は、35歳以下の若年層となっているのも特徴です。現在20以上の言語が利用可能で、200の国と地域をカバーしています。
「WeChat/微信」の基本機能
ここからは、WeChatでどのようなことが出来るのか、基本機能を見ていきましょう。メインメニューとしては上の4つになります。「チャット・連絡先・発見・自分」の4つです。1つずつ詳しく見ていきましょう。
チャット
下がWeChatのチャット画面です。
LINEの画面と似ているのがお分かりいただけると思います。中国人は文字でのチャットよりも、音声を送りあって会話する「ボイスチャット」が主流となっています。LINEのスタンプに相当する「ステッカー」や、写真・動画、連絡先や位置情報なども送ることができます。LINEのような“既読”機能はありません。
テキストメッセージ、ボイスメッセージ、グループメッセージ、ブロードキャストメッセージ、写真と動画の共有、ビデオ会議通話、自分の位置情報、連絡先の共有などを行うことができるほか、Bluetooth経由で近くにいる人とファイルの共有などを行うこともできます。
連絡先
連絡先のメニューでは、自分の友人やフォローしている公式アカウントなどを確認することができます。LINEの「お友達」と同様の機能です。
発見タブでは、友人の近況を知ったり、連絡先を交換したりできるほか、アプリをダウンロードすることなく、タクシーの予約やデリバリー、ゲーム、ネットショッピングなどを利用できる「ミニプログラム」もこの発見タブから利用することができます。
モーメンツ
このメニューはLINEでいう「タイムライン」にあたります。InstagramやFacebookのフィードと同様の機能です。モーメンツでは、友人や企業の投稿を見ることができ、投稿に対してシェア、コメントや「いいね」をすることができます。ここには画像、15秒の動画、音楽、ウェブリンクなどを共有することが可能です。
モーメンツには、1日平均で30億件もの投稿がなされており、友人の近況を知るための重要な場となっています。企業が活用できる広告の1つ「WeChatモーメント広告」は、このモーメントのフィード内に表示できるスポンサー付きコンテンツです。
QRコードのスキャンやシェイク機能で友人と連絡先を交換することができます。シェイク機能に関しては、LINEの「ふるふる」機能と似ており、端末を振ることで連絡先の交換が可能です。
最新のニュース記事を見ることができます。LINEニュースに近しいものとなります。
WeChatの検索機能は、モーメンツ投稿、記事、公式アカウントの投稿、ミニプログラム、WeChatチャンネルなど、WeChat内のさまざまな情報を検索することが可能です。わざわざ検索エンジンを開いて検索するのではなく、こちらの検索から情報収集を行います。
GPS機能を使って近くにいる人を探すことが可能な機能です。ここで検索されたくない場合は、位置情報をオフにしておくことで表示されなくなります。
中国で「WeChat=ミニプログラム」と言われるほど、多くの人が活用している「ミニプログラム(小程序)」は、一言でいうと「アプリ内アプリ」です。普段使っている乗換案内や、各種チケット予約、ショッピング、ゲーム、デリバリーなどのテンセント社以外のアプリをダウンロードする手間なく、全てミニプログラムを通して全て利用することができます。
一番人気のあるミニプログラムはUberやGrabに似た配車サービスです。1日4億人近くのユーザーがミニプログラムを利用しています。ミニプログラムは初回起動時には表示されていないため、自分で「検索」から探して追加する必要があります。WeChatを通じた支払いは、全てWeChat Payに連携しているので、全てWeChat内で完結します。
冒頭でもお伝えした、コロナウィルス感染拡大時の「オンライン診療」や、健康状態を示す「健康格付けアプリ」はこのミニプログラムが使われていて、今回のコロナウィルスの影響による行政、医療、教育関連のミニプログラムは、大幅に利用が伸びています。ミニプログラム上にバナー広告を出稿することができるので、多くの企業が活用しています。
「自分」では、登録情報を確認、編集することができます。自身の「QRコード」が作成でき、連絡先交換時に活用します。また、「お気に入り」や「カード&特典」「ステッカーギャラリー」には、自分が保存した記事やクーポン、ステッカーが保存されます。
WeChatには「WeChat Pay(微信支付)」という決済機能がついており、決済や残高確認などができます。WeChat Payは中国で人気の決済サービスで、ユーザーが自分の銀行口座をWeChatに登録するだけで、簡単に利用できる決済サービスです。
中国の銀行口座に紐づける必要がありますが、オンライン上のサービスだけでなく、オフラインでのショッピングでの支払いや送金にも利用可能で、中国人旅行者が空港等に設置された端末で支払いやポイントとしてチャージすることも出来ます。また、WeChat同士の送金も利用できるため、中国では日常的に利用されています。
WeChat内で利用した支払いにも簡単に利用できることから、急速にシェアを伸ばしています。
ここでは自分で投稿した「モーメンツ記事」を見ることができます。
2020年から登場した新サービス「チャンネル」は、TikTokやYouTube動画と同様のショート動画を作成、共有することができる新機能です。ライブ配信も可能で、ユーザーは友達やインフルエンサーが投稿するコンテンツをフォローすることができます。企業マーケティングツールとして活用することができるため、世界中の多くの企業が中国向け情報発信のツールとして活用しています。
基本的な機能は以上となりますが、これはあくまで日本版なので機能が一部制限されています。中国版では、より多くの便利な機能があります。
WeChatとWeixin(微信)の違い
WeChatには日本版と中国版があり、日本版と中国版では名称も機能も異なります。
どちらもテンセント社が提供するサービスですが、中国版は「Weixin」、国際版(日本版含む)が「WeChat」です。日本でこのアプリをダウンロードしようとすると、アプリストアには WeChat が表示さミニプログラムは初回起動時には表示されていないため、自分で「検索」から探して追加する必要があります。
機能も異なり、WeChatの方が使用可能な機能は少なく、Weixinでは WeChat の公式アカウント情報を見ることができません。海外企業がマーケティング施策として公式アカウントを開設したい場合は、WeChatのアカウントを開設する必要があります。
WeChatとWeibo(微博)の違い
WeChat 以外で中国で人気のあるSNSと言えば、「Weibo(ウェイボー)」です。
WeChatと同様にWeiboも、中国人ユーザーたちが最新情報を取得するのに日常的に利用する便利なツールです。Weiboの月間アクティブユーザーは、2023年Q1時点で5億9000万人に達しており、Weiboも中国で広く普及しているソーシャルメディアの1つです。WeiboでもWeChatと同様に、企業の公式アカウントを開設したり、広告を出稿できたり、企業情報を発信するために利用することが可能なSNSです。
WeChatとWeiboの大きく異なる点は、ユーザーの「使い方」です。Weiboは「公式情報の発信」に向いており、WeChatは「既知サービス告知・ファン集め」向いているという点が挙げられます。
Weiboは中国版TwitterやFacebookと呼ばれており、ユーザーがTwitterやFacebookの公式アカウントページから情報を発信していくのと同様に、Weiboは情報の拡散に長けています。そのため、自社のブランド認知の拡大やブランドイメージの強化に向いています。一方、WeChatは広く情報発信するというよりも、既に認知されているサービスの告知や、ファン・コアユーザーとの関係を強固にし、集客することに長けています。
詳しくはこちらの記事でご紹介しています!>>「Weibo vs WeChat」徹底比較!
WeChatとQQの違い
「WeChat」と「QQ」は、どちらもテンセント社が提供しているインスタントメッセンジャーソーシャルメディアです。
QQは1999年から、WeChatは2011年からサービスを提供していて、共に中国ので不動の人気のSNSです。
年齢層が高い多くの中国人たちは、昔からQQを利用していましたが、WeChatがリリースされてからはQQのアカウントを残したまま、主にWeChatを日常生活の中で使うようになったというのが一般的な認識です。QQはデスクトップでの利用が多い傾向にありましたが、一人一台スマホの現代社会ではユーザーは自然にWeChatへと流れていきました。
ユーザー数が13億1300万人に達しているWeChatのユーザー層は、ほぼ全世代を網羅していますが、QQを現在の時点で活発に利用しているユーザーは、ゲームや音楽、QQ空間などの利用している学生などの「比較的年齢の低いユーザー層」が多い傾向にあります。
企業のWeChatプロモーション活用方法
以前は企業がWeChatで公式アカウントを申請する場合は、必ず中国でのビジネスライセンスが必要でしたが、近年はライセンスを持っていない場合でも公式アカウントを申請することができるようになりました。さらに海外ユーザーアクセスにも厳しい制限もあったWeChatですが、現在では海外企業のWeChat公式アカウントも誰でも見れるようになり、さらに企業のWeChat活用が活発になってきています。
具体的にWeChatはどのようにビジネス活用できるのか、見ていきましょう。
1.WeChatビジネスアカウント(公式アカウント)を開設する
WeChatビジネスアカウントは、メディアや企業、有名人、政府機関が開設できる公式アカウントです。このアカウントを通じて企業は膨大なユーザーにメッセージを送ったり、ブランド認知を高めることができるため、購読者とフォロワーを増やし、更新を行うことでユーザーの興味関心を維持することに焦点をあてます。
WeChatのビジネスアカウントには3種類タイプがあるため、どの種類のアカウントが自社に最適化を見極める必要があります。
- サブスクリプションアカウント
- サービスアカウント
- エンタープライズアカウント(WeChat Work)
※中国国内での会社登録がある場合は全てのサービスが利用可能ですが、海外企業はサービスアカウントしか登録ができませんので、ご注意ください。
では、それぞれの詳細を見ていきましょう。
「サービスアカウント(服务号)」
中国本土での企業登録がなくても利用できるサービスアカウントは、自社のサービスや製品のプロモーションや販売促進などマーケティング活動に最適なプランです。このプランは企業マーケティングに必要な機能を多く揃えています。ユーザーとは友達関係のような形で繋がることができるため、フォロワーに対して高い確率で情報を届けることが可能となります。
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- WeChat Pay
- WeChat Store
- 位置情報サービス
- 記事投稿
- 月4回のプッシュ通知
- ミニプログラム
- 音声認識
- QRコード
- カスタマーサービスメッセージ
1ヶ月に4回の配信や自社ECサイトへの誘導やユーザー管理、WeChat Pay(微信支付)という決済機能の利用など可能なうえ、WeChat Storeを開設することもできます。サービスアカウントはユーザーのチャット画面に表示されるため、サブスクリプアカウントより視認性の高いプランです。
「サブスクリプションアカウント(订阅号)」
「サブスクリプションカウント(订阅)」は、ユーザーとのコミュニケーションを重視した設計でブランドコミュニケーションに重点を置く企業に向けのプランです。フォロワー向けに定期コンテンツを配信する自社メディアとしての活用やコミュニティ参加を促すなどユーザーとの関係構築に最適です。
企業だけではなく、個人でも登録可能で1日1回、毎回1~6件の記事を公開できます。コンテンツの鮮度を優先し、最新の記事をアップした場合、WeChat検索エンジンの上位に表示されます。記事を公開したり、情報を更新した場合はユーザーのサブスクリプションフォルダーに送信される仕組みで、プッシュ通知はありません。
「エンタープライズアカウント(WeChat Work)」
法人顧客に最適なこのアカウントは、企業内が内部コミュニケーションと管理のために利用するSlackやWorkspaceのようなオフィス管理アプリケーションです。クローズ環境でのやり取りや、情報共有をすることに特化しています。そのため、一般的にマーケティング目的では利用しません。
中国国内はメールの利用率が低く、多くのコミュニケーションにチャットを用います。チャット以外にもファイル共有なども可能です。
近年、急速にシェアを伸ばしたWeChat Workは、2020年、8万件以上のアカウントが登録しており、250万を超える組織と6000万ユーザーが利用しているツールです。
2.ミニプログラムを作成する
海外の企業であってもWeChatミニプログラムを制作するためのライセンスを申請することができます。申請が通過すると、企業はミニプログラムを通して、13億人のWeChatユーザーがアクセスできるアプリを作成することができます。
WeChatミニプログラムの開発や導入プロセス、保守は非常に簡単で、HTML、JavaScript、CSS に似た独自の言語を使用します。通常のアプリ開発と比較すると開発作業に必要な技術リソースや時間を削減することができます。
3.WeChat広告を出稿する
WeChatでは、3種類の広告を利用することができます。
【バナー広告】
WeChat公式アカウントの記事内に表示されるバナー広告です。ロゴ・アカウント名・見出しを含むバナーを表示することが可能です。料金(CPM)は都市の大きさによって異なります。
- 大都市:1,000 あたり 20 元
- 中核都市:1000あたり25人民元
- その他:1000あたり15人民元
【モーメント広告】
モーメントフィード内にスポンサー付きコンテンツを表示することが可能です。モーメント広告にはブランド名・画像・短編動画・広告ディスクリプション・テンセント社がホストしているサイトへのリンクなどを含めることが可能です。ユーザーが6時間以内に広告にコメントやいいねなどのアクションがない場合、自動的にタイムラインから消去されます。現在WeChatはモーメント広告の表示回数を1日3回までとなっています。
ユーザーがミニプログラムを利用したり、ミニプログラム内のミニゲームを閲覧するとバナー広告や動画広告、ポップアップ形式の広告を表示することができます。
ミニプログラム広告は外国企業であっても利用できるため、多くの企業が施策として活用しています。ただし、どのミニプログラムに広告を表示させるかを選択することはできません。
最小 CPC (= クリックあたりのコスト) = 0.5 円/0.073 ドル
最小1 日あたりの費用 = 50 円/7.28 ドル
WeChatビジネスアカウントを申請するには?
企業がWeChatのビジネスアカウントを取得するには、拠点が中国にあるかどうかに応じて、以下のいずれかが必要となります。
- 中国現地の企業または、完全外資企業が取得した中国のビジネスライセンス
- WeChat支払いアカウントを持つ中国人ID
しかし、上記の要件を満たしていない場合であってもサードパーティを利用してWeChatビジネスアカウントを開設できます。
申請手続きは複雑ではありませんが、ビジネスの正当性を証明する書類など、多くの書類が必要になります。申請するビジネスアカウントや企業業種などによって異なります。申請後はアカウントの種類によって異なりますが、約2週間ほどで結果が得られます。
さいごに
中国人にとっての「WeChat/微信」は、日本人にとってのLINE以上に「普段の生活に無くてはならないツール」にまで発達しました。13億人とつながることができるWeChatは、中国マーケティングにおいて活用法は無限大と言えるでしょう。
「自社に中国人スタッフはいないけど、マーケティングで中国市場を狙いたい」とお考えでしたら、ぜひ一度、お気軽にご相談ください!
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。