Withコロナ時代のグローバルマーケティング
~危機のなかマーケッターが押さえるべきアイデア~
Withコロナ時代のグローバルマーケティング
危機のさなか企業が押さえるべき大切なマーケティング・アイデア
去年12月10日に中国の湖北省武漢市で新型コロナウイルスの感染者が確認され、たった数ヶ月で主要感染都市の経済活動のほとんどが機能不全に陥り、私たちの生活が激変することとなりました。多くの企業にとっても予測していなかった大きな変化を強いられる「大変厳しい時期」となっています。
このような危機に面した際に企業ブランディングにおける「マーケティング」というのは、企業回復において必要不可欠なものなのではないでしょうか。今回は、危機に面した際にグローバル企業が実践したマーケティング施策を実例に、危機の際に役立つマーケティングのアイデアをご紹介します。
1:消費者の立場に立ったのマーケティング施策を
一番重要になってくるのが「マーケティングが消費者の目線に即しているかどうか」です。施策対象国がどのような状況にあって、国民がどのような状況下に置かれているかを丁寧にかつ、慎重に分析する必要があります。
今回のコロナショックをリーマン・ショックと比較される方もいますが、程度の差こそあれど現在に至っては全世界どの地域も被害を被っており、終わりが見えない不安に世界中の誰もが苛まれている状況です。そういった状態の中、共に困っているはずの消費者に目を向けず、ただ自社の利益のみを追求したり、平常時と全く同じマーケティング施策を取るだけでは、多くの方々から反感を買ってしまう可能性があります。コロナショックであらゆる面が不安定になっているため、平時よりもより注意深く、現地の人達の生活を想像しながらマーケティング施策を実行しなくてはいけません。
オーストラリアでは、コロナウィルスによるトイレットペーパーパニックが起こり、人々はスーパーマーケットでトイレットペーパーを奪い合い、暴力事件にまで進展してしまいまた。そんな中、トイレットペーパーを供給しているKleenexBathroomAustraliaでは、大量のトイレットペーパーの在庫と共に「パニックにならないように」とFacebookで呼びかけました。
<Facebook:KleennexBathroomAustralia>
この投稿は人々に安心感を与え、高く評価されました。KleenexBathroomAustraliaの通常のFacebook投稿は平均して20~100いいね程ですが、この投稿は世界中から4万6千いいね、2万9千以上のコメント、6万3千のシェアを集め、いっきに存在感を高めました。危機の中だからこそ、人々の心に寄り添ったマーケティングの成功例といえるでしょう。
2:ソーシャルメディアで顧客との繋がりを保つ
中国で初の新型コロナウイルスの感染者が確認されてから、瞬く間に世界中であらゆる活動が自粛・制限されてしまいました。SNSでは人々は未知のウィルスに対する恐怖から、多くの情報を得ようとSNSやニュースサイトなどが活発に利用されました。主要ソーシャルメディアもコロナウィルスの正確な情報を表示するための機能など、利用者が安心して活用出来るようさまざまな機能を早急に実装し、利用者の声に迅速に答えました。
TikTokは「コロナウィルス」と検索するとWHOなどの信頼出来る機関からの統計データなどを国ごとに見ることが出来るバナーなどを表示。
Facebookは正確な情報発信のためのファクトチェックを強化したり、リモートワーク支援のための新機能「WorkPlace」を実装。その他、世界30か国において中小企業向け「1億ドル規模の支援プログラム」を発表しました。
Instagramは利用者がストーリーズで新型コロナウイルス(COVID-19)に関する正確な情報をシェアできるように、偽情報の選別のためのファクトチェッカーや、利用者が大切な人とつながれるように、ビデオチャットで友達と一緒に投稿を見ることができるシェア機能をリリースしました。
他者と対面することが極端に減ってしまった今だからこそ、ソーシャルメディアでいかに顧客と繋がるかが重要となります。これらのサービスは顧客とシームレスに繋がれるため、現状を正確に把握し、的確に運用すれば大きな効果を得られます。たとえ実地でのサービス提供が新型コロナウイルスの影響で減少してしまったとしても、ソーシャルメディアでの発信を継続的に行えば顧客の記憶に留まり続ける事が可能となります。人々が活発にソーシャルメディアを活用する現在において、ソーシャルメディアの運用は非常に重要となってきます。
3:オンラインでの存在感を高める
世界中のあらゆる都市において外出の規制・自粛、リモートワークや学校の休校が実施されている現在、在宅時間が伸び、人々がインターネットに接する時間も急増しています。人々の生活が変化したことで、店舗には在庫があるが、オンラインでは在庫不足という現状が世界中で起こっています。この状況下においてオンライン空間での存在感を高められれば、既存顧客の維持だけでなく新規顧客との接触にも繋げられるではないでしょうか。
データ分析会社ListenFirstの解析によると「マスク」に関する投稿をするファッションブランドのソーシャルメディアチャネルにおいて「フェイスマスクの投稿が高いレスポンススコアを獲得した」と発表しました。
<Facebook:Christian Siriano>
今回のコロナウィルスの影響により大打撃を受けたファッション業界ですが、情勢に適応させたマーケティング戦略を行い、ソーシャルメディアをうまく活用し顧客との関係をうまく築いているといえるでしょう。
4:広告を状況に合わせて最適化する
コロナショックは非常にセンシティブな内容であるため、広告の出稿には細心の注意を払わなければなりません。たとえば外出を推奨するような広告内容である場合、感染拡大を助長しているとして炎上してしまう可能性が非常に高くなります。
また、新型コロナウイルスに関する重要なニュースを伝える番組の合間に、状況に即さない雰囲気のCMが挟まっていてはかえって逆効果になってしまいます。
気を付けなくてはいけない対象は内容だけでなく、広告が表示される場所にも当てはまります。
広告が出されることがコロナ関連の情報共有に支障を来さないか、しっかりと検討し「企業としての方針」を決定することが重要です。
5:顧客ニーズに合わせてサイトを変更する
あらゆるものが制限を受けているコロナショック下では、通常時のようにはいかないことが数多くあります。だからこそ顧客ニーズをしっかりと把握し、それに合うよう臨機応変に対応していくことが求められるのです。先ほども記述したように、人々の生活が変化したことで、自粛・規制により外に出る機会の減少に伴い、人々はオンラインにアクセスするようになりました。
コロナウィルスとの長期戦を見据えて、サイト最適化、SEOを意識したサイトの再設計など、アクセスの多いこの時期に「ウェブサイトの品質を改善するタイミング」と捉えても良いのではないでしょうか。従来のやり方に固執せず、現在が特殊な状態であることを踏まえて柔軟に対応することが重要です。
6:マーケティング指標を常に把握する
マーケティングデータを常に把握する事は今まで以上に大切になっています。日々状況が刻々と変化する今、政府の方針一つで世の中の求めるものが一変します。世の中の声を常に拾い上げ、計画を柔軟に変化させる必要があります。
無料で利用出来るグーグルアナリティクスでの解析はもちろんのこと、検索クエリの分析、コンテンツの増産などのサイトの強化や、世の中の声を常に意識したソーシャルリスニングマーケティングなど、以前、記事でもご紹介したソーシャルリスニングツールを活用するなど、マーケティングデータを注意深く観察する事が必要でしょう。
「ソーシャルリスニングって何?」
ブランドと顧客の関わりを可視化するポイント
7:危機に面した人を助けるために最善を尽くす
前述のよう全世界的で自粛・規制が継続しているという点で、企業にとってコロナショックは近代稀に見る危機だといえます。あらゆる人々が終わりのない不安に駆られている中、危機に面した人々を助けようとする企業は通常時よりも多くの賞賛を得られます。先ほど紹介したKleenexBathroomAustraliaのように、場合によっては企業イメージを大きくアップさせる可能性もあります。
感染爆発が起こってしまった欧米諸国では、人々が厳しく移動制限をされ、飲食店や街中の商店も営業自粛などを求められる中「新たな事業」や「今できる社会貢献」を始める動きが目立っています。
大打撃を受けたファッション業界の大御所、ルイヴィトンなど有名なファッションブランドをプロデュースするLVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTONはマスクや医療用ガウンの製造を即座に開始しました。そして、無償で病院に配布すると発表し、大きな賞賛を得る事に成功しました。
<Instagram : #LVMH>
GoogleとAppleはライバルの垣根を超え、感染者の移動ルートなどをチェック、濃厚接触者へ通知するアプリの開発などを合同でスタートさせました。
<Apple Newsroom : AppleとGoogle、新型コロナウイルス対策として濃厚接触の可能性を検出する技術で協力>
ジンやウォッカなどを製造するアルコール飲料メーカーが、世界的に不足している医療用アルコールの製造を始め、フランスでは食材を提供する生産者と調理をするレストラン、完成した料理を配達する運送業者がタッグを組み、無償でコロナと闘う最前線にある医療スタッフに弁当を届ける取り組みをしています。外出自粛で食材が余る、来店客がおらず料理が作れない、売り上げが落ちたといった逆境を逆手に取り、食材を無駄にせずに有効活用ができ、料理人の腕もフル活用して社会貢献ができるのです。
仮に現時点で利益は出なくとも、取り組みは世界中で評価を受け、企業のイメージもアップします。グローバルブランディングにも成功でき、コロナ収束まで生き延びることができれば、コロナ問題が収束した暁には大きな評価と信頼を得て、売上を取り戻していくことができるかもしれません。
まとめ
世界中で自粛・外出規制などの措置がとられている現在、世界ではゆるやかな規制緩和の方向に風向きが変化しています。ただ、今後も第二波、第三波などが予測され、今後もコロナウィルスとは長く付き合っていく必要があると予想されています。日本においても緊急事態宣言が延長され、長期戦となる見込みです。そのような状況において、我々マーケターや企業ができることは「利己的にならず、社会にとっての善を成していくこと」ではないでしょうか。
その善はなんなのか、また善を成しつつ企業利益を獲得していくためにはどうしたら良いか、その舵取りを行うことこそが危機におけるグローバルマーケティングとして、とても重要となるでしょう。
そんなWithコロナ時代のグローバルマーケティング。海外に特化したインフォキュービック・ジャパンでは、お客様のメッセージを海外ユーザーに的確に届けるグローバルマーケティング戦略をご提案いたします。お困りごとがございましたら、遠慮なくお申し付けください!
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。