プロダクト・プレイスメントとは?
~世界観を壊さない優れた広告フォーマット、海外事例など~
世界観を壊さない優れた広告フォーマット
「プロダクト・プレイスメント」とは?
新型コロナの影響もあり、「YouTubeやNetflixで動画を見あさっていた」なんて方は少なくないと思います。皆さんが映画やドラマを楽しむ中で「あれ?アニメ/映画の中に実際のブランドの商品が登場している」という経験をしたことありませんか?
実はそれはマーケティング戦略の一つで、「プロダクト・プレイスメント」と呼ばれている広告手法です。
今回はテレビや映画の中に自然に溶け込ませる広告「プロダクト・プレイスメント」を事例を含めてご紹介します!「そんなの知ってるよ、高額で手が出ない」そう思っていらっしゃる方にも、最新のテクノロジーを駆使した「プロダクト・プレイスメント」も併せてご紹介します。
目次
プロダクト・プレイスメントとは?
「プロダクト・プレイスメント」とは、テレビのドラマや映画の中で、役者の小道具や背景として実在する商品や企業を溶け込ませることでアピールする広告手法として知られています。
決して新しい手法というわけではなく、アメリカでは1940年代からの伝統的な手法だったそうです。プロダクト・プレイスメントがはじめてビジネスとして使われたのは、映画「E . T」(1982)の中で女の子がE . Tにキャンディーをあげるシーンと言われています。作中に登場した米国の会社製のお菓子が爆発的に売れたことから、それ以降、専門の広告代理店が現われ、料金体系も整備されるなど広告ビジネスとして定着しました。
現在、アメリカではPP専門の広告代理店が数十社存在し、年々市場規模を拡大しつつあります。2019年のプロダクト・プレイスメント市場は1兆2500億円を突破しました。また新型コロナの影響で世界中の人々の在宅時間が増加し、2020年第一四半期で世界中からの有料会員数が1500万人以上増加したNetflixを見ても、今後の「プロダクト・プレイスメント」の市場規模はますます拡大していくと予想されます。
なぜ今プロダクト・プレイスメント手法が注目を浴びているのか?
現在はいつでも誰でも情報や広告が発信できる時代となり、人々は常に「情報の洪水」の中で生活しています。常に情報が溢れている中で、クリエイティブやターゲティングの工夫をして広告を届けようにも、スキップされたり、アドブロックされたりと広告に接触させること自体が難しくなってきています。
ネイティブアドという広告掲載面に広告を自然に溶け込ませることで「ユーザーにコンテンツの一部として見てもらう広告」が出てきたり、さらに「インフルエンサーマーケティング」や「UGC」の活用が多くなってきたりと、日常に溶け込んだ広告がトレンドになっていることが分かります。
このような背景で、上手くコンテンツに広告が溶け込んだ嫌悪感を感じさせないプロダクト・プレイスメント手法が、特に「ブランド認知施策」として注目を浴びてきているのです。発展が大変著しいデジタル広告において、このプロダクト・プレイスメント手法の考え方が応用できるとして、再注目を浴びるようになりました。
プロダクト・プレイスメントの事例
では実際にプロダクト・プレイスメント手法が使われている筆者が個人的に好きな事例を映画、テレビ、Webで分けてご紹介します。
【映画編】
スタジオジブリ『魔女の宅急便』(1989)
あまり知られていませんが、もともと「宅急便」とは「ヤマト運輸」の登録商標であり、作中に出てくる黒猫のジジもヤトレードマークを想起させます。タイトルや作中で企業ブランドに関わる表現を通して、「ヤマト運輸」の宣伝を兼ねているのです。
作品中最初から最後まで実在する企業や商品のオンパレードでした。サントリーのビール、日清のどん兵衛、TSUTAYA、Softbankの白戸家のお父さん、バイトルのアプリなど。作品外では、タイアップ広告としてテレビCMやYouTube広告で2次利用もされていました。
【テレビ番組編】
ニューヨークに住む独身30代女性4人が主人公の米ドラマの中で、主人公キャリーが愛用するApple社のMacは彼女の生活に溶け込んでおり、視聴者に自然な好感を与えていました。映画のオフィシャル・サイトには「CARRIE’S MAC BOOK」というコンテンツが用意されていて、キャリーのMacのデスクトップが表示され、そこでMacの操作感が体験できるようになっていたとのこと。
【Web編】
主人公たちが旅の途中でキャンプを行います。PR Timesによると、そのキャンプで主人公達が使うキャンプ用品すべてに、アウトドア用品メーカー「コールマン」のアウトドアグッズが採用されています。テント、テーブル、チェア、そして食器に至るまで実在するコールマンのアイテムが使用され、ファンタジーでありながらもリアルに表現された世界観になっています。
作品内に日清の「カップヌードル」も登場しています。カップヌードルの販売車が出てきたり、キャラクターがキャンプ等で食べる食事アイテムのひとつとしてカップヌードルが登場したりします。ゲーム内では具材をカスタマイズできる仕様にもなっているそうです。
日経×TRENDによると会話や画面上に何度も出てくる「ニュー・コーク」。ニュー・コークとは、当時コーラ市場でペプシの追い上げに苦しんでいたコカ・コーラ社がコカ・コーラの味とデザインを一新させて、1985年に発売したもの。これまでのコカ・コーラの販売を完全に停止し商品を完全に入れ替えたことや、ライバルのペプシ社による抗議があったことから消費者から「昔の味に戻せ」という抗議がコカ・コーラ社に殺到し販売中止になったそうです。その商品を作品内に登場させ、期間限定で「ニュー・コーク」を復活させたそうです。
プロダクト・プレイスメントの最新テクノロジーと今後
これまでのプロダクト・プレイスメントは、映画やドラマの制作前にブランドが契約を結び、どこにブランドイメージを差し込むのか等を決めた上で撮影に立ち合う必要がありました。また撮影後に映画やドラマが公開されるまでの期間に、新しい商品が出てしまうという懸念するべき点などもありました。
しかし、最近は、テクノロジーも発達してきており、自動で且つ後出しでコンテンツ内に広告枠を作り出すことができる技術を開発する企業が出てきいます。
例えば、ハリウッドに拠点を置く「Ryff」は、機械学習とレンダリング技術を使用しテレビCMや番組内の撮影後のシーンにバーチャルで企業の商品を配置する技術を保有しており、ごく自然に見える形で商品を広告することができるサービスを展開しています。この技術により広告主が番組の撮影後に後付けでスポンサーになるかを選択する事が可能となりました。
またロンドンに拠点を置く「Mirriads」は、映像の中でプレイスメントに適したスペースを瞬時に探し出し、オリジナルコンテンツに同質化させたプロダクト・プレイスメントが可能とのことです。
テレビや映画などでプロダクト・プレイスメントされた商品を見た後に、そのままリアルタイムで商品が購入できるアプリも世界中で多く出てきています。日本ではドラマ連動のECサービス「これぽち」のユーザーは、「これポチ」がタイアップしたドラマの情報を受け取り、ドラマを見ている最中に販売商品がドラマのシーンと連動してリアルタイムにアプリ内で商品情報が表示されその場で購入できるという仕組みを提供しています。
さいごに
このようにプロダクト・プレイスメントは様々なシーンで昔から使われていた手法ですが、時代と共にデジタルの分野にも流用され始めてきています。またテクノロジーの発達により、以前は高額の広告費用が必要になっていたプロダクト・プレイスメントの障壁も少しずつ下がり始めているように思います。テクノロジーの進化により広告形態も様々なものが登場しています。
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吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。