韓国で人気の検索エンジン 2024
~韓国人マーケターが徹底解説!韓国向け検索エンジンマーケティング~
名前を明かすまでは、よく日本人と間違われますが、韓国出身で日本に移住して間もなく4年になるマーケターのチェです。
インバウンド需要の増加に伴い、近年、韓国からのニーズを積極的に取り入れたいというご相談が着実に増えています。そこで今回は、韓国人マーケターの私が、韓国の検索エンジン事情からマーケティング活用の例まで、定量・定性データや実際の事例に基づいて解説していきます。
韓国向けデジタルマーケティングのためのヒントやアイディアをぜひご活用ください。
目次
- 2024年 韓国人の好む情報収集媒体
- 韓国で人気の検索エンジンは?
- 韓国で人気の検索エンジン!その特徴は?
- 韓国人に聞いた!検索エンジン利用傾向
- 韓国向けデジタルマーケティング施策
- 韓国向けデジタルマーケティング施策のご支援事例
- まとめ
2024年 韓国人の好む情報収集媒体
ソーシャルメディアやChatGPTなどのAIベースの新サービスが誕生し、韓国でも「検索行動」に変化がみられています。Opensurveyが15歳から59歳の韓国人は検索ニーズを満たすために、従来の検索方法以外にもソーシャルメディアを組み合わせた「検索行動」へと変化していることがわかりました。
インターネットユーザー1,000人に対して、「普段気になることを検索するために利用するサービス」を調査したところ、以下のようなランキングとなりました。
1位のNAVERは87%と高い支持を得ています。次いで人気なYoutubeの利用率は、非常に高く79.9%、3位はGoogle、4位がInstagramと続きます。SimilerWebでウェブサイトランキングを調査してみると、多少ランキングは前後するものの、YoutubeやDaumは上位にランクインしており、多くの韓国のユーザーから支持を得ていることがわかります。
続いて、検索エンジンに絞ってみていきましょう。
韓国で人気の検索エンジンは?
検索エンジンの人気度は「検索エンジンからWebサイトへの流入率」から推測できます。検索エンジン別の流入率割合は、検索エンジンの市場占有率としても捉えられ、マーケティングにおいても重要な指標として活用されています。
まずは、2024年5月時点での韓国における検索エンジン別流入率割合をご紹介します。
1位はNAVER、2位はGoogle、3位はDaum
上記のように、韓国では韓国独自の検索エンジン「NAVER」が全体割合の57.6%、次に「Google」が34.3%を占めており、この2つの検索エンジンが人気を得ていることが分かります。一方、NAVERよりも長い歴史を持つ、韓国独自の検索エンジン「Daum」は3.8%と低調ではありますが堅調に利用されています。
このようなデータからNAVERが韓国で最も人気の検索エンジンであることは事実です。しかし、この流入率はここ数年で変動を見せています。
次のグラフは直近6年間の流入率の変化を表したグラフです。
2017年5月と2024年5月で比較すると、NAVERは20.65%、Daumは5.75%減少し、Googleは23.1%増加している結果です。
なぜこのような変化があったのでしょうか?
韓国の検索エンジン事情をより深く理解し、効果的な韓国向けマーケティング戦略に繋げるために、「韓国の検索エンジン別の特徴」や「検索行為における認識変化」「年齢別の好み」からその背景を紐解いて行きたいと思います。
まずは、NAVER、Google、Daumの特徴を簡単にご紹介します。
韓国で人気の検索エンジン!その特徴は?
NAVER
韓国で「国民的検索ポータル(국민검색포털)」とも呼ばれているNAVERは、ニュース・ショッピング・オンラインコミュニティのコンテンツなどを含めたポータルサービスを提供しており、毎日約1,600万人以上のユーザーが活用する「韓国での日常生活には外せない検索エンジン」の一つです。
2002年に質問者と回答者が掲示板形式で質疑応答ができるサービス「知識iN(日本のYahoo! 知恵袋)」で、韓国で大ヒットしたNAVERは、“日常をコネクトし、価値を広げるNAVERサービス”というスローガンのように、韓国人の日常における様々な活動をインターネットで繋ぐサービスの開発に力を入れてきました。
現在では、ショッピングなどのCtoCコマース、クラウド、フィンテック、コンテンツ、コミュニティサービスなど、人々の生活を繋ぐ多様なサービス提供を進めており、韓国の日常生活に欠かせない「スーパーアプリ」として認識されています。
Googleとは異なる検索表示結果
NAVER検索エンジンは、NEVERプラットフォームを通じて生成された情報やコンテンツを検索結果に積極的に上位表示し豊富で多彩な検索結果を表示します。
例えば、「日本旅行(일본여행)」を検索すると、①からNAVER広告→日本の天気や為替レート→日本の専門家コンテンツ→日本の都市ごとの見どころ→旅行商品→口コミ情報→ショッピング情報→Wiki→人気トピック→インフルエンサーの順番でコンテンツが表示されます。ここまでいっても、まだ企業ページは表示されません。
一目見ただけで、Google検索の表示結果とは大きく異なることがご理解いただけると思います。また、「NAVER カフェ」や「NAVERショッピングの商品」は、GoogleにIndexされないため、Googleで検索しても見ることができません。NAVERには韓国独自の情報が掲載されています。
NAVERの検索アルゴリズムは韓国語を中心に構成されているため、Googleよりも関連性の高い検索結果が提供できます。韓国の日常生活と密接している情報が多く得られることから、根強い人気を誇っているのがNAVERです。
日本の皆さんもご存じのGoogleは、世界で最も利用されている検索エンジンであり、2024年5月時点でシェアは34.3%です。韓国でも人気が高まってきている検索エンジンです。
日本でGoogleで検索することを「ググる」と表現するように、韓国でも「구글링」という言葉が使われています。韓国市場でのGoogleのシェアが拡大している背景のは以下のものが挙げられます。
検索結果での広告表示が少ない
GoogleとNAVER、両方で検索してみるとすぐお気づきになると思いますが、Googleは検索結果上位に最大4件の広告が表示されることに対し、NAVERは最大10件まで表示されます。近年では検索エンジンにおける利用者の認識も変化しており、広告を嫌う若者ユーザーも多く、広告ブロック機能を活用するユーザーも多く存在しています。
検索結果がNAVERとは異なる
NAVERはNEVERプラットフォームを通じて生成された情報やコンテンツを上位表示する傾向があります。そのため、韓国国内の情報が多く、Googleはよりグローバルな検索アルゴリズムによって検索語句に対してNAVERとは異なる情報を提示します。
<「日本旅行(일본여행)」の検索結果_検索語句に関連性の高いWebページが見つけられます>
このように、NAVERとは異なる情報を見つけられることから、Google検索を好む”若者”が増えており、「専門的な情報収集元」として認識されています。この点については、次項で詳しくご説明します。
Daum
Daumは1997年に誕生したかなり古株の検索エンジンです。当時はYahoo・Lycosなど外国勢が主なプレイヤーだった韓国の検索エンジン市場にHanmail Netという名前で、韓国勢検索エンジンとしてシェアを広げる戦略を展開した韓国独自の検索エンジンです。
やがて2003年には会員数でYahooを超えた快挙を見せるなど人気を誇りました。(ちなみにNAVERは2003年生まれです)
現在は検索エンジン流入率は10%未満ですが、韓国の50代にアプローチするには効果的な場合もあります。インターネットの普及時期と相まって誕生し、長い歴史を持つことから40代~50代から好まれていて、単なる検索エンジンではなくポータルサイトとして、オンラインコミュニティの「Daum Cafe」、「Daum ニュース」なども利用されています。
昔、流行った言葉の中で「オルチャン」という単語をご存知ですか?美少女・美男子を指す韓国語の俗語で、Daumが提供するDaum Cafeで取り上げられて大流行しました。
<日本旅行(일본여행)の検索結果の一部>
韓国人に聞いた!検索エンジン利用傾向
ここからはマーケティングにおいてペルソナのイメージに参考となる「年齢別の利用傾向」を解説していきます。
韓国で人気の検索エンジンは、NAVERとGoogleが主要なプレイヤーであることから、日本のGoogleとYahooをイメージされるかたも少なくはないでしょう。しかし、韓国インターネットユーザーの調査データと韓国在留30年、日本在住4年の経験からすると、微妙な違いがあると言えます
利用年齢
20代はGoogle、30代はNAVER、50代はDaumを好む
韓国の検索エンジンの人気を年齢別で見ると日本とは少し異なる傾向があります。下記は、Opensurveyによって実施された「疑問があるとき、真っ先に利用するWeb媒体」の調査結果ですが、ここから年齢別の利用傾向が一目で分かります。
全媒体に対してNAVERは77.4%、検索エンジン含めSNS、Webサイト、AIチャットを抜いて最も好まれていることが分かりますが、年齢別で見ると30代が+7.1%と特に好まれている一方、20代は-9.2%と比較的好まれていない傾向が見られます。
そしてGoogleは全媒体に対して39.7%と検索エンジンでは2位に位置しますが、年齢別にみてみると、20代は+11.1%、50代からは-7.7%という傾向がみられています。
Daumは、50代が全年齢の平均値より+12.8%好まれている傾向にあります。
このような年齢別の検索エンジン好みの違いは、「韓国で人気の検索エンジン!その特徴は?」で紹介した検索エンジン特徴と韓国でのインターネット文化などから生じられています。
利用年齢のイメージが沸いたところで、次は実際の検索エンジン活用イメージをご紹介します。韓国ユーザーはどのような目的で検索エンジンを使用しているのでしょうか?
検索エンジンの利用目的
韓国ではNAVERとGoogleを目的によって使い分けて利用する傾向がある
結論から言うと、韓国では探したい情報に応じて、検索エンジンの「使い分け」を行っています。次の表は「韓国での検索状況・目標別で最も重要視する要素とそれを最も優れて提供しているサービス」の調査結果です。
この調査結果によると、Googleは「信頼性が高い情報を求める」という点で知識取得や業務・学習目的に利用されています。一方、NAVERやDaumは「日常生活と密接な情報を探す」という点で、ニュースや趣味の情報源として好まれていることがわかります。この興味深い調査結果は、私の経験という定性的なデータと一致します。
実際に韓国在住の韓国人の知人に「NAVERとGoogle、どう使っているか?」と生の声を聞いてみたところ、上記回答と驚くほど回答が一致していました。
韓国在住の韓国人に聞いた!GoogleとNAVERの使い分け
パクさん:男性、年齢:36歳、職業:プログラマー、趣味:ゲーム、既婚者、居住地:首都圏
「基本NAVERだけど、職業の関係上コーディングなどのテクノロジー的な情報はGoogleで調べる。」
違うパクさん:男性、年齢:34歳、職業:自営業、趣味:旅行、未婚、居住地:首都圏
「どっちも使う。大体は両方使っていると思う。Googleは買い物やお店のレビューには情報が見られないからNAVERのほうが便利。」
ジャンさん:男性、年齢:34歳、職業:メーカの営業部、趣味:旅行、未婚、居住地:地方都市
「ニュースや地域情報(飲食店とか)ならNAVERの方がわかりやすい。」
キムさん:女性、年齢:37歳、職業:保育士、趣味:読書、未婚、居住地:首都圏
「PCブラウザの起動ページはNAVER。Googleはブックマークをしてる。」
このように、定量・定性的なデータから韓国ではNAVERとGoogleを「目的に応じて柔軟に活用している」イメージが伝わったかと思います。この情報からも韓国のターゲットユーザーがどんな検索エンジンを、どんな状況で利用する傾向があるのかには、効果的な韓国マーケティングにつながるヒントが潜んでいると思います。
韓国向けデジタルマーケティング施策
ここからは韓国の検索エンジンで主流となっているマーケティング手法をご紹介します。実例も用いてご紹介するので「韓国向け検索エンジン広告は初めて」「もっと積極的に検索エンジンを活用していきたい」という方は、そのイメージをお持ち帰りいただければと思います。
韓国向け検索エンジンマーケティングに関しては、NAVERとGoogleが主流となっているため、この2つに焦点を当てたいと思います。
施策1:「検索広告を活用する」
具体的な広告手法に入る前に、韓国の検索エンジン広告市場の概況を把握しましょう。「ターゲット国のどの検索エンジンに広告を出稿するのが効果的か?」を検討する際に大きなヒントとなります。
下記は「韓国の検索広告商品別、Webサイト流入率割合」データです(コロナ直前の2019年の第2四半期と、落ち着きを見せてきた2022年の第4四半期)
緑系の色はNAVERの広告商品で、市場割合の6割以上を占めています。しかし、ここで注目すべきポイントは「過去数年間のNAVER検索広告とGoogle検索広告の流入率の変化」です。NAVER検索広告の流入率は2019年第2四半期の51.98%から、2022年第4四半期には33.02%にまで減少。一方、Google検索広告は13.99%から32.56%まで大幅に割合を伸ばしています。これは韓国では「検索広告といえばNAVER一択」という概念が変わってきたと考えてよいでしょう。
施策2:「コンテンツマーケティング」
コンテンツマーケティングと言えば、コーポレートサイト上にさまざまなコンテンツを制作し、ウェブ上でのプレゼンスを向上させるというマーケティング施策ですが、NAVERの検索エンジンの仕様上、別のアプローチ方法が有効です。
それが、NAVERブログでのコンテンツマーケティング施策です。
先ほどお伝えした通り、検索エンジンNAVERはGoogleとは違い、検索結果にWebページよりNAVERが提供しているコンテンツであるNAVER Blog、NAVER Café、NAVER 旅行情報・旅行商品などに登録されている「NEVERコンテンツ」を、優先的に表示する傾向があります。したがって、Google SEOと同様に自社の企業のWebページ内のコンテンツをいくら作成したところで、そもそも検索上位に企業のWebページが状表示されないため、Google SEOを活用したコンテンツマーケティングは韓国では効果を得にくい施策となります。
<NAVERでは、NAVER BlogのコンテンツがWebページより上位に表示されやすい>/span>
日本では馴染みがないと思いますが、NAVER Blogは個人のみならず、小規模・大規模企業も活用しています。自社のビジネスニュース発信、顧客とのコミュニケーション、プロモーション情報掲載など、認知拡大のメディアの一つとして活用されています。海外企業のNAVER Blog活用例はこちらの記事でご紹介しています。
NAVER Blogは開設のハードルが低いというメリットがありますが、見慣れたGoogleとは異なるNAVERの検索エンジン事情、成長までは時間がかかることを念頭においたうえで、始める前にNAVERブログの「役割・掲載情報の設計・運用ルール」を含めて長期的な目線の戦略策定が必要です。特により良いパフォーマンスを出すためには、C-RANKというNAVER独自の評価基準を理解することが重要です。NAVER Blogを始める前にその仕組みと特徴を把握することをおすすめします。NAVER Blogの基本はこちらのホワイトペーパーで解説しています。
韓国ユーザーが目的に合わせて検索エンジンを使い分けている分、韓国向けマーケティングを実施する企業もNAVERとGoogleを組み合わせた広告戦略を検討することが求められています。検索エンジンでは検索語句に応じて広告を表示する「検索広告(リスティング広告)」が一般的で、その仕組み自体は日本や海外と大きくは変わらないので、ここでは実際の広告施策の例を用いてそのイメージを案内したいと思います。
韓国向けデジタルマーケティング施策のご支援事例
BtoB製造業様の事例:NAVER広告+Google広告で高品質なユーザーにアプローチ
当初はコーポレートサイトへの流入増加を目的に、NAVERと韓国のビジネス関連媒体に広告を配信しているお客様でしたが、より流入を増やしたいというご要望がありました。そこで、ターゲットが「業界の専門知識やテクノロジー情報を収集する意欲が高いユーザー」であることと、類似業界のご支援事例を踏まえて、Google広告を実施。
その結果、Google広告から高いCTRが見られ、その流入の質を図る指標である「広告流入からのページ滞在時間」が、NAVER広告より高いことが判明されるなどの結果が得られました。
ポジティブな結果が得られた要因としては、以下の二点が挙げられます。
-
- ニッチな業界であったため、Googleでの情報収集ユーザーが多かった
- Googleには競合の参入がNAVERより少なかった
もちろん、検索エンジンに応じてNAVER広告とGoogle広告の仕様はそれぞれカスタマイズしているので状況に応じて結果は異なるかもしれませんが、「韓国でのWeb集客が頭打ちだ」とお悩みの際には参考になるのではないでしょうか。
BtoC旅行業の事例:韓国内でのシェアを広げるためのNAVERブランド広告を展開
旅行業であることから日常生活に関連する検索が活発に行われるNAVERに広告を出稿していたお客様の例です。ブランドの検索ボリュームも確保している段階で、競合の広告出稿が積極的な状況であったため、よりブランドを深く知ってもらい利用者を確保することが課題に。
NAVERでブランド指名キーワードが検索された際に、さまざまな情報を掲載できて、検索結果の画面占有率が高い「NAVERブランド検索広告」をご提案しました。
<ブランド指名キーワードに対して、他ブランドの広告より最優先順位で、広い面積で広告を表示させる広告商品「ブランド検索広告」の例>
まずはブランド名を検索するユーザーに見てもらいたい情報を整理したうえで、広告に表示するページを選定し広告を出稿しました。その結果「ブランド名+特価」「ブランド名+割引」といったキーワードでのCTRは、従来行ってきた一般的な検索広告に比べて10倍以上となり、プロモーションやサービス情報を掲載している広告ページへのアクセスも増加する結果となりました。
これはブランド名を検索したユーザーが、競合他社の広告へ流入することを軽減させると同時に、豊富なブランド情報を画像や動画を用いて提供できるメリットがあります。
まとめ
韓国は早くからインターネットが普及した国であることから、独特なインターネット文化を持っている国の一つです。デジタルマーケティングにおいても日本と似ている面もありつつ「知れば知るほど複雑で固有」とよく聞きますが、それはこれまで経験したことがない文化との出会いによって生まれる悩みだと思います。韓国人でありながら日本企業のマーケティングをしている自分も同じく悩んでいます。
そんなときに頼りになったのは、過去の類似事例やデータでした。下記リンクより70件を超える「実際の海外デジタルマーケティング支援事例」を案内していますので、自社と類似業界の事例をご覧いただければ幸いです!
ヨンス チェ マーケティング部
大学では日本語の通訳・翻訳を専攻し、韓国から日本への移住を決意。 「日本と世界をデジタルで繋ぐ」マーケターとして活躍したいとを思い、インフォキュービック・ジャパンへ入社。 淡水エビ・タランチュラ・大型オウム・希少クワガタなどの飼育・繁殖経験もあるほど生き物が大好きです。現在、ヤモリを飼育して10年以上、ヤモリ愛に溢れた韓国人です。