東南アジアのソーシャルメディア最新利用状況
~2025年に向けたSNSマーケティングトレンド~
東南アジアの主要6カ国(タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン)では、ソーシャルメディアが日常生活やビジネス活動に欠かせない存在になっています。今回の記事では、東南アジアにおける最新のソーシャルメディアの最新動向や各国におけるSNSマーケティングトレンドなどをご紹介します。
東南アジアでビジネスを展開したい方や、既に事業展開を行っているが最適な施策を模索中の方に向けて、実用的な情報をご紹介します。
目次
東南アジア市場でのソーシャルメディアの重要性
見込まれる経済成長
東南アジアの総人口は6億7,945万人という巨大な人口を擁し、そのうちの多くが若者層で、デジタルリテラシーの高さ、スマホ普及率を背景に活気ある市場として注目を集めています。
世界銀行のデータによれば、現在、ASEAN全体で金融口座やモバイルマネーサービスにアクセスできる成人は現在50.6%に過ぎません。しかし、今後、若者人口の大幅な増加が見込まれるこの地域で、オンライン・オフラインともに「デジタル分野の発展」が経済成長の大きな推進力として期待されています。マッキンゼーのレポートでは、東南アジア諸国では2030年までに、多くの中流階級の消費者層が大幅に増加し、東南アジアの長期的な成長を後押しすると予想しています。
さらに、こうしたデジタル分野の成長を支える取り組みの一環として、「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」や「ASEAN-中国自由貿易地域(ACFTA)」のような経済協定が進めらており、越境eコマースやソーシャルメディアを活用した購買体験の重要性が増してくるとみられています。これらの協定が実現していくと、”中国の顧客がソーシャルメディアを通じて、ベトナムの農産物をオンライン注文し、モバイルアプリで支払いを完了させて、2日後には荷物が配送される” なんてことが実現します。そして、その一旦を担うのがソーシャルメディアに搭載されたショッピング機能だと言われています。
SNSに統合されたeコマース機能
東南アジアにおいてソーシャルメディアが重要である理由の一つとして、ソーシャルメディアが電子商取引プラットフォームとして進化していることが挙げられます。特に近年ではFacebook、Instagram、TikTokなどのプラットフォームなどのプラットフォームにeコマース機能が統合され、消費者の買い物方法に革命が起こっていると言われています。
もともとモバイルショッピングの利用率が高い傾向にあった地域ですが、ソーシャルメディアにeコマース機能が統合されてからは、ソーシャルメディア経由でのショッピング利用率が急速に高まっています。2027年までに東南アジアのソーシャルコマースの流通取引総額(GMV)は、850億米ドルに達すると予測されています。
東南アジアの最新ソーシャルメディア利用状況
東南アジアでは、コミュニケーションや娯楽、生活インフラの一部として、幅広い年齢層がソーシャルメディアを活用しており、世界的にみてもSNSの利用率が高く、利用時間も長いのが特徴です。
まずは、東南アジアのデジタル事情を知るために、主要6カ国における最新のソーシャルメディア使用状況を見ていきます。
ソーシャルメディアユーザー割合と利用時間(対人口)
東南アジアの各国のソーシャルメディア利用率です。
日本では、人口の 78.1%がソーシャルメディアを利用しています。
以下は2024年のアジア主要6か国の人口に対するソーシャルメディアユーザーの比率が高い順に示しました。
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- シンガポール(583万人):85%
- マレーシア (3,555万人):83.1%
- フィリピ(1億1,584万人):73.4%
- ベトナム (1億98万人):73.3%
- タイ (7,166万人):68.3%
- 世界平均 (81億974万人):62.3%
- インドネシア(2億8,348万人):49.9%
シンガポール・マレーシアは日本よりソーシャルメディアユーザーの割合が高く、シンガポールに至っては総人口の85%、世界第5位 のソーシャルメディア大国です。
インドネシアの人口は東南アジアの中でも圧倒的に多く、2億8348万人です。2022年から2024年の間に+578万人増加していることも注目すべき点の一つでしょう。ソーシャルメディア利用率は 49.9% と低い傾向にありますが、1億4,145万人以上のソーシャルメディアユーザーが存在しており、東南アジアの中でもポテンシャルのあるマーケットの一つです。
ソーシャルメディアの利用時間
次に東南アジアにおける各国のソーシャルメディア利用時間を見ていきましょう。
東南アジアはソーシャルメディアに費やす時間が非常に長いことで知られています。対象国の中で、最も利用時間が短い日本や世界平均と比較してもシンガポールを除く全ての国で利用時間が平均より長い傾向にあります。
以下はアジア主要6か国のソーシャルメディアの平均利用時間を示したものです。
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- フィリピン :3時間34分
- インドネシア:3時間11分
- マレーシア :2時間48分
- タイ :2時間31分
- ベトナム :2時間25分
- シンガポール:2時間14分
日本は53分と調査対象国の中で最下位ですが、フィリピンの平均利用時間はが、3時間34分と「世界第4位」です。これだけ長い時間ソーシャルメディアに触れていることを考慮すると、ソーシャルメディア上でのコンテンツがユーザーに大きな影響を与えていると考えてよいでしょう。このようなマーケットの場合、企業サイトを作り込むことはもちろんですが、ソーシャルメディア運用や広告配信のコンテンツを作り込みなど、ソーシャルメディア上でのアプローチは重要視するべきと考えます。
POINT
- 東南アジアにおけるソーシャルメディアの日本の利用時間の約4倍
- 利用人数・利用時間も年々伸びている
- 企業イメージはソーシャルメディア上で作ることが最優先
これからデジタル施策をしたいと考えている企業は、まずはソーシャルメディア広告などを活用したテストマーケティングを試してみる価値があるのではないでしょうか。
東南アジア・各国で人気のソーシャルメディア
この章では、各国の人気のソーシャルメディアを見ていきます。
タイ
タイでは長年 Facebook が圧倒的人気を誇っています。さらに、10年ほど前からメッセージングアプリとして「LINE」が参入し、徐々に勢力を伸ばしてきました。タイにおけるLINEの月間アクティブユーザー数は4,700万ほどに達していると言われており、メッセージングアプリだけを比較すると、タイで最も人気を誇るメッセージングアプリでタイのデジタル市場で存在感が強まっています。
以下は、2024年1月時点のタイのソーシャルメディアユーザー数を示しています。(Datareportal)
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- Facebook:4,910万人
- TikTok:4,438万人
- Youtube:4,420万人
- Instagram:1,875万人
- X:1,468万人
以下は、タイで最も利用するソーシャルプラットフォームを示しています。
ベトナム
ベトナムにおいてもFacebookは最もユーザー数の多いソーシャルメディアです。FacebookやYoutubeは一般的によく知られているソーシャルメディアですが、「Zalo」はベトナム独自のチャットプラットフォームで、友人や家族とのつながりを目的として使用されています。ベトナムでは6,000万人ほど、世界で一億人以上のユーザーを獲得している人気のプラットフォームです。X 世代、Y 世代、Z 世代とベトナムの幅広い世代で利用されている人気が高いプラットフォームです。
以下は、2024年1月時点のベトナムのソーシャルメディアユーザー数を示しています。(Datareportal)
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- Facebook:7,270万人
- TikTok:6,772万人
- Youtube:6,300万人
- Instagram:1,090万人
- X:558万人
以下は、ベトナムで最も利用するプラットフォームを示しています。
インドネシア
人口が多く、デジタルに慣れ親しんだ若者消費者が多いインドネシアは、デジタル戦略でアプローチを検討する企業にとって魅力的な市場の一つです。インドネシアで人気が高いTikTokは、2023年から2024年までの一年間にユーザー数が15.4%増加しています。
以下は、2024年1月時点のインドネシアのソーシャルメディアユーザー数を示しています。(Datareportal)
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- TikTok:1億2,680万人
- Youtube:1億3,900万人
- Facebook:1億1,760万人
- Instagram:1億90万人
- LinkedIn:2,600万人
- X:2,469万人
以下は、インドネシアで最も利用するプラットフォームを示しています。
マレーシア
東南アジアで3番目にソーシャルメディアが普及しているマレーシアのデジタル環境は、急速に変化しています。かつては、単なるコミュニケーションツールであったソーシャルメディアは、情報共有、ビジネス、ショッピングなど、さまざまな目的で一般的に利用されています。マレーシアのデジタル環境は今後も成長し続けるとみられており、注目すべき市場の一つです。
以下は、2024年1月時点のマレーシアのソーシャルメディアユーザー数を示しています。(Datareportal)
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- TikTok:2,868万人
- Youtube:2,410万人
- Facebook:2,235万人
- Instagram:1,570万人
- LinkedIn:780万人
- X:571万人
以下は、マレーシアで最も利用されているプラットフォームを示しています。マレーシアはインドネシアで利用されているソーシャルメディアと似た割合になっています。
シンガポール
インターネット普及率が 95% と、国民のほとんどがインターネットを利用し、国民の85%近くが何等かのソーシャルメディアを使用しているデジタル大国シンガポール。2029年までにシンガポールのインターネット普及率は99.4%まで上昇すると試算されています。
以下は、2024年1月時点のシンガポールのソーシャルメディアユーザー数を示しています。(Datareportal)
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- Youtube:513万人
- LinkedIn:420万人
- Facebook:370万人
- TikTok:338万人
- Instagram:315万人
以下は、シンガポールで最も利用されているプラットフォームを示しています。TikTokの割合が低い点や、WeChatがランクインしている点は、他の東南アジア各国とは異なる点です。また、シンガポールのLinkedInユーザーは420万~440万人とも言われており、全人口の約68%がLinkedInを利用している点も注目すべきポイントと言えるでしょう。
フィリピン
7,000以上の島から成るフィリピンは、近年海外からの労働者数が増加しており、それがソーシャルメディアユーザーの増加に貢献した理由の一つと言われています。前述したようにフィリピン人のソーシャルメディア利用時間は一日に3時間以上と、東南アジアで最も利用時間が長い国です。
以下は、2024年1月時点のシンガポールのソーシャルメディアユーザー数を示しています。(Datareportal)
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- Facebook:8,675万人
- Youtube:5,810万人
- TikTok:4,909万人
- Instagram:2,135万人
- LinkedIn:1,600万人
- X:1,077万人
以下は、フィリピンで最も利用されているプラットフォームを示しています。
フィリピンでFacebookが最も利用されている理由の一つが、Facebookとフィリピン大手通信会社Smart Communicationsが提供している「Internet.orgアプリ」です。このアプリをダウンロード・経由することで、モバイルネットワークに接続していなくてもFacebookを含むいくつかのサービスを無料で利用できるため、インターネット環境が整っていない地域であってもFacebookなどのサービスが利用できる環境が整っています。
さいごに
東南アジアでは若者の人口減少が顕著な日本とは違い、若者の人口層が多く、今後も人口の増加が予想されています。また、非常に購買力が高い20代から30代そして、今後メイン購買層となる10代は、ソーシャルコマースとの親和性が高いため、ソーシャルメディアを活用したデジタル戦略はは必須となるでしょう。
東南アジアに向けたSNSマーケティングにご興味がありましたら、ぜひ、お気軽にご相談ください!
吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。