色彩心理と企業ブランドの関係
~色がもたらす感情をマーケに活用しよう~
私たちの周りは、赤、黄、青など彩りに満ちた世界となっています。みなさんは、普段から身の周りにあるこれらの「色」を意識して、生活していますか?当たり前すぎて、あまり意識していないという方も多いかもしれません。「色」の影響はは人間の脳に影響を及ぼし、意思決定などの行動や感情などに作用することは「色彩心理学」の視点からも実証されています。また、ブランドにおいても「色」は、ブランドの印象を大きく左右する重要な位置づけとなっています。
たとえば、大手飲料メーカーのコカ・コーラ社では、目を引く「赤」を使用してユーザーを魅了していますし、WHOLE FOODS MARKETでは「緑」を基軸にして、食品の自然な鮮度を伝えています。これらのブランドは特定の理由や動機を持って戦略的に「最適なカラー」を選択しています。
また、デジタルマーケティング施策、Webサイトのデザインにおいても、どのようなカラーを選ぶのかは、とても重要な問題となります。広告、バナー、CTAボタン、そのほかのデザインを検討する際は、色が持つ心理的な関連付けを考慮する必要があります。
企業のマーケティング担当者が色彩心理学、その背景にある理論を理解することは、デジタル化が急速に進む「今」において、必要不可欠な要素の一つと言えるのではないでしょうか?今回は、「色彩心理学」とデジタルマーケティングにおける「色」の役割について、ご紹介します。
1.色と文化と地域性
科学的な根拠があるというわけではありませんが、色と文化には深い関係性があると考えられています。
たとえば「黄色」は、欧米では「臆病」を象徴する色です。その理由は、キリスト教では、裏切り者とされているユダがイエローの服を着ていたからだと言われています。一方、日本ではその反対の「勇気」としてとらえられることが多くなっています。
このように、国や地域、宗教、文化などの違いから、同じカラーであってもそのイメージが全く異なる場合があるということを、頭に入れておく必要があります。特に、海外向けサイト制作を行う際には、その国や地域のカラーのとらえ方について、よくリサーチする必要があります。
2.ブランドにおける「色」の重要性と色の選び方
多くのブランドは、見込み客との最初の接点を作るために、Webサイトを用意していることでしょう。
しかし、ただ単純に「ブランドの存在の証明」としてWebサイトを制作するのではなく、Webサイト自身にブランド価値を吹き込み、強固なビジュアルイメージを持たせ、色とブランドを視覚的に結びつけておくことがとても重要なのです。
研究によると、人間の脳はテキストよりも、画像のほうが60,000倍も速く処理できる、また、脳に送られる情報の90%は視覚的なものであるということが、明らかとなっています。つまり、Webサイトの訪問者の理解を助けて、自社のWebサイトの情報をよりわかりやすく伝えるためには「画像やカラー、Webサイト全体のデザイン」などの「視覚的な情報」がとても重要なポイントとなるのです。
もし、サイト訪問者がWebサイトのカラーに対してポジティブな印象を持てなかったとしたら、すぐにサイトを離れてしまうかもしれませんし、他のコンテンツも見てもらえなくなってしまうことでしょう。そのような事態を避けるためにも、カラー選びを慎重に行い、ブランドの持つビジュアルイメージを明確にしておきましょう。
どのように色を選ぶ?
ブランドイメージを作り上げていく際には、まず最初にイメージに合う最適なカラーを選択しておかなくてはなりません。そして、選んだカラーを用いる際には、ロゴや広告などにも同じカラー選び、Webサイトのデザインに統一感を持たせましょう。
カラーを選ぶ際には、マーケティングの目標、顧客からどのような反応を求めているのかを考えておくと良いでしょう。自社のWebサイトのコンバージョン率をアップさせたい場合には、CTAボタンのカラーも必ずA/Bテストを行い、自社のサイトに合う色を見つけ出しましょう。HubSpotが行ったA/Bテストの結果によると、グリーンのボタンよりも、レッドのボタンのほうが20%もクリック率が高かったそうです。
3.色と感情
色の持つイメージは、感情とも深く結びつくことがあります。カラーごとに、特徴やどのような感情を持つのかについて見ていきましょう。
「赤」
エネルギー、愛、情熱、欲望、暴力などを連想させるカラーです。
遠くからでもよく目立ちやすく、注意を喚起するカラーであるため、信号機や道路標識などにも用いられています。赤は衝動的な買い物客を引き付けます。
とても強い印象を持つカラーなので、Webサイト制作でも用いる際には、購入ボタンに用いることで、顧客の行動を促しやすくなります。
< Target.com >
「青」
青は、穏やか、安全、信頼、セキュリティー、責任、落ち着き、親しみやすさなどの連想させるカラーです。
そのため、銀行や企業が信頼と責任の雰囲気を作り出すためによく用いられています。ただ、青といっても濃度によって、印象が変わることもありますので、気を付けなくてはなりません。
濃い青は信頼感を増幅させ、淡い青色は友好的であると見なされます。
< Facebook >
「黄色」
黄色は歓楽主義、太陽の光、希望、エネルギー、積極性を呼び起こします。
ブランドはサイトサイト訪問者に前向きな気持ちを提供し、より多くのエンゲージメントを生み出すために、Webサイトのデザインの背景に黄色を使用します。
< Snapchat >
「緑」
緑は、自然、健康、リラックス、新鮮さなどを連想させるカラーです。消費者の精神的な静けさという感覚を呼び起こします。
目が処理しやすい色の一つで、最も優しい色であるため、農業、飲食店、オーガニックブランドなどでよく用いられています。
< Woolworths >
「紫」
紫は、創造性、郷愁、知恵、尊厳、地位、贅沢、忠誠心などを連想させるカラーです。
濃い紫は豪華、豊かさ、明るい紫は愛やロマンスなどのイメージを持つカラーであると共に、革新的で表現力豊かな製品やサービスを伝えたいと思っています。
< Hallmark >
「オレンジ」
オレンジは喜び、興奮、変化、膨張、行動を促すフレーズなどに使用されるカラーです。
感情的な配色で赤と黄色の間に分類されます。黄色よりは強いですが、赤よりは優しい印象を持っています。暖色系は好みがわかれますが、オレンジは比較的に好意的に見られています。
< HARLEY-DAVIDSON >
「ピンク」
ピンクは、愛、ロマンス、女性らしさ、穏やかさ、安らぎなどを連想させるカラーです。
気持ちを落ち着かせる効果があることから、ロッカールームをあえてピンクにしているというスポーツチームも多いです。
また色の濃さによって与える印象は大きく変化するカラーです。
< T mobile >
「白」
ホワイトは、純度、安全性、中立性などを連想させるカラーです。
清潔感があり、すっきりした印象のカラーであることから、コントラストを保つためWebサイトの余白にホワイトが用いられることが多い色です。余白は強力なデザイン機能であり、他の色とのバランスや清潔感を出すために使用されます。
「黒」
黒は、エレガンス、上品さ、パワー、コントロールの象徴などを連想させるカラーです。
目立ちやすいカラーであり、重厚感や高級感もあることから、 高級ブランドショップやテクノロジー企業などでよく用いられています。黒を頻繁に使用して、高品質で洗練された特性を伝えています。
< Netflix >
「ゴールド」
ゴールドは、富、ゴージャスさ、威信、高価さなどを連想させるカラーで、強い存在感を与えます。
光沢も含めた色なので、単色での表現するのは難しい色になっており、メインのカラーを引き立てるために用いられることが多い色です。
4.色のバリエーションと組み合わせ
カラーは、色相、値、彩度などによって、無数のバリエーションが存在しています。同じグリーンであっても、彩度が上がったり、下がったりすることで、与える印象も大きく異なってくるので、色理論に関する理解も必要です。
たとえば、彩度が高いグリーンは華やかで明るい印象となりますし、逆に彩度が下がると、暗くて落ち着いた雰囲気となります。カラーを選ぶ際にはその点についても、よく考慮しなくてはなりません。また、複数のカラーを組み合わせることでも、特定のイメージを与えやすくなります。たとえば、レッドとグリーンの組み合わせはクリスマス、ブラックやオレンジの組み合わせはハロウィーンをイメージさせやすくなります。
また、ブランドの場合、色はブランド認知度を85%も向上させることが示されています。これは決して無視できない統計であり、ブランド構築のために適切に色を検討する必要があることを証明しています。
5.まとめ
企業が海外デジタルマーケティング施策を行う際には、カラー選びがとても重要なポイントとなります。大手企業の多くは、明確な目的を持ってカラーを選定して、戦略的に活用しているのです。レッド、ホワイト、ブルーなどさまざまなカラーがあり、それぞれにイメージが異なりますので、自社の目標に合わせて最適なカラーを選ばなくてはなりません。カラーを上手に選んで効果的に活用すれば、ブランドイメージを良いものとすることができますし、Webサイトを訪れた見込み客の行動も促しやすくなることでしょう。
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吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括しています。 オーストラリア永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本9年を経て、現在はシンガポールからフルリモート中。